お熱いのがお好き Some Like It Hot (1959)

Some Like It Hot (Special Edition) (1959) DVD
Some Like It Hot DVD
Tony Curtis, Marilyn Monroe as Suger and Jack Lemmon
Marilyn Monroe – I Wanna Be Loved By You – YouTube
お熱いのがお好き(1959年)

Roaring Twenties ジャズはホット!恋もホット
Billy Wilder(ビリー・ワイルダー)監督のコメディ映画は、2004年のAFIの最も面白いコメディ(The American Film Institute’s Funniest Comedies)では1位だったほど、アメリカの映画史上でもっとも可笑しい映画とされているだけあって当時ゴールデン・グローブ賞のコメディ/ミュージカル部門でMarilyn Monroe(マリリン・モンロー)が主演女優賞を受賞しています。 そして「お熱いのがお好き」はマリリン・モンローが一番可愛い映画です。 映画会社との契約をたてにカラーで製作して欲しいというモンローの申し出をワイルダー監督は映画の内容に相応しい白黒にすると説得したそうです。
※AFIについてはAudio-Visual Trivia内の「ホワイトクリスマス

St. Valentine’s Day Massacre
映画「お熱いのがお好き」は実際に1929年に起きたマフィア同士の抗争にヒントを得たストーリで、実際の「聖バレンタインデーの大虐殺」とは禁酒法がしかれた1929年にバレンタインデーにパトカーで乗りつけたイタリア系マフィアのAlphonse Capone(アル・カポネ)配下の偽警官が密造酒をめぐって敵対するギャングら7人をずらっと壁に並ばせて一斉射撃で血祭りにあげた事件の「聖バレンタインデーの虐殺」だそうです。

「お熱いのがお好き」のあらすじ
Joe as Josephine and Jerry as Daphne met Sugar Kane

Matty Malneck(マティ・マルネック)のオーケストラ演奏でテーマ曲の”Some Like It Hot”が流れるオープニングタイトル。(モンローも歌バージョンを吹き込んだのですが使用されず演奏バージョンです。モンローの歌は1970年代ににリリースされたサントラLPレコードに収録されました) 演奏には電気ギターにBarney Kessel、ドラムにShelly Manne、アルトサックスにArt Pepperなどが参加していますが、当時ハリウッドのスタジオピアニストだったJohn Williamsがピアノを担当しています。(この後ジョン・ウィリアムズはHenry Manciniと「ピーターガン」などで仕事をしています)
映画「お熱いのがお好き」の冒頭では先ず葬儀屋が霊柩車で密造酒を運ぶシーンで、追ってきた警官と撃ち合いになります。(クラシックカーのカーアクションも凄い!) この後霊柩車の血のしたたる、じゃなくて酒のしたたる棺はうやうやしく葬儀場の裏口から運び入れられます。 1929年の冬、狂騒の20年代のシカゴで、葬儀屋(Funeral Parlor)を装った秘密クラブでは禁酒法の裏をかく密造酒が珈琲と偽って提供されていたのです。 George Raft(ジョージ・ラフト)が演じる白いスパッツを穿いたマフィアのスパッツ・コロンボ親分が経営するその葬儀屋酒場に密告による警察の手入れがあり、それをいち早く悟ったバンドマンの二人は楽器を担いで裏口から逃げ出したのでした。 その二人とはTony Curtis(トニー・カーティス)が演じるテナーサックス吹きのジョーとJack Lemmon(ジャック・レモン)が演じるベース弾きのジェリーで二人は極貧のバンドマンです。

ガレージで7人虐殺のギャングの抗争
バターミルクを飲んでいたのにスパッツはカントリークラブに連行され縞柄スパッツをはくことになるかも。 ちなみにアメリカのスパッツとは小石などが靴の中に入らないように靴の底に紐を引っ掛けて脇をボタン留めした靴カバーです。
葬儀屋クラブの仕事を失い文無しの二人が仕事を得るためにフロリダの高級ホテルで3週間という仕事をゲット、ただし25歳以下の金髪で女子に限る。 そんなのはごメンだと大学のバレンタイン・パーティのバイトにする。 ただしここから160キロも先。 それで女友達の車を借りに行ったガレージで、偶然、敵対するギャングが葬儀屋を密告したお礼参りをするスパッツ・コロンボ親分の「聖バレンタインデーの大虐殺」を目撃(グッバイ・チャーリー!)
ジョーとジェリーの二人はギャングに見つかったものの辛うじて逃げたましたが、これで町中のギャングに追われる身となりました。 ギャングから逃れるためには仕方ない、二人は足の毛をジョリジョリ剃って胸にパットを入れて女装し、名前もジョーはジョセフィン、ジェリーはダフニ(ダフネ)と変えてガールズ・バンドに入団します。 ごっついオカマが汽車で目的地のフロリダまで旅をするのです。 二人が列車に乗り込もうとする時、ミュート・トランペットの”Sugar Blues”でマリリン・モンローが登場します。プップッビドゥ~! ちなみに”Sugar Blues”は70年間活躍したジャズ・トランぺッターのClyde McCoy(クライドマッコイ)が特徴のあるwah-wah(ワーワー)サウンドのミュート・トランペットで演奏し1930年からテーマソングとして使用していたClarence Williamsなどによるカントリーの作品で、ビルボードでの最初のヒットは1931年だったそうです。(ギターやオルガンのCry Baby Wah Pedalワーワーペダルの元祖 http://www.youtube.com/watch?v=SjemjB3kgAM)

フロリダ特急内、ロールケーキ、エクレア、クリームパイで満ちあふれた男子禁制車両、ダフニのおっぱいが取れちゃったので直しに女性用トイレに入った二人は携帯容器に入れたバーボン(ウィスキー)をがぶ飲みするシュガーと出会います。
バンドでウクレレと歌を担当する酒隠しのシュガー(マリリン・モンロー)を中心に”Runnin’ Wild(ラニンワイルド、愉快にやろう)”が演奏されます。(したいことするわ、思いっきり大胆に…誰も愛したりしない、時間の無駄だもの、私は独り、したいことするわ) 派手に腰を振って歌ったのでガーターに挟んだバーボンが落ちてしまいダフニが罪をかぶります。 ウハウハの寝台車では昼間のお礼にシュガーがダフニのベッドに入り、ウィスキーでサプライズ・パーティー、嗅ぎ付けた女の子たちも加わって大盛況。ベルモットを加えたカクテル作りではシェーカーの代わりが水枕。 チーズやクラッカーもあるでヨ。

シュガーの百万長者と結婚する方法!
オハイオの田舎から出て来たシュガーはテナーサックス吹きに惚れやすくて、特に”My Melancholy Baby”を吹く男にコリゴリしたので女性だけの楽団に入ったのだそうですが、フロリダには避寒に来る百万長者がゴマンといるから結婚相手を見つけようという魂胆です。 特に優しそうな眼鏡の男性がお目当てだとか。

フロリダのホテルにガールズバンドの一行が到着すると、いますいます、75歳以上の金持ち爺さんがいっぱい並んでデッキに座っています。 シュガー曰く、「孫も来てるといい」 ジョセフィンやシュガーの楽器を持ったダフニが階段でつまづくとオズグッド・フィールディング三世が跪いて靴を履かせてくれ荷物も全部運びます。 聞けば爺さんはショー・ビジネス好きでショーガールと7〜8回結婚したとかで、ダフニを今晩のディナーに誘い、エレベーターの中でお尻を触ってビンタを食らっても懲りない。 さて、さっそく海で遊ぼうとシュガーとダフニが部屋を出ると盗んだトランクのスーツと眼鏡で変装するジョセフィン。 女装した男がビシッと男装!、仲間が戯れる浜辺に盗んだ衣裳でしゃなりしゃなりとお出まし。 浜辺で金持ち男を装ったジョセフィンにシュガーが引っかかります。(いえ、引っ掛けます) 追ってきたダフニはすぐにジョセフィン(つまりジョー)だと見破りますが、ジョセフィンに知らせようとするシュガーと二人でホテルの部屋に急ぎます。 これが笑える。 まだ部屋に帰っているわけないとダフネは愉しみに変装したジョセフィンを待っていると風呂場から泡風呂に漬かったジョセフィンの歌声、シュガーが帰るとダフニは騙すなんて最低!とジョセフィンに激怒するがバスタブからあの金持ち扮装のまま起き上がったジョセフィンはダフニを脅す。 その時、ヨットから電話をかけたのはオズグッド爺さん。 「今夜、ショーの後にニューカレドニア号で二人だけで夜食でも、シャンペンとキジの冷製、それにルディ・ヴァリーのレコードもあるでヨ」 これを聞いたダフニは「あんなエロ爺いは断って!」 「俺がシュガーと行くからお前は陸で爺と」というジョセフィンに「今夜はダメだ、ジョセフィン!」

ホテルでのショーの場面では忘れられないシュガー(モンロー)の歌で””I Wanna Be Loved By You” プップッビドゥ~、プー!
このシーンで客席から大口爺さんがダフニに手を振り花束を届けてくる。 その花かごにジョーがシュガー宛のカードを入れる。 「船で夜食を、桟橋で落ち合おう」
シュガーに会うべく自転車で桟橋に急行するジョー、ダフニは言われた通りオズグッドを陸に引き止める算段。 オズグッドはクラブでタンゴを踊ることを定案する。 モーターボートでバックしながらヨットに到着したジョーとシュガーは船の豪邸でシャンパン。 船室に飾られたカジキマクロの剥製をニシンと説明するジョーが可笑しい。 ボン・ボヤージ! 自分を無害な男だと強調するジョーはシュガーとキスしても何も感じないフリをする。 感じる女性がいればすぐにも結婚するというジョーにシュガーは渾身のキスを繰り返すとジョーの眼鏡が曇り始める。
さて、場面転じて賑やかな音楽、エロ爺とダフニの蚤カップルが踊るタンゴ、どうしてもダフニがリードを取ってしまいオズグッドに注意される。 二人は客がみんな帰った後も楽団員に目隠しをしてクラブで踊り続ける。(爺さんヨレヨレ) 明け方にジョーがシュガーをボートに乗せてバックして戻った桟橋にオズグッドが到着してボートは普通に前進して戻った。
シュガーに百万ドルの寄付の領収書(キス)まで貰ったジョーはホテルの自分の部屋によじ上って戻るとオズグッドが婚約したと夢心地のジェリーがマラカスを振っていた。 ジョーがその幸運な女性とは誰?と聞くと、「俺」とジェリー。 「同性婚は認められてない!法律やしきたりってもんがあるんだぞ」とジョー。

ホテルでのギャングの抗争
シュガーと二人のバンドマンが出演するホテルにチャーリーに肩入れするボナパルトが会長を勤めるイタリアオペラ愛好会の会合にやって来たのがシカゴ南支部代表のスパッツ親分一家。 チャーリー殺しの件で目撃者を探すFBIも来ていた。 ギャングを見つけたチャーリー殺しの目撃者であるジョーとジェリーの二人は身の危険を感じてアタフタと逃げ出そうとします。 ジェリーがオズグッドから貰った白い欄とダイアモンドのブレスレットをジョーがシュガーに贈り別れを告げる。 見つからないようにとベランダづたいに降りたところ階下にいたスパッツ一家に見つかってしまい、やっと逃げ込んだパーティ会場のテーブルの下、そこはこともあろうにスパッツの席。 スパッツ用のバースディ・ケーキからボナバルトの手下が機関銃でスパッツ一家を皆殺しにする現場を又もや目撃してしまいます。 「Big Joke!(笑わせるゼ)」と言ってスパッツ親分は息絶えます。 そこにFBIが踏み込んできたおかげで、二人はようよう逃げることが出来ましたが、道路も空港も張られているのでふたたび女装して金持ち爺さんのヨットを利用することにします。 船を利用するためにオズグッドに駆け落ちをほのめかすようジョーに言われたジェリーが電話する時、ショーに出演しているシュガーの歌声が聞こえてきた。 ジョーにふられたと思い込んだ失意のシュガーが涙ぐんで歌う”I’m Through With Love(もう恋はしないわ)”を聴いて心を打たれたジョセフィンが思わず駆け寄ってキスをしてしまう。 ここでようやくシュガーがジョセフィンがジョーであることを見抜いたのですがジョーも女でないとギャングにバレて必至で逃げます。 桟橋で待つオズグッドとボートで船に向かおうとする寸前に自転車でシュガーも間に合いました! ボートの後部では全てを知ったシュガーとジョーが熱いキスを交わす。 ボートの前ではダフニを口説くオズグッドに「わかってないな!俺は男だ!」 そして、オズグッドが言う「完ぺきな人間はいない。」 ジ・エンド
☆ちなみにモンローが切なく歌った”I’m Through With Love”はジャズのクラリネット奏者だったFud Livingston(ファッド・リヴィングストン)が”Love Me or Leave Me”や”Dream a Little Dream of Me”の名曲を作曲したGus Kahn(ガス・カーン)や”I’ll Never Be The Same”や”Goody Goody”などを書いたMatty Malneck(マティ・マルネック)と共に1931年に作った曲で、歌手では同年にBing CrosbyやNat King Coleが吹き込み、女性ではDinah ShoreやElla Fitzgeraldなどが歌っていますが、演奏でもVic Dickenson(ヴィック・ディッケンソン)がColeman Hawkins(コールマン・ホーキンス)をフィーチャーして録音しています。(収録アルバムは「A True Trombone Master」ASIN: B00005BC2T)

女装したトニー・カーティスとジャック・レモン
撮影のために見事女装したトニー・カーティスとジャック・レモンの二人は完璧かどうか、撮影前に女性トイレに入って確かめてみたのだそうです。 パーペキ! ただし、トニー・カーティスが発するファルセットのオカマ声は吹き替え。
Count Basie(カウント・ベイシー)が自信の役で出演した1964年のRichard Quine(リチャード・クワイン)監督の「Sex and The Single Girl(求婚専科)」で今度は女装(女性のガウンを着用)して「ジャック・レモンみたい。」と言いながらNatalie Wood(ナタリー・ウッド)が演じる女性の精神科コンサルタントを口説いて嘘のカウンセリングを受けています。
突然ですが、トニー・カーティスの訃報
精神異常者の殺人犯を演じた1968年の「The Boston Strangler(絞殺魔)」なんていう怖い映画もありましたがたいていはロマンティックな映画に出演し、ハンサムだけどコメディアン的要素もたっぷりだったトニー・カーティスが2010年9月、心不全で85歳で亡くなりました。 50年ほど前のこと、「お熱いのがお好き」を観た私がハリウッドにファンレターを出した俳優のトニー・カーティスはサイン入りのプロマイドを送ってくれました。(多分、秘書が)

Marilyn Monroe as Suger sings Running Wild
Suger with her ukulele in Some Like It Hot
黒いフラッパー・ドレスで”ランニング・ワイルド”を歌うシュガー
マリリン・モンローが演じるウクレレで歌うシュガーはベティちゃんガーターベルトから滑り落ちたバーボンの小瓶がバンドリーダーに見つかってしまうのですが、罪を被ってやったダフネはシュガーの信頼を得ます。 女性だけのバンドだから女装した男性たちは美味しいのなんのって、女の子たちは安心して押しかけます。 ダフネはマフィアに撃たれて穴だらけのベースでRunnin’ Wild(ラニン・ワイルド)など演奏します。 ちなみにシュガーが飲んでいたバーボンとはケンタッキー州で生産されるウィスキーのことでフランス語のブルボンから由来する名前だとか。 コーンなどの穀類を蒸留して作られる40度という強い酒ですが、歌のタイトルで有名な”Mint Julep(ミント・ジュレップ)”というカクテルに使用されます。(一度飲んでみたいコリンズ・グラスのカクテル)
Marilyn Monroe – Running Wild – YouTube

さてホテルのショー公演があるフロリダでは、踊り子と8回も結婚したというJoe E. Brown(ジョー・ブラウン)が演じる大口爺さんのOsgood Fielding(オズグッド3世)が男勝りのダフネにぞっこんになります。 ジョーはシュガーをゲットしようとくすねたガールズ楽団のマネージャーのトランクからお洒落な服を失敬して金持ちに成り済ましたジョセフィンことジョーはダフネことジェリーとシュガーのいる浜辺に向かいます。 おっと、シュガーの好きな眼鏡をかけることも忘れてません。 ダフネと金持ち爺さんの代わりにジョセフィンとシュガーが豪華ヨットでロマンティックなデートをすることになりますが、ジョーはいくらキスしても感じないフリをして図々しくミルク募金で鍛えたシュガーのキスの特訓を受けます。 お熱いシーンですが私生活でモンローとトニーは「お熱いのがお好」の10年も前に交際していたことがあるそうなので堂に入っています。
一方、陸に追いやられたダフネとオズグッド爺さんはラテンクラブで花をくわえて情熱のLa Cumparsita(クンパルシータ)! ダイナマイトと爆竹カップルはタンゴでお熱い夜を過ごした挙句になんと婚約してしまいます。

Nobody’s perfect…
さて、最後のシーンがダフネとオズグッド爺さんの結婚話
絶対に「NO!」と言わない爺さんに結婚できない理由としてダフネが言う、「本物の金髪じゃないワ!」 爺さんの返事は「構わんよ。」
又ダフネが言う、「あんたのママが嫌いな煙草を吸うワ!」、爺さんは「構わんよ」
ダフネが言う「サックスマンと3年も一緒なのよ!」、爺さんは「許すよ。」
なんとか説得したいダフネが言う、「子供が産めないノ!」、爺さんは言う「貰うさ。」
もう言うことがなくなったダフネはヤケになって「うんもうー、俺、死にたいよ!」とばかりにカツラを剥ぎ取り「But you don’t understand. I — I’m a man!(分かってねえな、オレは男だ!)」・・・爺さんの名セリフ、「Well, nobody’s perfect.(完全な人はいない)」 ダッハー! これでザ・エンド!
「It’s me, Sugar」や「Where’s the bourbon?」というセリフを40回も撮り直しされたマリリン・モンローはワイルダー監督にシュガーとスパッツ親分のタンゴをラストシーンにと定案しましたが監督はダフニとオズグッドのシーンに決定したそうです。

「お熱いのがお好き」はマリリン・モンローが一番可愛い映画と冒頭で述べましたが、実は一番セクシーな映画かもしれません。 浜辺でビーチボールをして戯れるシュガーの水着は借り物のローリング20風なダサイものですが胸の部分が開いていないにも関わらずセクシーなのは乳首が立っているからです。 マリリン・モンローが1953年のNiagara(ナイアガラ)ではあのセクシーなモンロー・ウォークを編み出したことを考慮すると案外マリリン・モンロー自身の演出だったのかも知れません。 マリリン・モンローは夜汽車の中でも惜しげなく谷間を覗かせていますが、”I’M Thru With Love”を歌う時などに着ていたドレスは胸の部分が透けているようで、特に横向きだとマリリン・モンロー自慢のバストラインがくっきりと出ています。 「王子と踊子」の不評からかモンローはこの辺りから言動に行き過ぎがありワイルダー監督もおカンムリだったそうですが、撮影後に主演のClark Gable(クラーク・ゲイブル)が心臓発作で急死した映画でモンローとゲイブル共に遺作となった1961年の「荒馬と女」ではそれが絶頂に達しています。 そしてこの一年後、1962年に36歳のモンローは睡眠薬の過剰摂取で急死してしまいました。

Not Tonight Josephine
Lemmon & Tony「お熱いのがお好き」の製作中の仮タイトルは”Not Tonight Josephine(ジュセフィーヌ、今夜はよそうよ)”でした。 この名セリフはジャック・レモンが演じるダフネがオズグッド爺さんからのお誘い電話の後にトニー・カーティスが演じるジョセフィンに言ったのです。
ダフネはいつも有利にさせてあげているけど、「今夜は駄目!」と。
※これはフランス語ではPas Ce Soir Josephineといい、Napoléon Bonaparte(ナポレオン)が妻のJosephine de Beauharnais(ジョセフィーヌ)に言ったとされる有名な言葉です。(チーズでも食べている夢を見てたらしく寝ぼけて言ったとか)
「お熱いのがお好き」ではトニー・カーティスが演じるジョーが女装した時の呼び名が”ジョセフィーヌ”だからでしょう。
※「わが辞書に不可能はない」と同じ位に「今夜は駄目だ、ジョセフィーヌ」が有名な言葉のナポレオン1世(ボナパルト)は砒素か胃癌かと謎の死を遂げました。

Rudy Vallée
オズグッド3世爺さんがダフネをヨットに招待する時の言ったセリフに、”Rudy Vallee(ルディ・ヴァリー)”の新しいレコードがあるよ。」というのがありましたが、ルディ・ヴァリーとは1930年代に活躍した楽器も演奏するハンサムなポップス歌手で、ボビーソクサー(アイドル)の先駆けと云われて当時のフラッパーたちに大変人気があったそうです。 1943年にカバーした”As Time Goes By”が大ヒットしたルディ・ヴァリーの生出演(ライヴ)はひと目でも見たいという女性たちのおかげで全て満員御礼というほどの人気、後のクルーナーのBing Crosby(ビング・クロスビー)やFrank Sinatra(フランク・シナトラ)などが影響を受けたといいます。 ルディ・ヴァリーの最初の映画出演は1929年の「The Vagabond Lover」で、映画の他にラジオ番組を持ったり、1934年に制作された赤毛のベティちゃんのカラー漫画「Betty Boop – Poor Cinderella」の舞踏会での楽器の音真似をするメガホン・クルーナー役で出演したことがあるとか。 1942年の映画「Casablanca(カサブランカ)」でDooley Wilson(ドゥーリイ・ウィルソン)が歌った”As Time Goes By”は1930年代にルディ・ヴァリーが録音した曲だといわれています。 Cesar Romero(シーザー・ロメロ)も出演した1959年の「The Lucy-Desi Comedy Hour(ルーシー・デジ・コメディ・アワー)Season 1 – Episode 1」”Lucy Takes a Cruise to Havana”にルーシーとリッキーの馴れ初めに絡むエピソードに出演しています。
♪ ルディ・ヴァリーの”Life Is Just a Bowl of Cherries”が聴けるRudy Vallee -Life Is Just a Bowl of Cherries – Don Edrington’s Big Band

video「お熱いのがお好き」の予告編が観られるオフィシャル・サイトはSome Like It Hot Trailer – MGM.com
Some Like It Hot Trailer – VideoDetective.com (最初に宣伝あり)

「お熱いのがお好き」の映画タイトルデザインはマリリン・モンローが出演した「The Seven Year Itch(7年目の浮気)」と同じくお洒落なSaul Bass(ソウル・バス)のデザインです。

Listen「お熱いのがお好き」の音声が聴けるサイトはBijou Follies (バンドの一行が汽車に乗り込む前に女装したトニー・カーティスとジャック・レモンとマリリン・モンローが出会う最初の方のシーンやマリリン・モンローの歌2曲、ジャック・レモンが爺さんに「実は男よ」と告白するシーン)
マリリン・モンローとカーティスの会話が聴けるTony Curtis & Marilyn Monroe Sound Clips – wavsource.com

I just went GAY, All of a Sudden!
トニー・カーティスが演じるジョセフィンことテナーマンのジョーはお金持ちに扮して、マリリン・モンローが扮するクラブ歌手のSugar(シュガー)を誘惑しますが、トニー・カーティスは当時人気のハンサム俳優のCary Grant(ケイリー・グラント又はケーリー・グラント)を真似たそうです。 これは恐らくHoward Hawks(ハワード・ホークス)が監督した1938年の映画「Bringing Up Baby(赤ちゃん教育)」の中で女性用ナイトガウン姿の言い訳にアドリブでゲイ宣言をしたケーリー・グラントをイメージしたのでしょう。(実際私生活では西部劇スターで共演もしたことがあった「Hangman’s Knot(ネバダ決死隊)」で南軍の少佐マット・ステュワートを演じたRandolph Scott(ランドルフ・スコット)との親密な交友関係が公然の秘密だったとか)
ただし、グラントは「ワタシはあんなじゃない!」と言ったとか……そう、ゼンゼン似てない!
トニー・カーティスといえば、公開当時、あまりに素晴らしい映画で感激した私はファンレターを出すことにしました。 さて、誰にしようかなと思ったのですが当時ティーンエイジャーだった私はやはり男性、ハンサムなトニー・カーティスを選んだのでした。 映画雑誌に公開されていた撮影所気付けで届いたようです。 そして来ました!トニー・カーティスからの返事が。 サイン入りの写真だけでしたが。

当時の大物コメディアンだったJerry Lewis(ジェリー・ルイス)は女装はイヤだね!と出演を断ったのでジャック・レモンが演じてオスカーにノミネートされました。 当初は女装役を引き受けてくれたジャック・レモンにチョコレートなど贈って感謝してましたが、今じゃ役を引き受けなかったことを後悔してるそうです。 ジャック・レモンの映画では「お熱いのがお好き」の前の1958年のBell, Book and Candle(媚薬)でのビートニク役も面白いですが、なんといっても「お熱いのがお好き」の後に主演した1960年の「The Apartment(アパートの鍵貸します)」(DVDの例としてASIN: B004X3Z30M)が最高です。

It’s me, Sugar. Where’s the bonbon?’
Hey, It’s — Suger, not ‘bonbon, it’s the bourbon!

Tony, Lemmon and Monroe
Boop-boop-a-doops!

I Wanna Be Loved By You by Marilyn Monroe
貴方にだけに愛されたい
貴方にだけ、他の誰でもない
貴方一人に愛されたいのよ~・・・pooh pooh bee doo!とマリリン・モンローが歌うI Wanna Be Loved By You(あなたに愛されたいのに)の歌詞はI Wanna Be Loved By You – LyricsMode.ccom

I Wanna Be Loved By You(アイ・ウォナ・ビー・ラヴド・バイ・ユー)は、1920年代の元祖”Boop-boop-be-doop!”のHelen Kane(ヘレン・ケイン)が1950年の映画「Three Little Words(土曜は貴方に)」で、ヘレン・ケイン役を演じたDebbie Reynolds(デビー・レイノルズ)のために吹き替えで歌ってヒットしたものだそうです。

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元祖プップッビドゥ~!のヘレン・ケイン

ページトップの画像はAmazon.comにあるDVDですが、こちらの画像は2002年に発売された日本語字幕の「お熱いのがお好き」のDVDです。
Some Like It Hot DVDお熱いのがお好き〈特別編〉
これまで発売されたDVDは殆ど入手困難ですが2011年5月に「お熱いのがお好き Blu-ray(ブルーレイ)」が発売になります。(カバー画像はカラーですが中身は白黒)

Some Like It Hot: Original MGM Motion Picture Soundtrack[Enhanced CD]
「お熱いのがお好き」のサウンドトラックCDです。
Some Like It Hot CDSome Like It Hot: Original MGM Motion Picture Soundtrack [Enhanced CD]
映画「お熱いのがお好き」の音楽はジャック・レモンが主演したビリー・ワイルダー監督の1960年の「The Apartment(アパートの鍵貸します)」と同じAdolph Deutsch(アドルフ・ドイッチ)が担当して”Runnin’ Wild”、”I Wanna Be Loved By You”、”I’m Through With Love”などのマリリン・モンローの歌に加えて”Randolph Street Rag”を作曲しています。

Billy Wilder
ビリー・ワイルダー監督の映画は「お熱いのがお好き」や「アパートの鍵貸します」のようなコメディばかりではなく多岐に渡るジャンルの映画を監督しています。 1941年にGary Cooper(ゲイリー・クーパー)が主演した「Ball of Fire(教授と美女)」の脚本を手掛けた後から監督もするようになり、ミステリーの「Double Indemnity(深夜の告白)」をアカデミーを受賞した「The Lost Weekend(失われた週末)」の後に手掛けました。 この後も大作続きで社会派の「Ace In The Hole(地獄の英雄)」、William Holden(ウィリアム・ホールデン)を主役に超大ヒット作品の「Sunset Blvd.(サンセット大通り)」や戦争ものの「Stalag 17(第十七捕虜収容所)」、Audrey Hepburn(オードリー・ヘプバーン)を主役に「麗しのサブリナ」や「Sabrina(昼下りの情事)」、マリリン・モンローを主役に「The Seven Year Itch(七年目の浮気)」、飛行士を描いた「The Spirit of St. Louis(翼よ!あれが巴里の灯だ)」、そして「お熱いのがお好き」の前がMarlene Dietrich(マレーネ・ディートリッヒ)が主演したミステリーの「Witness for the Prosecution(情婦)」でした。 アガサ・クリスティーの原題の意味は検察側の証人ですが映画ではなぜか愛人を意味する情婦、いや情けのある女か。

お熱いのがお好き Some Like It Hot (1959)」への2件のフィードバック

  1. す、すごいトリビアの数々ですね。リンクされている映像や音楽も楽しませていただいています。
    ジャック・レモンの役をジェリー・ルイスにやらせる話もあったんですね。フランク・ジナトラという話も聞きましたが...

  2. koukinobaaba より:

    「街角」の記事ではお世話になり有難うございました。
    女装の件ですが、ジェリー・ルイス説は確かIMDbで読んだと思います。シナトラ説もあったのですね。いづれにせよジャック・レモンで大成功でそれ以来女装映画もたくさん出現したようですね。

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