Doris Day (1922 – 2019)
ドイツ移民のピアノ教師を父に持つドリス・デイはアメリカで生まれました。 脚の故障からバレリーナの夢を断念したドリス・デイは音楽の道に入ります。 ”Dance of the Blue Devils”を楽団のテーマ曲として演奏していたBrown and His Band Renown(レス・ブラウン楽団)の専属歌手として1940年に入り、ハスキー・ヴォイスで歌うSentimental Journey(センチメンタル・ジャーニー)が1944年のミリオン・セラーになりました。 私が初めて聴いたドリス・デイの歌はこのセンチメンタルジャーニー(センチメンタル・ジャニー)でしたがラジオから流れてきた曲でノリの良い”A Guy Is a Guy(ガイ・イズ・ア・ガイ)”は覚えやすかったです。 1952年に”Shanghai”と同じPaul Weston and his Ohch(ポール・ウエストン楽団)をバックに吹き込んだそうですが、日本では「わたしのママが言いました、男はみんな狼よ」と江利チエミが歌いました。 この時期、ドリス・デイはトロンボーン奏者やレス・ブラウン楽団の”サックス吹き”などと4度の結婚、別居、離婚で私生活も忙しかったようですが晩年はペットにご執心でした。 1924年生まれのドリス・デイは2014年にはめでたくも90歳の誕生日を迎えるほどのご長寿だったのです。 しかし惜しくも2019年5月、肺炎のため97歳で亡くなりました。
その後、1956年にはヒッチ・コック映画「The Man Who Knew Too Much(知りすぎていた男)」に出演し息子救出のため声を限りに歌うと幽閉されていた坊やが口笛で返してきた時の感動を忘れられません。 その主題歌の”Que Sera Sera(ケセラセラ)”が世界的大ヒットとなります。 ”ケセラセラ”を書いたのはMay Britt(メイ・ブリット)が1959年の映画「「嘆きの天使」」で歌った”Lola-Lola”と同じく作詞作曲家のコンビのJay Livingston (ジェイ・リヴィングストン)とRay Evans(レイ・エヴァンス)です。 「知りすぎていた男」で”ケセラセラ”を歌って以来、歌手のドリス・デイの映画出演が増えて歌う映画スターとして人気者となりました。 ちなみにRenée Zellweger(レネー・ゼルウィガー)が主演した映画「Nurse Betty(ベティ・サイズモア)」の中でヒロインの容姿について説明するモーガン・フリーマンのセリフにドリス・デイみたいな感じとあり、ロマンチックなシーンで”ケセラセラ”が流れました。(残念ながらピンク・マルティーニのバージョン)
Doris Day sings “Que Sera Sera” in Hitchcock’s The Man Who Knew Too Much – YouTube
Doris Day – Again
ドリス・デイの数あるヒット曲の一つで私の好きな”Again(アゲイン)”は、Dorcas Cochran(ドアカス・コクラン)が作詞、Lionel Newman(ライオネル・ニューマン)が作曲した1949年の大ヒット曲で、ドリス・デイはThe Mellomen(メロメン)のコーラスをバックにしっとりと歌っています。 作曲家のライオネル・ニューマンは1930年代から数え切れないほど沢山の映画で音楽を担当しています。 この”アゲイン”が知られるようになったのはノワール映画のファムファタル役と「The Hitch-Hiker(ヒッチ・ハイカー)」などの監督として有名なIda Lupino(アイダ・ルピノ)が主演した1948年の「Road House(深夜の歌声)」でトーチシンガー役のルピノがピアノの弾き語りで歌ってからだそうです。 ”アゲイン”はドリス・デイの他にもPeggy Lee(ペギー・リー )やElla Fitzgerald(エラフィッツ・ジェラルド)、そして”At Last”で有名なEtta James(エタ・ジェームス)などが歌い、男性歌手ではBing Crosby(ビング・クロスビー)やDean Martin(ディーン・マーチン)、そしてNat King Cole(ナットキングコール)などが歌っています。
「アゲイン…もう一度
二度とは起きない、一生に一度の
この神聖な戦慄を…」とドリス・デイが歌うAgainの歌詞はAgain Lyrics – Genius.com
ドリス・デイは1949年のAgain(アゲイン)がヒットした後の1951年にPaul Weston(ポール・ウエストン)楽団をバックに吹き込んだ”Why Did I Tell You I Was Going To Shanghai(上海)”という曲はビルボードのチャートで7位を記録したビッグヒットの一つです。 同じ年にBilly Williams Quartet(ビリー・ウィリアムズ楽団)でもコミカルなバージョンでチャートインしています。
※「上海」はBob Hilliard(ボブ・ヒリアード)が作詞してMilton DeLugg(ミルトン・ディラッグ)が作曲した曲ですが、ボブ・ヒリアードは1951年のディズニーアニメ「Alice’s Adventures in Wonderland(ふしぎの国のアリス)」の他にもミュージカルなどで知られています。 一方、Milton Delugg(ミルトン・ディラッグ)は編曲及び作曲に加えてピアノやアコーディオンの演奏もこなすミュージシャンで、黒人風に顔を黒くしたメイクのMinstrel show(ミンストラル・ショー)で有名なAl Jolson(アル・ジョルソン)との仕事で知られています。 なんと1965年に坂本九とダニー飯田とパラダイスキングなどが声を担当した日本のアニメの英語版「Gulliver’s Travels Beyond the Moon(ガリバーの宇宙旅行)」での”The Earth Song”の作曲を手掛けたそうです。
* 驚いたことに日本の歌謡界の女王だった美空ひばりが1953年にドリス・デイの”Shanghai”や”Again”を歌ったジャズアルバムをリリースしています。 1952年には早くも”お祭りマンボ”を発表したほど新しい洋楽に敏感だったひばりはテレビでも時々ジャズを歌っていました。
☆ Who’s gonna kiss me Who’s gonna thrill me Who’s gonna hold me tight…と歌われる”Shanghai”の歌詞はShanghai Lyrics Playground
ドリス・デイの”Shanghai”は試聴ができる「Greatest Hits」もしくは「Doris Day’s Greatest Hits」(ASIN: B07DR3449J)に収録されています。
♪ 試聴はDoris Day’s Greatest Hits – レコチョク
ドリス・デイの出演映画
Romance on the High Seas
ドリス・デイは1948年にハンガリア出身のMichael Curtiz(マイケル・カーティス)が監督した「Romance on the High Seas(洋上のロマンス)」で歌う映画スタートしてワーナーから映画デビューしました。 Jule Styne(ジュール・スタイン)作曲、Sammy Cahn(サミー・カーン)作詞の”It’s Magic(イッツ・マジック)”を歌った「洋上のロマンス」の登場人物はJanis Paige(ジャニス・ペイジ)が演じる新婚の妻、Don DeFore(ドン・デフォア)が演じる女癖が悪そうなその夫、Jack Carson(ジャック・カーソン)が演じる私立探偵、そしてドリスデイが演じるは酒場の歌手です。 新婚の夫が妻と予定していた南米行きの洋上旅行に行けなくなってからストーリーが始まります。 妻は旅行会社で出会った歌手を自分の身代わりとして雇って船に乗せ、自分は家の側のアパートから夫を監視します。 ところが夫の方は船上の妻を見張るために私立探偵を雇っていたのです。 つまり二人とも相手を疑っていたのです。 なのにさらに歌手にぞっこんのピアニストまでも乗り込んでいたのです。 そしてその探偵は妻と歌手が入れ替わったことを知らないのですからどうなるでしょう。
2004年6月にはアメリカ版国民栄誉賞「The Presidential Medal of Freedom(大統領自由勲章)」を受賞したそうです。 50年代から最も好かれる女優に選ばれてきた「カマトト・そばかす美人!」に私も一票!
ドリス・デイのトレードマークともなった男勝りの女ガンファイター・”カラム”を演じた1953年の西部劇風ミュージカル映画「Calamity Jane(カラミティ・ジェーン)」では何曲も歌っていますが、極めつけはオスカーを受賞したSammy Fain (サミー・フェイン)作曲でPaul Francis Webster(ポール・ウェブスター)作詞の”Secret Love”です。 ちなみにカラミティとは疫病神とか女傑という意味だとか。 終盤に軍人のダニーを愛していたはずのカラムが敵のようなビル(ハワード・キール)と結婚することになった時に女性らしくしっとりと歌います。
♪ Secret Love (From Calamity Jane) on Soundtrack For A Century-Movie
ドリス・デイの出演した映画のほとんどがロマンチック・コメディ(ラブ・コメ)で、ドリス・デイのお相手と言えばRock Hudson(ロック・ハドソン)を想い浮かべますが、実際にはジョセフ・ゴードン=レヴィットの祖父マイケル・ゴードンが監督した1959年「Pillow Talk(夜を楽しく)」、1961年「Lover Come Back(恋人よ帰れ)」、1964「Send Me No Flowers(花は贈らないで)」の3作品らしいです。 それほど魅力的なコンビだったのでしょう。 だからロック・ハドソンが発病して歩くこともままならなくなった時、ドリス・デイは本当に悲しんだようです。
ドリス・デイの映画では1957年のミュージカル映画「The Pajama Game(パジャマ・ゲーム)」、Joe Lubin(ジョー・ルビン)が作ったテーマソングが大ヒットした1958年の「Teacher’s Pet(先生のお気に入り)」なども印象的でした。
わざとモノクロで撮影した映画で年甲斐もなくいやらしくニタニタ笑うクラーク・ゲイブルの「先生のお気に入り」のトレーラーはTeacher’s Pet Trailer – VideoDetective (ドリス・デイのお尻にタバコの煙を吹きかけるゲーブルは実生活で一日4箱も吸うヘビースモーカー)
ドリス・デイの”Hey There.”が使用された「パジャマ・ゲーム」のトレーラーはThe Pajama Game Trailer – YouTube
※「パジャマ・ゲーム」が公開された当時、男性物のパジャマを二人で分け合って着たカップルもけっこういたのではないでしょうか。 当然上着の方は女性ですよ!
「恋人よ帰れ」や「花は贈らないで!」なども手がけたFrank De Vol(フランク・デ・ヴォール)の音楽やドリス・デイがファッショナブルだった「夜を楽しく」についてはHot’n Cool内の夜を楽しく Pillow Talk
目タレや歯タレの雑誌モデル及び歌手でもあったGale Robbins(ゲイル・ロビンス)も売れっ子女優のアデレード役で出演した1953年の「カラミティ・ジェーン」の前、日本未公開ですが同じDavid Butler(デヴィッド・バトラー)監督の「By the Light of the Silvery Moon(銀色の月明かりの下で)」 に Rodgers and Hammerstein(ロジャース&ハマースタイン)のミュージカル映画「Oklahoma! (オクラホマ!)」でも共演したGordon MacRae(ゴードン・マクレー)とドリス・デイが共演しています。 その映画のテーマ曲として使用された”By the Light of the Silvery Moon”が大ヒットしました。 ブロードウエイのミュージカルスターだったゴードン・マクレーは1948年頃にJo Stafford(ジョー・スタッフォード)とデュエットしたアルバムをリリースしました。 ちなみに私の好きな”By the Light of the Silvery Moon”といえばGene Vincent(ジーン・ヴィンセント)のロカビリー・バージョンです。
Doris Day with Gordon MacRae – By the Light of the Silvery Moon 1954 – YouTube
1960年代の初期にラヴコメで大成功したドリス・デイですが、1960年に始まり5年連続した陽気な未亡人が主人公のテレビ・ショー「The Doris Day Show」は例外です。
ドリス・デイの出演映画を網羅したDorisday.net
The Early Hits of Doris Day
ページトップのCD画像は”Again(アゲイン)”はもちろんのこと、Love Somebody、It’s Magic、Bewitched, Bothered And Bewildered、Would I Love You(Why Did I Tell You I Was Going To)、 Shanghai、Dominoなど1947年代後期から1951年のヒット曲を収録したドリス・デイ初期のヒット曲集です。 ちなみに”ドミノ”は1950年代にベギー葉山が歌ってヒットしています。
類似したアルバムタイトルでSentimental Journey、Day By Day、It’s Magic、Bewitched, Bothered And Bewildered、The Christmas Song (Merry Christmas To You)など25曲を収録した「Early Days 1944-1949」(ASIN: B00004SBYQ)にもドリス・デイのアゲインは収録されています。
♪ 試聴はThe Early Hits of Doris Day – Qobuz.com
Golden Girl: Columbia Recordings 1944-1966
Again(アゲイン)やHarry James(ハリー・ジェームス)をバックに歌った”Lullaby Of Broadway(ブロードウエイの子守歌)”が収録されているドリス・デイの2枚組CD(2001年盤)
国内盤はアルバムタイトルが「ゴールデン・ガール」(ASIN: B00005Q8BW)
Golden Girl: Columbia Recordings 1944-1966 (2CD)
♪ 試聴はGolden Girl (The Columbia Recordings 1944-1966) – レコチョク
Star Box: Doris Day ドリス・デイ
国内でリリースされた2003年の人気ベスト盤で、オリジナル(モノラル)のセンチメンタル・ジャーニーやイッツ・マジック、アゲイン、ケ・セラ・セラ など主だったドリス・デイのヒット曲全21曲を収録しています。(試聴曲目は邦題で表記)
ドリス・デイ
試聴はSTAR BOX~ドリス・デイ Tower.jp
Doris Day and André Previn
ドリス・デイはドイツ系アメリカ人のピアニストで「Four Horsemen of the Apocalypse(黙示録の四騎士)」や「The Subterraneans(地下街の住人)」などの映画音楽を手掛けたアンドレ・プレヴィンとのコラボアルバムとして1961年に「Duet」(デュエット)を吹き込みました。(リリースは1962年) アルバムはドリス・デイがしっとりと歌う”Close Your Eyes”、”Fools Rush In (Where Angels Fear to Tread)”、”Daydreaming”、John Coltrane(ジョン・コルトレーン)とJohnny Hartman(ジョニー・ハートマン)で有名な”My One and Only Love”などスタンダードとなっているラブソング12曲を収録していますが、”Yes”、”Daydreaming”、”Control Yourself”がアンドレ・プレヴィンの作曲です。 ドリス・デイの歌の魅力を極限まで引き出したトリオのメンバーはピアノがアンドレ・プレヴィン、ベースが Red Mitchell(レッド・ミッチェル)、ドラムがFrank Capp(フランク・キャップ)です。
♪ 試聴はDoris Day & André Previn: Duet – Qobuz.com
ドリス・デイの映画で共同電話のトラブルから恋に発展する「夜を楽しく」、広告業界のライバル同士が酒入りキャンデーで恋をする「恋人よ帰れ」、「花は贈らないで!」の3枚組DVD特典映像・予告編付きDVDです。 ドリスデイの映画を観るのに当時はビデオ投稿サイトなどありませんでしたから映画館に行きましたが確か最後に観たのが「花は贈らないで!」でしたが、ロマコメではなくホーム・コメディだったのでちょっとがっかりした覚えがあります。 とはいえ1960年のホーム・コメディ「Please Don’t Eat The Daisies(ママは腕まくり)」よりは好みでした。
ドリス・デイ LOVE & MUSIC BOX
2005年発売のドリス・デイがロック・ハドソンと共演した「恋人よ帰れ」の日本語字幕版DVDもあります。 「恋人よ帰れ」はドリス・デイがCary Grant(ケイリー・グラント)と共演した「That Touch of Mink(ミンクの手ざわり)」と同じDelbert Mann(デルバート・マン)監督のラヴコメです。(蝶々夫人のピンカートン様と陽気なドリスは合わなかったかも) デルバート・マンといえばユージン・オニールのギリシャ的悲劇を書いた原作を元にした1958年の「Desire Under the Elms(楡の木蔭の欲望)」や1960年のウィリアム・インジ原作のホームドラマ「The Dark at the Top of the Stairs(階段の上の暗闇)」があるかと思えば主演が気が抜けたマーベリックで原作者アラン・ウィリアムズが最悪の映画とこき下ろした1968年の「The Pink Jungle(ダイヤモンド強奪作戦)」もあり。
Pillow Talk DVD
夜を楽しく [DVD]
Pillow Talk Soundtrack
1959年にリリースされた「Pillow Talk」のサントラは映画のストーリーを追った選曲の2枚組みのBOXセットCD(ASIN: B000001B4D)がありますがどちらも8000円くらいと高価です。
♪ 試聴はPillow Talk (Ost) [1959] – Qobuz.com
ドリスデイが歌う”Pillow Talk”は「Daydreaming: The Very Best of Doris Day」というCDにも収録されています。
♪ 試聴はDaydreaming/The Very Best Of Doris Day – Qobuz.com
Doris Day – It’s Magic
1947年にクルーナーのDick Haymes(ディック・ハイムス)がGordon Jenkins(ゴードン・ジェンキンス)楽団をバックに歌った” It’s Magic”はドリス・デイの代表曲でもありますが同名のDVDもリリースされています。 1950年代のアメリカ女性を代表するドリス・デイが出演した映画のシーン、ニュースクリップ、貴重な映像、プライベートなビデオ、それと珍しい写真や近しい人々のインタビュー等を集めてドリス・デイの人生をドキュメントしたDVDです。
It’s Magic (Full)
Audio-Visual Trivia内でドリス・デイの映画は「Love Me Or Leave Me(情欲の悪魔)」
Audio-Visual Trivia内で「アゲイン」を作曲したライオネル・ニューマンの映画音楽
1956年の「女はそれを我慢できない」
「ノックは無用」
「紳士は金髪がお好き」