Whispered in your ear that he’s THAT famous director Stanley Kubrick,
Don’t utter “Fuck me!”… It’s true.
John Malkovich is Stanley Kubrick!
マルコビッチがキューブリック!
「アイ・アム・キューブリック!」、これは実話です! いや、実話というふれ込みのある詐欺師を描いたイギリスとフランスの合作コメディ映画です。
ところが、事実は小説より奇なりです!
1961年の「The Hellfire Club(地獄の炎)」みたいな怪しげな乱行シーンがある1999年の「Eyes Wide Shut(アイズ・ワイド・シャット)」はStanley Kubrick(スタンリー・キューブリック)の遺作となりましたが、この映画をイギリスで撮影中、実際にスタンリー・キューブリック監督をかたって何人も騙した詐欺男がいたのだそうです。
スタンリー・キューブリックになれば高級レストランで無銭飲食やり放題!
愛想の良さ、庶民とはちょっと違った服装、能弁、そんな男が社交界にも顔を出し、現金までも騙し取りったそうです。 その偽者はキューブリック監督とは全く似ていなかったのに有名人に弱い皆さんは騙されてしまったのだとか。 有名人と知り合うなんて面白そうだし、何だか徳するような気がするしね。
亡くなったキューブリック監督の奥様のもとに今だに変な手紙が来たりするのだそうです。 「私は貴女のご主人の子供を育てています。」
「アイ・アム・キューブリック!」は、英国の監督であるキューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」製作のスタッフを務めたBrian W. Cook(ブライアン・W・クック )が監督し、スタンリー・キューブリック監督付きの助手を務めた作家のAnthony Frewin(アンソニー・フレウィン)がストーリーを書いた1990年代のイギリスを舞台にしたコメディ映画です。 テレビドラマシリーズでは1990年の「La Femme Nikita(ニキータ)」を企画し、1988年の「Le Grand Bleu(グレート・ブルー)」や1994年の「Léon(レオン)」などを監督したLuc Besson(リュック・ベンソン)が製作総指揮に名を連ねています。
「ロリータ」を監督したスタンリー・キューブリックといえば英国作家のアンソニー・パージェスが1962年に発表した小説を映画化した1971年のブラックSFドラマの「A Clockwork Orange(時計じかけのオレンジ)」が強烈です。 昨今日本でも問題となっている少年たちによるホームレスへの暴行も描かれています。 楽しいミュージカル映画のテーマ曲だった”Just Walking in the Rain(雨に歌えば)”が犯行のGBMとなり、”ベートーベンの第九“が洗脳実験の”ルドヴィコ療法”のBGMとなる不気味な設定となっています。
スタンリー・キューブリック監督になれば何かいいことありそうな♪
「マルコビッチの穴」では大勢の人々に侵入されたStanley Kubrick(ジョン・マルコビッチ)が「アイ・アム・キューブリック!」では他人(キューブリック)になりすまします。 「アイ・アム・キューブリック!」でマルコビッチが演じるのはスタンリー・キューブリック.になりすました英国人俳優のAlan Conway(アラン・コンウェイ)です。 そして人々はアラン・コンウェイ(マルちゃん)をお忍びのスタンリー・キューブリック監督と思い込んだのでした。 アイデンティティーと有名人崇拝の問題についての精神的模索という点で1999年の「Being John Malkovich(マルコヴィッチの穴)」に似ているようですが、今度はキューブリック監督がいっぱい!
マルコビッチが演じるアラン・コンウェイなる人物はアルコール依存症の三流詐欺師でゲイ、新聞報道で化けの皮を剥がされるまで何年もの間どうにかこうにかあの人嫌いで有名なキューブリックになりすましてきました。 おまけに人の良い被害者たちを騙して告訴をされても、精神科医に「精神状態に問題あり!」と確信させて罪を逃れ続けたのです。
予算問題が絡んだとかで、「アイアムキューブリック!」の撮影はロンドンとIsle of Man(マン島)などイギリスです。 マン島はグレートブリテン島とアイルランドに囲まれたアイリッシュ海の中央ある小島です。 イギリスのロケにマルちゃんは外国訛りや習慣、お洒落な(変な)服装を楽しんでいたそうです。
「アイ・アム・キューブリック」のあらすじ
なぜスタンリー・キューブリック? 人に会うのを避ける世捨て人だから? みんなキューブリック監督の作品は良く知っているが、はてさて監督の顔は?
マルコビッチが演じた酒とゲイとイカサマ師の物語
冒頭は怪しげな二人の若者が老人宅を訪ねて来て「あの有名な映画監督のキューブリックの旦那の家だろ?金を貸したんだ!」とドアを蹴破りそうな剣幕で押し込んで来た。 当然のこと二人は警察にしょっぴかれた。
場面変わって、片手にグラスを持ってしゃなりしゃなりと高級クラブに現れるた男が一人の服飾デザイナーの男性客に近づく。 男は映画関係者を臭わせて、そのデザイナーのルパートのデザインを褒めちぎってから、おもむろに身分を明かす。 「私はスタンレー・キューブリック。」 撮影で使用する衣装の話を持ちかけご機嫌にするが、クレジットカードを盗まれたと聞いてルパートはキューブリックさんに酒をご馳走する。 スタッフが偽名で借りてくれたという自分のアパートにルパートを連れて行くが、家でのキューブリックさんはさらに奇妙な服装。 赤いプリント地のガウンに網ハイソックス。 BGMはGlenn Miller(グレン・ミラー)の”In The Mood” そして、キューブリックさんの行動はさらに怪しくなる。「君は私だけのもの。」
その時、玄関のブザーが鳴り、スタンレー・キューブリックを罵りながらけたたましくドアを叩いて騒ぐ者あり。 その黒人は駆けつけた警官に連行されるが警察署ではスタンレー・キューブリックに騙された経緯を綿々と話す。
翌朝、ビニール袋に入れた洗濯ものを手にしたキューブリックさんがしゃなりしゃなりとアパートから出てくるシーンでRichard Strauss(リヒャルト・ストラウス)の「Also sprach Zarathustra (ツァラトゥストラはかく語りき)が流れる。 そこからJ Strauss(ヨハン・シュトラウス)作曲のウィンナワルツで”On the Beautiful Blue Danube(美しく青きドナウ)”に変わるが、この後のタクシーを乗り逃げするシーンではGioachino Rossini(ロッシーニ)の”William Tell Overture: Finale(March of the Swiss Soldiers (ウィリアム・テルの序曲から終曲のスイス軍隊の行進の音楽)が聞こえます。
キューブリックさんは袖すり合ったメタルバンドのお兄ちゃんたち(スペンサーと仲間)にもステージを見に行くから家まで迎えに来いなんて言うから、彼らは本物のスタンリー・キューブリック氏の自宅(リトルベニスの高級住宅街)に到着。 危ういところで往来から手を振って叫んだ。「私はここだ! こっちこっち。」 露見する難を逃れたキューブリックさん、いや、詐欺師のアラン・コンウェイ。 騙す相手にはたいてい高級住宅の住所を渡して迎えに来て貰うが、時間指定で玄関前で待ってるからバレない。
あっちでもこっていでも、袖すり合えば詐欺を働くアラン・コンウェイ。 老いも若きもスタンリー・キューブリックに出会った男たちがサギだと騒ぐ。 が、多くは騙されたことを恥だと思うのか、すねに傷持つ身だから裁判にはしない。 これ以上被害者が増えようとも。 だからアラン・コンウェイの詐欺行為はエスカレートするばかり。 ある時、アラン・コンウェイがStanley Kramer(スタンリー・クレイマー)の「Judgment at Nuremberg(ニュルンベルグ裁判)」を自分(キューブリック)の作品ではないと否定しなかったことから嘘を見抜いた男あり。 その男曰く「もし誰かのフリをするなら……少しは本人のことも考えろよ。」
スタンリー・キューブリックを名乗ったアラン・コンウェイが以前レストランで会ったニューヨーク・タイムズの劇評論家のフランク・リッチ(William Hootkinsが演じる)の暴露記事によってキューブリックの偽物は白日の下にさらされ一躍有名に。(評論家はスタンリー・キューブリックの顔を知っていた) するとアラン・コンウェイは精神を病んだふりをして逮捕(起訴)を免れ、精神病院に入院するしてしまう。 ところが病院でも主治医を騙しておつき合い、医師に同伴してJim Davidson(ジム・デヴィッドソン)が演じるセクシーなゲイの歌手Lee Pratt(リー・プラット)に出会い、米国進出させると乗せると大いに興味有り。 コメディアンで歌手のリー・プラットが”Hello” (http://www.youtube.com/watch?v=X6WiiXUR3xM) やViva Las Vegas(ヴィヴァ・ラスヴェガス)を歌うこのシーンでは Tom Jones(トム・ジョーンズ)の”Not Responsible”も流れる。 無銭飲食常習者のアラン・コンウェイだったが、後に知り合う歌手のリー・プラットの大ファンを招待した時、今回くらいキミ(アラン・コンウェイ)が勘定を持てよとマネージャーのノーマン(Terence Rigbyが演じる)言われてしまう。 このパーティのシーンでもグレン・ミラーの曲が流れる。 この後、アラン・コンウェイの詐欺を知り呆然としたリー・プラットが詐欺師を海に投げ込むシーンで荘厳なクラシック曲が流れる。
アラン本人も現状を自覚している。 「私はキューブリックじゃない。 だけど惨めだから誰か他人になりきらなきゃいられないの。 お願い、出ていかないで。」と愛想を尽かしたMark Umbers(マーク・アンバース)が演じる元ジゴロのピアーズにすがりつく。(嘘泣き)
この後海辺を一人歩くアラン・コンウェイのシーンでは「アイ・アム・キューブリック!」の音楽を手掛けたというロック・ミュージシャンのBryan Adams(ブライアン・アダムス)が歌う”I’m Not The Man You Think I Am”が流れるが、この曲はエンディングでも使用されている。
場面は精神病院、ルームメイトのショーンが医師を紹介すると、医師はコンウェイはかなり重症だからと即決入院。 病室でアラン・コンウェイが「アイ・アム・キューブリック」と言うと、同室の患者は全員「アイ・アム・キューブリック!」と叫ぶ。
研究論文を書くという女医はアラン・コンウェイはアル中であると診断し、文無しのコンウェイに国保でアル中をリハビリしてくれる豪華な施設での4週間の厚生プロブラムを奨める。 ジャグシーまでついた超ゴージャスな環境で癒されたアラン・コンウェイ。
起訴を免れて自宅に戻ったアラン・コンウェイは1998年12月に心臓発作で死亡。 奇しくもその3ヶ月後に本物のスタンリー・キューブリック氏も亡くなったとか。
ブライアン・アダムスの”I’m Not The Man You Think I Am”に続きちょっとアップテンポの”It’s All About Me”が流れてエンディングクレジット。
☆マルコビッチがキューブリックになりきる「Colour Me Kubrick: A True…ish Story(アイ・アム・キューブリック!)」のスチール写真が見られるIMDb – Images from Colour Me Kubrick: A True…ish Story (2005)
「アイ・アム・キューブリック!」のトレーラーはColour Me Kubrick Trailer – YouTube
2006年4月にTribeca映画祭で上映された後、2007年の3月に全米公開だそうです。(今現在は配給元が決まっていないから誰も未だ観ていない!日本で公開されるかも不明!)
さて、貴方がもし誰かになりすますなら誰がいいですか? 現在はメディアが発達していて顔が知れているから無理な話ですが、有名でなければ大丈夫。 某テレビ局の者だとか言って美女に接近するけしからん輩もいるそうですが、やはりこれは犯罪ですね。
1990年にAbbas Kiarostami(アッバス・キアロスタミ)が或る犯罪者の詐欺事件(実話)をもとに監督したセミ・ドキュメンタリー「Close Up(クローズ・アップ)」で騙られたのは有名なイランの映画作家”Mohsen Makhmalbaf(モフセン・マフマルバフ)”でした。
Colour Me Kubrick DVD
2011年6月には日本でもDVDが販売されています。
アイ・アム・キューブリック! [日本語字幕版DVD]
Colour Me Kubrick Soundtrack
「アイ・アム・キューブリック!」のサウンドトラックは現在入手できませんが、ページトップのDVDに類似したCDカバーでした。
サントラ「Colour Me Kubrick – Original Soundtrack」の試聴は現在消滅しました。
「時計じかけのオレンジ」でも使用された”第九”と”灯台守と結婚したい”など収録曲目は
Also sprach Zarathustra(ツァラトゥストラはかく語りき) – Richard Strauss(リヒャルト・ストラウス)
Ode to Joy(歓喜の歌) – Ludwig van Beethoven(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン)
Not Responsible(ノット・ リスポンシブル) – Tom Jones(トム・ジョーンズ)
I’m not the Man You Think I’am(アイム・ノット・ザ・マン・ユー・シンク・アイ・アム) – Bryan Adams(ブライアン・アダムス)
I Want to Marry A Lighthous Keeper(ぼくは灯台守と結婚したい) – Erika Eigen(エリカ・イーガン)
Hello – Jim Davidson(ジム・デヴィッドソン)
Twilight Time – Glenn Miller Orchestra
It’s All About Me – Brian Adams
Flipside – Laurence Cottle
Night Walking – Teddy Lasry
The Thieving Magpie – Gioachino Rossini
Sarabande – GF Haendel
On the Beautiful Blue Danube – J Strauss
サウンドトラックではキューブリック監督のSFの名作で1968年の「2001: Space Odyssey(2001年宇宙の旅)」のテーマでRichard Strauss(リヒャルト・ストラウス)が作曲した「Also sprach ZarathustraもしくはThus Spoke Zarathustra (ツァラトゥストラはかく語りき)」が使用されています。 冒頭の「人類の夜明け」での人類の進化と暴力の始まりともいえる2度目のツァラトゥストラが始まる前、荒涼とした背景にバクと共に映し出された類人猿の熱演には感嘆します。 ちなみにデヴィッド・ボウマン船長を演じたKeir Dullea(ケア・デュリア又はキア・デュリア)は1965年にLana Turner(ラナ・ターナー)が主演した「Madame X(母の旅路)」でClay Anderson Jr.役で出演しましたが、1969年には精神病院(牢獄)を舞台にしたミュージカル仕立てのアングラ芝居のような「De Sade(異常な快楽)」ではサド侯爵(ドナスィヤン・アルフォンス・フランソワ・ド・サド)を演じています。(不徳の罪で投獄され悪徳小説を執筆したサド侯爵にあらゆる邪悪を伝授した修道士である伯父のアベ・フランソワ・ド・サドにはなんとジョン・ヒューストン)
「2001年宇宙の旅」のオープニング・クレジットで流れたヨハン・ストラウスが1866年に作った”The Blue Danube(青きドナウ)”の他に挿入歌の”I’m Not The Man You Think I Am”と”It’s All About Me”の2曲はUKヘビメタバンド「Head-On(ヘッド・オン)」のBryan Adams(ブライアン・アダムス)です。
♪ Bryan Adams – I’m Not The Man You Think I Am – YouTube
John Malkovich
「Colour Me Kubrick」の後の2006年にジョン・マルコビッチは「Klimt(クリムト)」で画家を演じ、「Eragon(エラゴン 遺志を継ぐ者)」では独裁者を演じ、2007年に「Beowulf(ベオウルフ/呪われし勇者)」では宝刀を持つ王の参謀を演じ、2008年にClint Eastwood(クリント・イーストウッド)が監督する「Changeling(チェンジリング)」で息子の取り違えで法の権力の犠牲者となる母親に助力する牧師役を演じ、Coen(コーエン兄弟)が監督するコメディの「Burn After Reading(バーン・アフター・リーディング)」ではアル中の元CIA諜報員を演じるなど毎年のように多岐に渡る役柄を演じています。
Stanley Kubrick (1928 – 1999)
SFからホラー、そしてロマンスまで異色作品が多いスタンリー・キューブリックは後年イギリスで活躍しましたがアメリカ人でした。 高校生時代からカメラを手にしたキューブリックは1940年代中頃から1950年頃までLook magazine(ルック誌)と契約して写真を提供していたそうです。
Stanley Kubrick – Look Magazine Art – NewYorkTimes
Stanley Kubrick’s Gallery – Chicago (1949)
Stanley Kubrick Fotografie 1945-1950 – YouTube
私が観たスタンリー・キューブリック監督の映画
一番古い映画ではマネキン人形に囲まれての格闘シーンが話題だった1955年の「Killer’s Kiss(非情の罠)」、1960年のスペクタクル史劇「Spartacus(スパルタカス)」や「Lolita(ロリータ)」、1971年のSFバイオレンス映画「時計じかけのオレンジ」や1980年のホラー映画「The Shining(シャイニング)」、1987年の戦争映画「Full Metal Jacket(フルメタル・ジャケット)」、1999年のエロティックな遺作「Eyes Wide Shut(アイズ ワイド シャット)」です。
「時計じかけのオレンジ」はオリジナルスコアに加えクラシックの「第九」やミュージカルの「雨に歌えば」などバラエティに飛んだサウンドトラックも興味深いです。
「フルメタル・ジャケット」はベトナム戦争を舞台に戦場での人間の狂気を描いています。
ちなみにフルメタル・ジャケットとは、Vincent D’Onofrio(ヴィンセント・ドノフリオ)が演じた新兵のレナード・ローレンスが精神に異常をきしたて鬼軍曹を撃ち殺すシーンでM14自動小銃の弾倉(マガジン)に込めていたた銃弾のことです。(ドノフリオといえば1997年の「Men in Black(メン・イン・ブラック)」で宇宙人バグに皮膚をのっとられたエドガー役でも有名) 弾頭の種類の一種で「鉛弾頭を銅合金などで覆った弾頭」で貫通力が高くターゲットに与えるダメージを最小限に抑えるのだそうです。 こちらのサントラはタイトル曲のFull Metal JacketやJohnny WrightのHello Vietnamの他はSam the Sham and the Pharaoahs(サム・ザ・シャム)のWooly Bully、Nancy SinatraのThese Boots Are Made for Walking、The Dixie CupsのChapel Of LoveやThe Rolling StonesのPaint it blackが使用されています。
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