1956年の「The Ten Commandments(十戒)」で有名なスペクタル映画の巨匠であるCecil B. DeMille(セシル・B・デミル)が製作・監督したサーカス映画の超娯楽大作で、サーカスのためなら血も涙も無いというCharlton Heston(チャールトン・ヘストン)演じるブラッド団長が率いる旅から旅への移動サーカス一座の興業を描いています。
撮影所でセシル・B・デミル監督に手を振って挨拶したことから「地上最大のショウ」の主役の座を掴んだチャールトン・ヘストンはこの映画でスターの座を確立しました。 共演者はJames Stewart(ジェームズ・スチュワート)、ブランコ乗りのホリーにBetty Hutton(ベティ・ハットン)はカメオ出演したBob Hope(ボブ・ホープ)と「底抜け」シリーズに出演 踊り子のフィリスを演じたDorothy Lamour(ドロシー・ラムーア)もビング・クロスビーとボブ・ホープの「珍道中」シリーズなどに出演しました。 ホリーのライバルブランコ乗りのセバスチャンを演じるのはアラジンやロビンフッドを演じたことがある高所恐怖症のCornel Wilde(コーネル・ワイルド)です。 小屋を仕切る象使いのヘンダーソン役は1947年にロバート・ワイズ監督の「Born to Kill(生れながらの殺し屋)」で殺人狂のサム・ワイルドを演じたLawrence Tierney(ローレンス・ティアニー)ですが女象使いのエンジェルは「素晴らしき哉、人生!」で婦人警官のバイオレットを演じたGloria Grahame(グロリア・グレアム)でサムの嫉妬から危うく巨像の足で踏まれる恐怖をあじわいます。 又、The Ringling Bros. and Barnum & Bailey® Circus(リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム & ベイリー・サーカス)の社長であるJohn Ringling North(ジョン・リングリング・ノース氏)が彼自身の役で出演し、技術的なアドバイスもしました。 2017年の伝記ミュージカル映画「The Greatest Showman(グレイテスト・ショーマン)」でHugh Jackman(ヒュー・ジャックマン)が見世物小屋的フリーク・ショーで有名なPhineas Taylor Barnum(P・T・バーナム)を演じています。(高齢女奴隷の死後に観客一人50セントの検死解剖ショーで悪名高い) この映画では空中ブランコ乗りのアン・ウィーラーを演じたZendaya(ゼンディアー)が容貌肢体技量共に素晴らしい。
ヘストンの出演映画では宗教や歴史がテーマの映画も多いですが蟻がテーマの「The Naked Jungle(黒い絨毯)」や人間が猿に支配されるPlanet of the Apes(猿の惑星)や人間が人間の食料になるSoylent Green(ソイレント・グリーン)など衝撃の事柄が題材となった映画が印象的です。 よもや後にチャールトン・ヘストンが共和党の大きな支援団体であるNRA(全米ライフル協会)会長を勤めるなどとは思いもよりません。(アルツハイマー病になる2003年に辞任) 2002年にマイケル・ムーア監督が米コロンバイン高校銃乱射事件を扱った映画「Bowling For Columbine(ボウリング・フォー・コロンバイン)」の映像で事件直後にガンラリー(集会)に赴いたヘストンが「我々は銃を捨てない!」と叫んでいたのが印象的でした。 「銃は死んでも渡さない!」
リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム & ベイリー・サーカスのオフィシャルサイトはRingLing.com(英語)
「地上最大のショウ」は1952年度のアカデミー賞で作品賞と原案賞を受賞し、同じ年のゴールデン・グローブの作品賞と監督賞(セシル・B・デミル)と撮影賞(J・ペヴァレル・マーレイ、ジョージ・バーンズ)に輝いた作品ですが、どうしてアカデミー作品賞を獲得したのか、その理由が判らない唯一の映画なんだそうです。 1952年なら「真昼の決闘」じゃ?、「静かなる男」じゃ? なんでも英国でのワースト・アカデミー受賞映画の3番目だったそうです。
「地上最大のショウ」では、まるで「ノアの箱舟」のようにサーカス列車に乗ったリングリングサーカス一行が新しい町に着くと明け方までに数百人の男達がせっせと大きなテントを張ります。 そこで繰り広げられる豪華絢爛なショーやハラハラドキドキの曲芸はスリル満点です! 1932年の「怪物団 フリーク」に出た小人のAngelo Rossitto(ロシット)と、この映画ではコミカルな曲馬乗りで観客を沸かせたDaisy Earles(アールス)が出演しています。(アールスはCucciolaと共にリングリング・サーカスの団員)
ブラッド団長の恋人ホリーと色男のブランコ乗りスターのグレート・セバスチャンのネット無し空中ブランコ決闘やホリーの片手連続宙返りの新記録挑戦、団体ロープ演技などや、今ならディズニー・ランドでいつでも見られるミッキー・マウス(?)などの着ぐるみが参加する華やかなパレード、アクロバット、象やライオン達の演技やマジック・ショーと盛り沢山! 早撃ちのホパロング・キャシディまで! 熊はもちろん、キリンやカバまで!まるで自分が巨大なサーカス・テントのなかで本当に観てるみたいです。
クライマックではデミル監督お得意のスペクタクル・シーン、ヤクザな連中の現金強奪計画から玉突き状に列車がテレスコープされ車両がグシャグシャになるような衝突事故シーンでは、檻からライオンは出るわ、像は出るわで大騒ぎ! それでもなんとか事故現場で青天井サーカスを開催することに。 観客? そうです、町にパレードを繰り出して”The Pied Piper of Hamelin(ハメルンの笛吹き)”さながらに町中の人々を連れて来ちゃうんです。(いや、ハーメルンの笛吹き女じゃなくてこの笛吹き男はグリム童話ではネズミですが子供(笛吹がペドフィリアで)だったとかだけど)
地上最大のサーカスだよ!さあ、サーカスへいらっしゃい! 青空サーカス!
The Greatest Show On Earth Trailer – YouTube
ジェームズ・スチュワートが演じるピエロの”ボタンズ”は元医者ですがワケ有り(不治の病に苦しむ妻を安楽死)で追われる身なので絶対にピエロの白塗り化粧を落とさないのです。 一生に一人しか愛さない。
1963年から放映されたTVドラマ「The Fugitive(逃亡者)」のキンブル医師(David Janssen)は妻殺しの真犯人を追って逃亡生活を続けるのですが愛故に妻を死に至らしめたボタンズは身を潜めているだけ。
この映画でサーカスの観客の中にポップコーンを摘みながらボブ・ホープとビング・クロスビーの”珍道中コンビ”が観客としてカメオ出演しています。
私が驚いたのはMidway Barkerとしてなんと「ヒッチハイカー」のEdmond O’Brien(エドモンド・オブライエン)がエンデイングの口上、”本日の公園は終了です。ぜひ、またのお越しを…地上最大のショーへまたどうぞ!”
The Greatest Show On Earth Soundtrack
映画「地上最大のショウ」の音楽はVictor Young(ヴィクター・ヤング)で”The Greatest Show on Earth”のテーマや”Be a Jumping-Jack”などを作曲しています。
♪ 試聴はThe Greatest Show on Earth (Original Movie Soundtrack) – Qobuz.com
クラシック音楽の他にもHenry Sullivanの曲が使用され、出演したベティ・ハットンが”The Greatest Show on Earth”や”Only a Rose”を、ドロシー・ラムーアがクレジットなしで”Lovely Luawana Lady”を歌います。 1963年の「Donovan’s Reef(ドノバン珊瑚礁)」の他、Bing Crosby(ビング・クロスビー)の珍道中シリーズで有名なドロシー・ラムーアは「Some Like It Hot(お熱いのがお好き)」のセリフにあるように1940年代には超人気歌手のRudy Vallee(ルディ・ヴァリー)に見初められてラジオ番組で歌手として歌っていたことがありました。 なんと戦時中には戦地の兵士たちに大人気のピンアップガールだったとか。
“Only a Rose”はパラマウント映画に所属していた女優で歌手のJeanette MacDonald(ジャネット・マクドナルド)が1930年の総天然色トーキー映画「The Vagabond King(放浪の王者)」で歌った有名な曲です。
「地上最大のショウ」以外のサーカス映画
1946年に「The Killers(殺人者)」でデビューしたBurt Lancaster(バート・ランカスター)は実際に元サーカス団員だったといわれますが、そのランカスターとGina Lollobrigida(ジーナ・ロロブリジーダ)が共演した1956年の「Trapeze(空中ブランコ)」や、「ギルダ」のリタ・ヘイワースが出演した1964年の「The Circus World(サーカスの世界)」などがあります。
「地上最大のショウ」を観るといつでもで本当にサーカスに行ったみたい!
ページトップの画像は「地上最大のショウ」のDVDですが現在は入手困難のためリンクは2010年版です。下記は1998年販売の輸入版VHSです。
Greatest Show on Earth (VHS)
Audio-Visual Trivia内のジェームス・スチュワートの出演映画
1940年の街角 桃色の店
1946年の素晴らしき哉、人生!
1958年のめまい
1958年の媚薬
☆リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム&ベイリー・サーカスは135年もの歴史を持つアメリカの大サーカス団で、赤、青、金の3ツアーがあるのだそうです。 1870年に現在のマジソン・スクエアガーデンで行われたのが始まりだそうです。
ところで、貴方はサーカスを観たことがありますか? 私は小学生の頃に一度だけ木下大サーカスに行きました。 うろ覚えですが、後楽園あたりで公演されたと思います。
非日常的な空間という点で華やかで楽しいサーカスの要素の1つとして存在するものには危険性があるということを見逃してはいけません。 命がけの空中ショーや動物ショーなど一つ間違えば大惨事になるのです。 この映画の中でも命綱やネット無しでのブランコ演技に失敗して大怪我をした団員がいましたね。 あるいはテレビなどのニュースで象が暴れだしたり、熊が襲い掛かったりした映像を観たことがあるでしょう。 Siegfried & Roy(ジークフリード&ロイ)というドイツ移民の二人組マジシャンによるホワイト・タイガーとホワイト・ライオンを使ったイリュージョンが1991年代からラスベガスで人気を博しましたが、2003年にロイ・ホーンが虎に首を噛まれるという事故がありました。 サーカスの動物ショーは観ては楽しいが、その一面で1995年頃から悲惨な像たちの実態が問題になっているようです。(リングリングブラザースがゾウの虐待容疑で裁判にかけられ紛争の解決を第三者にゆだねる仲裁契約に関して最高裁まで争った1997年?のリングリングサーカス事件)
Legal case against Ringling Brothers and Barnum and Bailey Circus for mistreatment of elephants
動物サーカスは存続するか