コーヒールンバ Moliendo Cafe

Moliendo Cafe CD (ASIN: B000003VLW) by Ignacio Alderete – Amazon.co.jp
Moliendo Cafe
Moliendo cafe – Amazon.com (MP3 Download)

その昔、珈琲のアロマ(香り)は媚薬だったのでしょうか
初めてアロマなる言葉を聞いたのが「コーヒールンバ」でした。
Moliendo Café -Paco De Lucia – YouTube
上記のリンク先で聴ける曲はフラメンコ・ギタリストのPaco De Lucia(パコ・デ・ルシア )が演奏する”Moliendo Cafe(コーヒー・ルンバ)”です。 パコ・デ・ルシアはAntonio Gades(アントニオ・ガデス)が主演した1983年のスペインのフラメンコ・ミュージカル映画「Carmen(カルメン)」に出演し、音楽も手がけて英国アカデミー賞で作曲賞を受賞しました。

日本では”コーヒールンバ”は美人歌手の西田佐知子(現関口宏夫人)さんの昭和36年(1961年)のヒット曲ですが、オリジナルはベネズエラのJosé Manzo(Josse M.Perroni /ホセ・マンソ・ペローニ)の作詞・作曲のMoliendo cafe(モリエンド・カフェ又はモリエンダ・カフェ)というラテンの名曲で”珈琲豆を挽きながら”を意味し世界中でヒットしました。
私は当時コーヒーの種類も知らなかったので「コーヒー、モカ・マタリ」という歌詞を珈琲のモカマタリではなく「コーヒーも釜足」だと思い込んでしまいました。 人気少女漫画の1954年の映画化で「あんみつ姫」のパパを演じたフジワラ・カマタリ(藤原釜足)さんを思い出したのです。 実は、優しい酸味でさわやかな香りのMocha Mattari(モカ・マタリ)というアラビア半島(中東)はイエメンやエチオピア産出の高級コーヒー豆を意味していたそうです。

Rumba
(スペイン→キューバ←アフリカ)
英語風に”Rhumba”と綴られることもある”ルンバ”はキューバ音楽のリズムの基礎となるClave(クラーベ)はアフリカから連れてこられたキューバの奴隷たちの祖国である西アフリカが起源です。 その名の由来はパーカッションのClaves(クラベス)からです。 アメリカでいうルンバとは1920年代に誕生したキューバのSon(ソン)という音楽スタイルを指すそうで、コンガがメインのルンバの一種でGuaguanco(ワワンコ)というスタイルが最もポピュラーなんだとか。 つまりはアメリカナイズされたソンのことでしょうか。 いわゆるCuban Rumba(キューバン・ルンバ)というのは奴隷の宗教音楽がもとになってキューバで娯楽化した非宗教的な打楽器音楽が変化したのだそうで、2拍子及びシンコペーションのダンス音楽でちょっとエロティックです。 ただし1940年代にはスペインのカタルーニャ・ジプシーがルンバを広めたという説もあります。 長さ20センチほどの円筒形の拍子木でリズムを打ち出す楽器のクラベス(クラーベ)がソンとルンバではどう違うかと言うと、ルンバの場合はより鋭いシンコペーションになっているそうです。 四分の四拍子の二小節で一つのパターンとなっていますが、一小節の三つ目の四分音符が付点四分で四つ目の四分音符が八分音符となるそうです。(私は音符は読めませんが)
※ 社交ダンスのルンバでは2拍目から踊るキューバン・ルンバがダンス種目のルンバに採用されているとか。(詳しくは分りません)

コーヒールンバはルンバではありません!えっ?えっ?
そんなこと言ったのはどこのどいつだっ! あたいだよ!
Moliendo Cafe(コーヒールンバ)は厳密にいうとルンバではなく、ベネズェラのHugo Blanco(ウーゴ・ブランコ)が新たに生み出したOrquidea(オルキデア)というリズムだそうですが、この”Moliendo Cafe”はキューバ音楽に多いClaves(クラベスという丸い拍子木)のCinquillo(シンキージョ)という五つ打ちがこの曲には入っているそうです。 じゃルンバか?

1961年に、”Moliendo Cafe”の作曲者マンソ・ペローニの甥でアルパと呼ばれる中南米のハープ奏者のウーゴ・ブランコがOrquidea(オルキデア スペイン語で欄の意味)という新しいリズムで演奏したのが大流行しました。 ベネズェラのウーゴ・ブランコが作詞した”Moliendo Cafe”もあるそうです。

ウーゴ・ブランコが生み出したオルキデアというリズムはは大流行とはいきませんでしたが、キューバ出身のPerez Prado(ペレス・プラード)は世界中にマンボのリズムを広めてマンボの王様と呼ばれました。 そのペレス・プラードもコーヒールンバを演奏しています。

Moliendo Café by Julio Iglesias
さてお次は”世界の恋人”の異名を取るスペイン出身のJulio Iglesias(フリオ・イグレシアス)が歌うコーヒールムバ!
♪ Julio Iglesias – Moliendo Café
(なにゆえ珈琲挽きの歌がこんなにセクシーになるのだろう…共演者とのお熱いシーンが多いJeane Manson(ジェーン・マンソン)との1977年の超セクシーなデュエット映像は削除されることあり! オーララ)
♪ Julio Iglesias & Jeane Manson – Moliendo Café (1977)

1990年代にデビューして”Besame”のヒットで知られるベネズエラのラテン・ポップ歌手のRicardo Montaner(リカルド・モンタネール)も人気アルバム「Sueño Repetido」(ASIN: B00005899X)のなかで”モリエンドカフェ”を歌っています。
リカルド・モンタネールのコーヒールンバの試聴は「Sueno Repetido – Qobuz.com

Mina Mazzini – Moliendo cafe – Mina50 – YouTube

ちなみに世界中で歌われているコーヒールンバは東南アジアでは1990年代にはインドネシアの民族音楽Dangdut(ダンドゥット)を取り入れたマレーシアのダンドゥット歌手のFahmy Shahab(ファミー・シャハブ)が歌ったKopi Dangdut(コピ・ダンドゥット/コーヒールンバ)が流行ったそうです。
♪ Fahmy Shahab – Kopi Dangdut

カナダのブルースハープ(ハーモニカ)奏者のCarlos del Junco(カルロス・デル・ジュンコ)のオフィシャルサイトで2003年のアルバム「Up and At ‘Em」(ASIN: B00006L5RF)に収録されている”Moliendo Cafe(モリエンド・カフェ)”が聴けます。 「Moliendo Cafe – Carlos del Junco Official Site – CarlosdelJunco.com
カルロス・デル・ジュンコは2005年にMaple Leaf Bluesで2005年度ハモニカ奏者賞を受賞した他、ブルースハープの製造でも有名なドイツのハーモニカ・メーカーHohner(ホーナー)社主催のコンテストで2度も金賞を受賞したそうです。

Moliéndo Café by José Manzo Perroni
「日が暮れていく頃 闇が再び姿を現す
静けさの中 珈琲農園はその珈琲を挽く音に
悲しい愛の歌を再び感じ始める
それはまるで無気力な夜の中 嘆き悲しんでいるかのよう
一つの愛の苦しみ 一つの悲しみ
それは給仕のマヌエルが持ってくる珈琲の苦みの中にある
珈琲を挽きながら 終わることのない夜が過ぎていく」
Hugo Blancoの原曲の歌詞はMoliendo Cafe Lyrics – lyrics.com

Grandes Exitos
日本で有名なウーゴブランコ演奏のコーヒールンバ
Moliendo Cafe - Hugo Blancoオリジナルは1993年というウーゴブランコのコーヒールンバを収録した1995年盤アルバムの「Grandes Exitos」(ASIN: B00000JQEM)は現在入手困難になりました。
♪ 試聴は2016年リリースの類似したアルバムGrandes Exitos – Hugo Blanco – レコチョク

Moliendo Café – Hugo Blanco y su Conjunto – From the Album Sus Grandes Exitos – YouTube
上記のアルバム以外にウーゴブランコのコーヒールンバを収録しているのはコンピレーション・アルバムの「The Rough Guide to the Music of Venezuela」(ASIN: B0000CNXD9 10番目)
他にも日本でヒットした”太陽がいっぱい”や”第三の男”など22曲を集めた国内盤コンピ・アルバムの「魅惑のイージーリスニング・ヒッツ・コレクション」(ASIN: B00005FMLB 15番目)などにも収録されています。 ちなみに日本で”悲しみのルンバ”として知られたウーゴ・ ブランコ楽団演奏の1964年の曲”Dos Esclavos”を収録したアルバムは日本で1985年にポリドールからリリースされた12曲収録の「Moliendo Café」だそうですが見つかりません。

Hugo Blanco – Moliendo Café (1960) – YouTube

西田佐知子のコーヒールンバ
演歌でも艶歌でも恨歌でもない西田佐知子さんのレパートリーの中で洋楽を取り入れた和製ポップスの”コーヒールンバ”は飛びぬけて明るい曲です。(東京ロマンチカや前川清もいいが、私は西田佐知子なら”女の意地”が好き)
Coffee Rumba - Sachiko Nishidaコーヒー・ルンバ CD (ASIN ‏ : ‎ B00005HVBU) – Amazon.co.jp
西田佐知子 – コーヒールンバ (1961年) – YouTube

Moliendo Cafe – Ignacio Alderete
ページトップのCD画像はパラグアイのハープ奏者であるIgnacio Alderete(イグナシオ・アルデレーテ)が演奏する”Moliendo Cafe”を収録した1994年発売のCDです。 イグナシオ・アルデレーテの”Moliendo Cafe”は「Les plus grands succes d’Amérique Latine」というアルバムにも収録されています。
オルガンはGilberto Bellagamba(ギルベルト・ベラガンバ)、ギターはLucio A. Ramirez(ルイ・ラミレス)、Ensemlbe Cochabamba(ボリビアのコチャバンバ・アンサンブル)です。 アルパ(インディア・ハープ)の父と呼ばれるFelix Pérez Cardozo(フェリックス・ペレス・カルドーソ)の影響を受たアルパ奏者のイグナシオ・アルデレーテは祖国パラグァイを出てアルゼンチンで活動した後にフランスに渡りました。 1976年にLes Guaranis(レ・グアラニー又はLos Geranios)に参加して世界中で演奏及びレコーディングをしています。 ギターやベースと調和してトラディショナルよりもっとリズミカルな演奏です。アルパも色々ありますがイグナシオ・アルデレーテはやはりパラグァイの楽器を使用しているそうです。 パラグァイのアルパは16世紀にイエズス会の宣教師がもたらしたといわれ、Guaranis(グアラニー)というのもパラグァイの先住民を指しています。 パラグアイのパラナ川北岸のイエズス会伝道所も南米のユネスコ世界遺産の一つとなっている歴史的な地の名前です。

Stanley Black Orquestra – Moliendo Café (La Colegiala) – Amazon.com (MP3 Download)

コーヒールンバ Moliendo Cafe」への3件のフィードバック

  1. kaji-G より:

    koukinobaaba様
    遅くなりましたが このページのリンクと記事(部分)
    を 転載させて頂きました。
    順番が逆で 申し訳ありませんでした。。。
    しかも 文章の書き換えまで させてしまい。。。
    恐縮いたします。
    とても参考になりました。 有り難うございました!

  2. koukinobaaba より:

    昨年の11月から記事を書いていない状態なのでコメントのチェックが遅れて申し訳ありません。

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