Coleman Hawkins (1904-1969)
Hawk: The Greatest Tenor Saxophone Player Ever
コールマン・ホーキンスはなんと9歳でサックスを吹き始めていたそうで、Lester Young(レスタ-・ヤング 1909-1959)と並びテナ-・サックスの巨人、又は始祖と呼ばれます。 コールマン・ホーキンスの後にはこれまた偉大なテナーマンのBen Webster(ベン・ウェブスター 1909-1973)がきますが、スウィングで活躍したが自動車事故で急逝したChu Berry(チュー・ベリー 1908-1941)もいました。(ちなみにチュー・ベリーのファンだったビート詩人のJack Kerouac(ジャック・ケルアック)が代表的な1954年の小説「The Subterraneans(地下街の住人)」の中で”The great Chu Berry”と言及しているとか)
ニューオリンズ・ジャズ時代にはSidney Bechet(シドニー・ベシェ)と共にトロンボーン奏者のKid Ory(キッド・オリー)のバンドに所属していたJimmie Noone(ジミー・ヌーン)やJohnny Dodds(ジョニー・ドッズ)などの巨匠に代表されるニューオリンズ・クラリネットがリード楽器でしたが、1920年頃になってジャズにサックスが使われるようになりました。 クラリネット奏者のシドニー・ベシェが初めて録音にソプラノ・サックスを使用してから一般化しましたそうです。 特にテナー・サックスはソロ楽器としてジャズ音楽の王様となったのです。
☆サキソフォンについては「サクソフォン演奏技法の変遷」のサクソフォンの楽器としての歴史
Coleman Hawkins plays Body And Soul
ミズーリー州出身のコールマン・ホーキンスは1922年にブルース(ブルーズ)を最初に録音したというMamie Smith(マミー・スミス)のバック奏者としてニューヨークにやって来ました。 この頃はまだジャズがのなんたるかを知らなかったといわれるコールマン・ホーキンスは1923年からFletcher Henderson(フレッチャ-・ヘンダ-ソン)楽団に参加しました。 その翌年に本場もののニューオリンズからジャズがやって来たのでした。 つまりルイ・アームストロングが入団したのです。 それでニューヨークのジャズ・シーンは大騒ぎになったそうです。 コールマン・ホーキンスはヘンダ-ソン楽団10年在籍したのですが、1934年に渡欧、その頃パリで自分の楽団を率いて活動していたスィング・ピアニストのFreddy Johnson(フレディ・ジョンソン)等とコールマン・ホーキンスがセッションしたそうです。(1984年にリリースされたフレディ・ジョンソンのLP「Live at B.B. Joe’s」は2006年にCD化(ASIN: B000EBDDBS)されています)
ホーキンスは帰国後1939年の初レコーディングがBetty Boop(ベティちゃん)の漫画のテーマ曲を作ったピアニストのJohnny Green(ジョニー・グリーン)が1930年に作曲した”Body And Soul(身も心も)”だったのです。 当時としてはアドリブが効いた革新的な演奏で大ヒットとなります。 特にコールマン・ホーキンスのバージョンは決定版で、若いテナーマンのお手本となりました。 このようなジャズがヒットするなんて、当時のジュークボックスにはなかったことだったそうです。 主だったジャズメンがビバップに背を向けた時もコールマン・ホーキンスはこれを支持したというほど時代と共に新しいものを取り入れて演奏スタイルを変化させていきました。 コールマン・ホーキンスのアドリブ奏法は後にCharlie Parker(チャーリー・パーカー)などのピバッブ奏法の元となったそうです。 ちなみにコールマン・ホーキンスは1937時年に”Body And Soul”のジョニー・グリーンが作曲した”(You Came Along From) Out Of Nowhere”もDjango Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)などと録音していますが、この”Out Of Nowhere”は後にMiles Davis(マイルス・ディヴィス)やPaul Desmond(ポール・デスモンド)なども演奏しました。
☆コールマン・ホーキンスが演奏する息漏れが聞えるハスキー(?)なテナサックスの”Body And Soul(ボデイ・アンド・ソウル)”を聴くとチャーリー・パーカーの”Lover Man(ラバー・マン)”と同じく、その畏敬をも感じさせるアドリブの迫力に引き込まれ、まるで自分が吹いているみたいに呼吸困難状態になってしまいます。 私が魅せられたのはコールマン・ホーキンスが演奏する初期のバージョンのボディ・アンド・ソウルです。
Coleman Hawkins and J.A.T.P.
1950年代にはJ.A.T.P.(Jazz at the Philharmonic)に参加したコールマン・ホーキンスはアドリブ演奏のために演奏する曲の歌詞を参照したといわれます。
コールマン・ホーキンスは1969年に肺炎で亡くなりましたが、一説には年を取ることが耐えられなかったのだとか。
1930年にジョニー・グリーンが作曲し、後にRobert Sour(ロバート・ソウア)、Edward Heyman(エドワード・ハイマン)、Frank Eyton(フランク・アイトン)の共作で歌詞がつけられた”Body And Soul(ボデイ・アンド・ソウル)”はジャズシンガーに大変人気があり、男性歌手ではLouis Armstrong、ラットパックのFrank Sinatra(フランク・シナトラ)やMel Torme(メル・トーメ)など、女性ではElla Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)、Sarah Vaughan(サラ・ヴォーン)やBillie Holiday(ビリー・ホリデイ)などが歌っています。
☆”My heart is sad and lonely, For you I cry, For you, dear, only…”と歌われたBody And Soulの歌詞はBody And Soul Lyrics – LYRICS FREAK
☆”ボディ&ソウル”を演奏したコールマン・ホーキンス、レスター・ヤング、Roy Eldridge(ロイ・エルドリッジ)などの写真が見られるイタリアのIl Bebop: L’inizio della rivoluzione: 1940-1941 – JazzItalia.net(チャーリー・パーカーのBody and SoulのクリップもRealPlayerで聴けます。 Body and Soul (Real Audio) (1 ottobre 1940)をクリック) レスター・ヤングのボディ・アンド・ソウルはMP3アルバム「38 Essential Jazz Standards By Lester Young」(ASIN: B004XM065K)などに収録されています。
♪ 試聴は38 Essential Jazz Standards By Lester Young – レコチョク
オリジナルは1944年と云われますが50年代初期に再リリースされたLPアルバム「in Sax」から「5054 Whitsett」が聴けるwfmuラジオのプレイリスト 「Playlist for Marc Grobman – December 22, 2002」(私はプレーヤーをPop-upにしていますが、You can Listen to this show (RealAudio)をクリックしてクリップ・ポジション(再生バー)を8:42に移動)
Body And Soul – Coleman Hawkins Orchestraはpatchy’s the Satin Smoothies JukeboxesJike # 1(左のジュークボックスをクリックして別窓の上から5番目)
♪ 「Mercury Records Collection: EmArcy MG-26026: Holiday In Sax」の試聴はHoliday In Sax – CDandLP.jp
☆1933年のJmamaica ShoutやThe Day You Came Along、1939年のBoby And SoulやShe’s Funny That Wayなどなど 初期のコールマン・ホーキンスが聴けるColeman Hawkins – A Jazz Anthology(Coleman Hawkinsで検索、曲名をクリック)
☆コールマン・ホーキンスをフィーチャーしたニューオリンズのトランペッターだったHenry “Red” Allen Jr.(ヘンリー・レッド・アレン)の楽団が演奏する”I Cover The Waterfront”と”SWonderful”が聴ける「Henry Red Allen Page – Liberty Hall Jazz Quartet」(6.Sound Samplesで検索) ちなみにヘンリー・アレンの父はNew Orleans Brass Bandのリーダーだったそうです。
1966年のコールマン・ホーキンスとピアノのEarl Hines(アール・ハインズ)とのセッションのビデオはColeman Hawkins with Earl Hines – The Jazz Page(ページ上のメニューVideos>SingleVideos>上から7番目のクリップColeman Hawkins & Earl Hines 1966)
1950年のコールマン・ホーキンスとチャーリー・パーカーとの貴重なニューヨーク・セッションのビデオもColeman Hawkins with Charlie Parker – The Jazz Page(ページ中ほどCharlie Parker & Coleman Hawkins New York 1950 私の好きな二人のバトル……息が止まる)
コールマン・ホーキンスのアルバム
1996年にリリースされたベスト盤のColeman Hawkins – Greatest Hits
上記のコールマン・ホーキンスのGreatest Hits はこれ!
Coleman Hawkins – Greatest Hits
♪ 試聴はGreatest Hits – レコチョクjp
Body & Soul: Original Recordings 1933-1949
1933年から1949年の録音をCD化した2001年の国内盤アルバムで日本語で曲目が見られます。
Body & Soul: Original Recordings 1933-1949
♪ 試聴はBody & Soul: Original Recordings 1933-1949 – Prestomusic.com
コールマン・ホーキンスの代表曲である”Body & Soul”は1996年盤のアルバム「Body & Soul」の他にもたくさんのアルバムに収録されていて、例えばColeman Hawkins & Tony Scott and the All Stars(クラリネット奏者のトニー・スコットの楽団)が演奏するアルバムの「The Original Decca Recordings: Coleman Hawkins In the ’50s – Body & Soul Revisited」などのように全く違うバージョンもあります。 私が購入したアルバムはオリジナル盤の発売日が1996年という「Body & Soul」(ASIN: B000003G3)で”Meet Doctor Foo”が最初のトラック(曲目)です。
At Ease with Coleman Hawkins
どうやったらあのような音がだせるのか? まるで耳元で睦言を囁くような、愛撫するような、そしてエセリアル的、芸術的な演奏の”For You, For Me, Forevermore“などのバラードを収録したオリジナル録音は1960年のアルバムのリマスター盤、ですが残念なことに2006年盤の試聴が短いです。
At Ease with Coleman Hawkins
♪ 試聴はAt Ease with Coleman Hawkins – Prestomusic.com
♪ Coleman Hawkins – For You, For Me, Forevermore (At Ease With)
Bean Stalkin’
オリジナルは1960年というアルバムのタイトル曲の”Bean Stalkin'”や”Crazy Rhythm”を収録した1991年発売のCDです。
Bean Stalkin’
♪ 試聴はBean Stalkin’ – Prestomusic.com
☆”Hawk”とか”Bean”というのはコールマン・ホーキンスのニックネームで、他にもOn The BeanやOut To Lunchなどを収録して1993年にPrestigeからリリースされた「Bean and the Boys」というちょっと音色の変ったアルバムがあり、コールマン・ホーキンスがFats Navarro(ファッツ・ナヴァロ)やThelonious Monk(セロニアス・モンク)と共演しています。 まるでテキサステナーのようにホンクする”Roll ‘Em Pete”が収録されています。
The Hawk Relaxes
オリジナルは1961年録音という「ザ・ホーク・リラクシーズ」の2006年のリマスター盤で、歌うよりメリハリのあるホーキンスの強調されたビブラートがロマンティックな世界に誘うムードたっぷりのバラード曲集です。 まるでホーンのソロのようなKenny Burrell(ケニー・バレル)の電気ギターやRon Carter(ロン・カーター)のベース演奏も魅力でただのBGMになんかなりえません。 心地よい音に眠ったりしないで”More Than You Know”や”Speak Low”をじっくりと聴いてみて下さい。
The Hawk Relaxes
♪ 試聴はThe Hawk Relaxes – Prestomusic.com
Jam Session in Swingville
オリジナルは1961年の録音というPee Wee Russell(ピー・ウィー・ラッセル)をフィーチャーしたアルバムで、Things Ain’t What They Used To Be、Jammin’ in Swingville、Love Me or Leave Meなど11曲を収録しています。
Jam Session in Swingville
♪ 試聴はJam Session in Swingville – Prestomusic.com
セントルイス出身のデキシージャズのクラリネット奏者であるピー・ウィー・ラッセルはこのレコーディングの8年後に亡くなりました。
☆山とあるコールマン・ホーキンスのアルバムには上記の他にもアップテンポの”Jammin’ in Swingville”や、ギターのイントロから入りホーキンスのテナーがイングランドの美しい民謡を感傷的に演奏するGreensleeves(グリーンスリーヴス)などを収録した1958年と1962年の録音をCD化したアルバムで、ジャズのスタンダードやブルースの曲をRed Garland,、Tommy Flanagan、Ron Carter、Kenny Burrellなどと演奏している「In a Mellow Tone」(ASIN: B000000ZB8)や、コールマン・ホーキンスの1929年から1963年の録音を集めた「A Retrospective (1929-1963)」(ASIN: B000002WTW)では当時大流行の”Watermelon Man”に歌入りで挑戦しています。 同じく1956年にリリースされA面B面で12曲を収録したモノラル録音のLPレコード「The Gilded Hawk」は現在CD化されて国内盤の「ザ・ギルデッド・ホーク」(ASIN: B0046K0TVU)があります。
♪ 試聴は The Gilded Hawk – Prestomusic.com
サラ・ヴォーンのボーカルで有名なロマンティックな”Someone To Watch Over Me”という曲はコールマン・ホーキンスの演奏バージョンでは「Hollywood Stampede: Coleman Hawkins」(ASIN: B000005HF8)や「1945: Coleman Hawkins(Classics 1945 )」(ASIN: B00007GXF5)などに収録されています。
私には一つ気になるホーキンスの画像があります。 三保敬太郎や前田憲男が音楽を担当した1960年の日活映画「すべてが狂ってる」は鈴木清順が監督し川地民夫が主演したヌーヴェルヴァーグ風な青春映画でした。 その映画の中で不良高校生たちが屯うジャズバーの壁に抱っこちゃんやポークパイハットと並んでコールマン・ホーキンスのLP画像がありました。 クレジットとしてオーケストラではなく”Coleman Hawkins and his Comets”となっているのですが何のアルバムなのかが分かりません。”His Comets”ならBill Haleyだけど…
♪ I Left My Baby by Jimmy Rushing with Coleman Hawkins, Roy Eldridge, Count Basie, Ben Webster et al. (1957) – YouTube
Sweet Lorrain by Nat King Cole with Oscar Peterson Trio & Coleman Hawkins – YouTube
☆ オスカー・ピーターソンについては「Oscar Peterson」
Hawkins! Alive! at the Village Gate – Joshua fit The Battle Of Jericho (analog – Vinyl)
私が持っているコールマン・ホーキンス・カルテットのLPレコードはたった1枚で、1962年にVerveからリリースされたNew York’s Village Gate(ニューヨークのヴィレッジ・ゲート)でのライヴ盤「Joshua fit The Battle Of Jericho – Coleman Hawkins(ジェリコの戦い:コールマン・ホーキンス)」です。 コールマン・ホーキンス・カルテットのメンバーはコールマン・ホーキンスのテナーにTommy Flanagan(トミー・フラナガン)のピアノ、Major Holley(メイジャー・ホリー)のベースにEddie Locke(エディ・ロック)のドラムです。 曲目はA面がAll the Things You Are、Joshua fit The Battle Of Jericho、B面がMack The Knife、It’s The Talk Of The Town(町の噂)です。(SMV-1021 解説は油井正一)
♪ 試聴はHawkins! Alive! At The Village Gate (Live, 1962 – Expanded Edition) – Mora.jp
このレコードは「ジェリコの戦い+2 -Hawkins! Alive At The Village Gate」又は「ジェリコの戦い+2」(ASIN: B004QEF76I)として2003年にCD化されています。 CDタイトルの”+2″とはオリジナルのLP収録曲に”Bean & The Boys”と”If I Had You”の2曲をボーナストラックとして追加したからだそうです。
”ジェリコの戦い”を収録したCDアルバムは「ジェリコの戦い+2 -Hawkins! Alive At The Village Gate」
☆ タイトル曲の「ジェリコの戦い」は伝統的な黒人霊歌ですが、ドゥー・ワップのGolden Gate Quartet(ゴールデン・ゲイト・カルテット)でヒットしました。
After Midnight (Coleman Hawkins And His Orchestra) – Crown LPs
「The Hawk Swings」と同じくクラウン・レーベル(Pure Pleasure Records説あり)で1960年にリリースしたホーキンス・クィンテット演奏で5曲を収録したLPレコード「Coleman Hawkins and his Orchestra」に収録されている”After Midnight”は滅多にお目にかかりません。 上述のLPの全10曲を収録した2012年のMP3アルバム「The Hawk: Essential Tracks By Coleman Hawkins」(B007KI3GMY)や「The Hawk Swings」(B003H78GOK)に”After Midnight”が収録されています。
♪ Coleman Hawkins – After Midnight – YouTube