ルシアンの青春 Lacombe Lucien (1973)

Pierre Blaise ( Lucian Lacombe) and Louis Malle
Pierre and Louis Malle in Lacombe Lucien
レジスタンス志望転じてナチスへ ナチス党員とユダヤ娘の逃避行
ルシアンの青春(1973年)

1957年に死刑台のエレベーターでデビューしたLouis Malle(ルイ・マル)が監督した映画で、第二次世界大戦がもうすぐ終局を迎えることを知らない1944年の南仏を舞台に、誰しもが戦渦を生き延びるべく究極の選択を余儀なくさせられた時代に、図らずも密告者となってしまい自分の居場所を求めてナチスに入党してしまった貧しいフランスの若者とユダヤ娘のたった数ヶ月の青春物語を描いています。 生けるものに対する残虐性と愛情を合わせ持っていたルシアンは、多くの若者がそうであるように成長しきっていなかったのでしょう。 果たしてユダヤ娘を救うためにドイツ兵士を撃ったのか。 なんでこんなことになるのか、若者が生きる道を見誤ったとはいえ戦争は諸悪の根源であることをまざまざと見せつけられます。 ルシアンを処刑しないで!と叫びたくなります。 同じ若者の過ちといっても、パリの街にたむろする無軌道な不良青年たちを描いた「危険な曲がり角」とは一線を画する青春残酷物語です。 演技力の未熟なピエール・ブレーズゆえにドキュメンタリーのように真実味が伝わってくるようです。

映画のストーリーに同調するように胸をかきむしるジャンゴ・ラインハルトのギターで始まる「ルシアンの青春」のトレーラを観てください。
Lacombe Lucien Trailer – YouTube
Lacombe Lucien scene – YouTube
(削除されていたらTrailer Lacombe LucienのキーワードでYouTubeで検索)

ピエール・ブレーズとルイ・マル監督
映画の題名の「Laconbe Lucien」は「ルシアンの青春」の主人公の青年「Lucian Lacombe]のことです。
「ルシアンの青春」に詳しい『梁塵秘抄』 または ”わしふぃーるど”内のルシアンの青春/LACOMBE LUCIEN』(1973)ルイ・マル(Louis Malle)
※ピエール・ブレーズといってもクラシック音楽指揮者とは無関係です。

「ルシアンの青春」の写真が見られるルイ・マル監督のサイト
Lacombe Lucien Photos – nef-louismalle.com

ルイマル監督の「ルシアンの青春」のDVDですが画像は1999年発売は入手困難となり価格も上がっていますのでリンクは2009年発売のDVDになっています。
Lacombe Lucien DVDルシアンの青春 / ポニーキャニオン
日本語字幕版の「ルシアンの青春」のDVDは2006年にもリリースされている他、ルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」と「アトランティック・シティ」との3本セットになった「ルイ・マル DVD-BOX II」にも収録されています。
Lacombe Lucien VHSルシアンの青春 (字幕版VHS)


Lacombe Lucien Soundtrack
天才ギタリストのDjango Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)をフィーチャーしたジャージィなサントラの音楽はAndré Claveau(アンドレ・クラヴォー)とIrène De Trebert(イレネ・ド・トレベール)ですが、このサントラはレコードの「lacombe lucien LP」や「LACOMBE LUCIEN – FRANCE SOUNDTRACK LP」、または輸入CDの1997年リリースの「Lacombe Lucien」や「Louis Malle;Lacombe Lucien」同様に現在は入手困難となっています。
「ルシアンの青春」のサウンドトラックの曲目リスト
1.ルシアンの青春のテーマ(Minor Swing/マイナー・スイング)
2.夢の城(Manoir de Mes Rêves AKA Django’s Castle)
3.雲(Nuages)
4.甘いムード
5.憂い花(Fleur D’Ennui)
6.お嫁さん、ごゆっくり
7.未来のリズム(Crazy Rhythm)
8.ベルヴィル(Belleville)
9.渦まくボレロ(Troublant Boléro)
10.騎兵(Cavalerie)
11.ブルース・クレール(Blues Clair)
12.スイング41(Swing41)
13.エコー・オブ・フランス~ラ・マルセイエーズの変奏曲(Echoes of France)
上記のリストにある”Crazy Rhythm”は1936年にリリースされたアルバムのタイトルともなっています。 演奏メンバーはギターのジャンゴの他、テナーサックスのAlix Combell(アリックス・コンベール)やColeman Hawkins(コールマン・ホーキンス)など、アルトサックスがBenny Carter(ベニー・カーター)など、ヴァイオリンがStephane Grappelli(ステファン・グラッペリ)などが参加したビッグバンドです。(クラリネットも演奏するアリックス・コンベールは1930年代から1940年代に活躍したフランスのジャズマンでスィング時代のバンドリーダーでもあります)
ジャンゴ・ラインハルトのサントラ「ルシアンの青春
Django Reinhardt & Stéphane Grappelli – Minor Swing – YouTube

ルイ・マルに見出されたズブのシロウトPierre Blaise(ピエール・ブレーズ)は1975年にトーニオ役を演じたMauro Bolognini(マウロ・ボロニーニ)監督の「Per Le Antiche Scale(Down the Ancient Staircase: 古い階段の下で)」ではMarcello Mastroianni (マルチェロ・マストロヤンニ)が研修生に精神分裂症の持論を否定されたことから狂気に走る女好きの精神科医役で主演しています。 映画音楽の巨匠と呼ばれるEnnio Morricone(エンニオ・モリコーネ)が手掛けた「古い階段の下で」のサウンドトラックが有名です。 ピエール・ブレーズは3本の映画に出演した後、残念なことに事故死してしまったそうです。
エンニオ・モリコーネのテーマ音楽「古い階段の下で」の試聴はPer le antiche scale (Original motion picture soundtrack

The Django Reinhardt Swing Page
Django Reinhardt

戦前から人気があったジプシー・スウィングのギタリストのDjango Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)が、「ルシアンの青春」で音楽を担当し、バイオリン奏者のStephane Grappelli(ステファン・グラッペリ)とのデュオの”Minor Swing(マイナー・スウィング)”で再ブレイクしました。
ジャンゴ・ラインハルトの音楽は「ルシアンの青春」以外にも1975年にAlain Delon(アラン・ドロン)がジプシーを演じたLe Gitan(ル・ジタン)でタイトル曲のThème du film “le Gitan”(ジプシーのテーマ)の他にCousin Djangoと”Blues”が、そして1980年にWoody Allen(ウディ・アレン)のStardust Memories(スターダスト・メモリー)で”I’ll See You in My Dreams”が使用されています。

ジャンゴ・ラインハルトのジャズギター演奏のタブやコードが見られるThe Django Reinhardt Swing Page – hotclub.co.uk(トップメニューのPlaying>Tunes)

“Minor Swing”が入っているジャンゴ・ラインハルトのCD
画像は「Django Reinhardt / Classics 1947, Vol. 2」ですが現在入手困難なのでリンク先は” マイナー・スイング”が試聴できる国内盤になっています。
Django Reinhardt / Classics 1947, Vol. 2  ジャンゴ・ラインハルト ジャンゴロジー~スペシャル・エディション (マイナー・スウィングやジャンゴロジーなど23曲が試聴ができる最新ディスクはASIN: B010EB1JRM)
☆ちなみにジャンゴと同時期、1930年代のパリでJosephine Baker(ジョセフィン・ベイカー)の楽団を率いていたOscar Alemán(オスカー・アレマン)というアルゼンチンのジャズ・ギタリストが時々はジャンゴの代役を引き受けていたそうです。

ルシアンの青春 Lacombe Lucien (1973)」への2件のフィードバック

  1. La Yoko より:

    はじめまして
    とても参考になるサイト拝見し、重宝しました。ジャンゴの資料を探っていました。
    FMたちかわという放送局で、弱小ながら音楽番組を担当しています。私の知らないジャンゴについて、いろいろ調べているうちにここまで。。。勉強になりました、ありがとう。

  2. koukinobaaba より:

    「La Yoko」さんの音楽番組を放送する”FMたちかわ”を聴くことができませんがお役に立てて光栄です。
    私の好きなジャンゴ・ラインハルトを個別に記事にしたいのですが時間が取れません。 いづれ。

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