ビリー・エクスタイン Billy Eckstine


Billy Eckstine: One Of The Most Excellent Singer In The Swinging Years
“Mr. B” Sings Ballads, Blues and Bebop As Well.

歌にトロンボーンにトランペット演奏、そして楽団指揮とマルチタレントのビリーエクスタインはバラードを最も得意としますが、ブルース(ブルーズ)やビバップもと幅広く歌いこなす洗練された歌声のミュージシャンです。 ビリーエクスタインが大学生であった1930年に物真似コンテストでCab Calloway(キャブ・キャロウェイ)を演じたそうですが、その後の1939年にピアニストのEarl Hines(アール・ハインズ)の楽団に歌手として参加しました。 アール・ハインズ楽団ではCharlie Parker(チャーリー・パーカー)やSarah Vaughan(サラ・ヴォーン)と一緒だったそうです。
※ビリー・エクスタインは白人界でセクシーと言われた初めての黒人歌手だそうです。 ルックスだけではなく音楽が素晴らしい「ビリー・エクスタイン」の写真はもちろん見ていたのですがなにしろ白黒写真だったので、私は長いこと白人だと思い込んでいました。 ちょっとCount Basie(カウント・ベイシー)似でしょう? 時々Gomez Addams(アダムス一家のゴメス)! 似てない? ふぅむ、ビリーはもっと伊達男でしたね。 そういえば、セクシーなビリー・エクスタインのうたい文句は”The Sepia Sinatra(褐色のフランク・シナトラ)”だったそうです。
ビリー・エクスタインの他にバリトンやバスのジャズボーカリストというとJohn Coltrane(ジョン・コルトレーン)とのコラボアルバムで有名なスモーキーなJohnny Hartman(ジョニー・ハートマン)やシルキーなバスバリトンのAndy Bey(アンディ・ベイ)、カウント・ベイシー楽団所属のJoe Williams(ジョー・ウィリアムス)、Freddy Cole(フレディ・コール)とNat King Cole(ナット・キング・コール)兄弟、そして白人ですがRawhide(ローハイド)でお馴染みのハスキーなバリトンのFrankie Lane(フランキー・レイン)やRainy Night In GeorgiaのBrook Benton(ブルック・ベントン)などなどがいます。

Boppin’ Mr.B
スイング(スウィング・ジャズ)全盛の1940年代に大いに人気が有ったビブラートを効かせたバリトンのビリー・エクスタインはジャズ・ヴォーカリストですが、なんとビバップ大好き人間でした。 ビバップやりたさにビリー・エクスタインはアール・ハインズ楽団から独立して1944年に自分のバンド「The Billy Eckstine Big Band」を結成したのです。 なんたってビバップ・バンドですからアドリブ重視です。 Dizzy Gillespie、Dexter Gordon、Art Blakey、Charlie Parker、Fats Navarro、Gene Ammons、Kenny Dorhamといったそうそうたるバップ・ジャズメンのなかで、型にはまったビリーエクスタインのヴォーカルは二の次三の次となり1945年にCottage for SaleとPrisoner of Loveを録音していいるものの、1947年には経営困難により解散してしまいます。 バンドは解散したとはいえ、ビバップ好きのビリーエクスタインがビバップミュージシャンに与えたサポートは甚大だったそうです。 解散後はバラードやポップスに路線変更してヒットチャートに上がるようになり、1947年にEverything I Have Is Yours、1948年にTommy Dorsey楽団のJack Leonard(ジャック・レナード)でヒットしたBlue Moon、1949年にDuke Ellington(デューク・エリントン)楽団の演奏で有名なCaravanがヒットしています。 さらに1950年には”My Foolish Heart(愚かなり我が心)”と1931年にBing Crosbyでヒットした”I Apologize”がチャート入りし、1957年にはアール・ハインツ楽団や自分のバンドで一緒だったサラ・ヴォーンと感動的なデュエット”Passing Strangers”を吹き込んだりしていますが、後に続いたショーマンのナット・キング・コールに追い越されてしまいます。
Passing Strangers – Billy Eckstine & Sarah Vaughan – YouTube
Passing StrangersはアルバムのVerve Jazz Masters 22 : Billy Eckstineで試聴出来ます。

The Billy Eckstine Big Band: One Of The Gateway For Jazzmen To Success
ジャズ・トランペッターの巨人の一人、Miles Davis(マイルス・デイヴィス)が1946年に参加したのがBilly Eckstine(ビリー・エクスタイン)のビッグバンドでした。 そのビリー・エクスタイン楽団には40年代後期までDizzy Gillespie(ディジー・ガレスピー)が在籍していました。 1940年代のビリー・エクスタイン楽団はガレスピーの他にも1945年頃にはGene Ammons(ジーン・アモンズ)とかDexter Gordon(デクスター・ゴードン)と一緒にSonny Stitt(ソニー・スティット)が在籍していたことがあり、アール・ハインズ楽団で一緒だったジャズヴォーカリストのサラ・ヴォーンが専属で歌っていたそうで、いわゆるジャズメンの登竜門の一つでした。

☆ビリーエクスタイン楽団に在籍していたマイルス・デイヴィスが1950年にバリトンサックスのGerry Mulligan(ジェリー・マリガン)等の作曲及びアレンジによる「Birth of The Cool」を録音した時にはトランペットをディジー・ガレスピーが演奏していますが、何と!”Mr. B(ビリー・エクスタイン)”もトランペットを演奏していたのだそうです。

video若い!ビバップ!スウィングしまくるビリーエクスタイン! スキャットもすごい、まるで楽器!
Billy Eckstine on trombone – You Better Believe It at the Playboy Club (1966)- YouTube
老いてもなほすごいビリーエクスタイン!ダンディ!1914年生まれですからこの時71歳です。 その後、バリトンの魅力「ビリーエクスタイン」は1993年に80歳で亡くなりました。

“Mr. B”‘s Hit Tunes
ビリー・エクスタインのヒット曲には1942年のStormy Monday Blues、1945年にCottage for SaleとPrisoner of Love、1947年にEverything I Have Is Yours、1948年にBlue Moon、1949年にCaravan、1950年にMy Foolish HeartとI Apologize、Sophisticated Lady、Stella By Starlight、Don’t Get Around Much Anymore、Blue Moonなども人気があります。 ちなみにビリー・エクスタインの1950年のヒット曲の”My Foolish Heart”はSusan Hayward(スーザン・ヘイワード)が主演しVictor Young(ヴィクター・ヤング)が音楽を担当した同名の映画「愚かなり我が心」のテーマソングでVictor Young(ヴィクター・ヤング)が作曲しMartha Mears(マーサ・メアーズ)が歌いました。 1950年には編曲者としても有名なGordon Jenkins(ゴードン・ジェンキンズ)のバージョンがビルボードにチャートインしましたが、ビリー・エクスタインのバージョンはそれを凌ぐ人気でした。
ビリー・エクスタインの十八番(おはこ)とも言われる”My Foolish Heart”がタイトルになっている1945年から1951年の録音を集めたアルバム「My Foolish Heart(マイ・フーリッシュ・ハート)」(ASIN: B00008ZZ2I)があります。 収録曲目はAll I Sing Is Blues、Prisoner Of Love、Intrigue、I’m Out To Forget Tonight、Somehow、What’s My Name、Body And Soul、Jealousy、Sitting By The Window、My Foolish Heart、Free、I Apologise、Show Must Go On、You’ve Got Me Crying Again、Be My Love、Only A Moment Ago、I’m So Crazy For Love、I’ve Never Been In Love Before、I Guess I’ll Have To Dream The Rest、Take Me Back の全20曲です。

Motown Mr. B LP’s
ビリー・エクスタインはMotownレコードに1965年から5年程在籍していましたが、その当時の録音でPink Flamingosを収録したLPアルバムあるいはB面にPink Flamingosが収録されたというシングルが「Billy Eckstine: The Prime of My Life」だという情報を見たことがありますが、このタイトルで1965年がオリジナルLPのCDには収録されていませんし、2003年にモウタウン時代の録音がCD化されて2枚組みの「The Motown Years」として発売されていますが、人気の”Down To Earth”はあっても、何人ものミュージシャンにカバーされた”With Every Breath I Take”と同じくピンクフラミンゴなる曲は収録されていませんから何かの間違いでしょうか。
ビリー・エクスタインの歌うStella By StarlightはオリジナルLPが1958年録音のアルバム「Billy’s Best!」に収録されています。
「Billy’s Best」の試聴はBilly’s Best – Amazon.com

“Mr. B” in the films
ビリー・エクスタインが出演した映画

1949年 Harlem After Midnight
白黒のミュージック映画でメインキャラクターでビリーエクスタインが本人役で出演したそうです。
1952年 Skirts Ahoy!
ビリー・エクスタインが自身の役で出演したHarry Warren音楽のミュージカルコメディでは”Hold Me Close To You”を歌ったそうです。
1969年 Playboy After Dark
雑誌「プレイボーイ」のTVシリーズに歌手としてTeddi King(テディ・キング)と共に50年代後期に出演したことがあるそうです。
※上記のいづれも情報はありません。

“Mr. B” on CDs
ビリーエクスタインのCD

Introduction to Earl Hines
ビリーエクスタインがアール・ハインズ楽団時代に吹き込んだStormy Monday BluesはIntroduction to Earl Hinesに収録されています。(試聴の22番)

1944-1945
短期間でしたがビリーエクスタインが結成したBilly Eckstine & his Orchestra(ビリーエクスタイン楽団)時代のアルバムは1944-1945

Blowing the Blues Away 1944-1947
ビリー・エクスタインのボーカルはもちろんのこと、メンバーのソニー・スティットやディジー・ガレスピーをはじめGene Ammons(ジーン・アモンズ)とDexter Gordon(デクスター・ゴードン)が競演したとして有名なアルバムです。

Billy Eckstine & his Orchestra
ビリー・エクスタイン楽団時代には、1945年に有名な I Love The Rhythm In A RiffとかバラードのGood Jelly BluesやDon’t take your love from me、 I’m In The Mood For Loveなど、1946年にLove From Me、All The Things You Are 、I Only Have Eyes For You、 I’m In The Mood For Loveなど、1947年にはSerenade In Blue、1949年にはOne For My Baby、SomehowやCaravanといった素敵な曲の数々があります。

Billy Eckstine Sings with Benny Carter – Special Guest: Helen Merrill
ハンサムなビリー・エクスタインはサラ・ヴォーンだけだなくたくさんの女性ヴォーカリストとデイトしました。 いえ、デュエットしました。 その中に日本では大変人気のあるHelen Merrill(ヘレン・メリル)との録音があります。 トップにゲストのヘレン・メリルが代表曲のYou’d Be So Nice To Come Home To(ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ)、ラストに”Didn’t We”の2曲を収録していて、ご長寿アルトサックス奏者のBenny Carter(ベニー・カーター)と共演した人気アルバムの「Billy Eckstine Sings with Benny Carter」に収録されています。 ビリー・エクスタインの最期の吹き込みとなった1986年にオリジナルCDがリリースされ1990年に再発売された人気のアルバムですが現在は入手困難になっています。 1940年代にはBillie Holiday(ビリー・ホリディ)の伴奏者だったウエストコーストのピアニストのBobby Tucker(ボビー・タッカー)のトリオをバックにお得意のMy Funny Valentine、Memories of You、Autumn Leavesなどを歌ったこの時、ビリー・エクスタインは72歳でベニー・カーターは79歳だったそうです。

Everything I Have Is Yours: The Best of the M-G-M Years
☆ページトップの画像は2枚組みCDで、ビリー・エクスタインを堪能出来るアルバムです。
収録曲はEverything I Have Is Yours、Fools Rush In、Blue Moon、Temptation、Caravan、Body and Soul、My Foolish Heart、I’m a Fool to Want You、Tenderly、April in Paris、Don’t Get Around Much Anymoreなどと私の好きなロマンティックなスタンダード・ナンバーです。

Kiss Of Fire – Import CD: Billy Eckstine
1940年代にNat King Cole(ナット・キング・コール)がJosephine Baker(ジョセフィン・ベイカー)が歌ったJ’ai Deux Amours(二つの愛)を英語バージョンでカバーして有名になった”Two Loves Have I”や、Georgia Gibbs(ジョージア・ギブス)の1952年の大ヒット曲であるKiss Of Fireの他、Someone To Watch Over Meなどロマンティックなスタンダード全25曲をビリー・エクスタインがカバーしたアルバム
Kiss of Fire by Billy EckstineKiss of Fire

Verve Jazz Masters 22 : Billy Eckstine
「Kiss Of Fire」などが収録されている人気アルバムのVerve Jazz Masters 22 : Billy Eckstineでは定番曲のMy Foolish HeartやI Apologizeの他にレアなJealousyも聴けます。

Jukebox Hits 1943-1953
リスナーに一番人気のビリー・エクスタインの「St. Louis Blues」は私の好きな”Temptation”など全21曲が収録されている2005年発売のアルバム「Jukebox Hits 1943-1953
“Temptation(誘惑)”は1933年にBing Crosby(ビング・クロスビー)が映画Going Hollywood(虹の都へ)で歌ったのが最初です。

No Cover, No Minimum
オリジナルは1960年の録音のリマスターアルバムにはI Want a Little Girl、Prelude to a Kiss、In the Still of the Night、I Got It BadやMistyなどを21曲を収録してあります。
No Cover, No Minimum by Billy EckstineNo Cover, No Minimum
全曲試聴はNo Cover, No Minimum – Amazon.com

Boppin’ with “B”
1940年代初期のビリー・エクスタイン楽団のバンドメンバーにはSonny Stitt、Gene Ammons、Dexter Gordon、Dizzy Gillespie、Fats Navarro、Miles Davis、Art BlakeyそしてJohn Coltrane!が在籍していましたがこれらの大物ジャズメンがビリー・エクスタインのバックを務めるという豪華さ。 話題はジョン・コルトレーンの定番曲だったバラードの「I Want To Talk About You」
Boppin' with B by Billy EckstineBoppin’ with “B”
現在は入手困難となった輸入盤「Boppin’ With B.」の試聴はBoppin’ with “B” – AllMusic.com

ビリー・エクスタインの1940年代から1953年代の録音を集めた2005年発売の輸入盤CDにはJelly, Jelly、Water Boy、Prisoner of Love、I Apologize、St. Louis Bluesの他Oo Bop Sh’bamやI Got It Badなどを収録してあります。
Early Mr. B: 1940-1953Early Mr. B: 1940-1953

※スイング時代のバラードの達人「ビリー・エクスタイン」が1970年代のソウルに挑む!
Percy Mayfield(パーシー・メイフィールド)大ヒット曲であるPlease Send Me Someone To Loveを重低音で歌うヘビーなカバー曲をはじめ、若いリスナー受けを狙ったらしいアップテンポなLiving Like A Gypsyやエレキギターの伴奏で歌うToday Was Tomorrow Yesterdayなどが収録されているStax時代のSenior Soul/If She Walked into My Life(ソウルもビブラート!)

Billy Eckstine Sings: Dizzy Gillespie Swings
ビバップの好きな若きビリーエクスタインがスイングするコンサートライブのドキュメンタリーDVDではビバップのディジー・ガレスピーのトランペット、アート・ブレイキーのドラム、Helen Humes(ヘレン・ヒュームズ)の歌なども収録されています。
Billy Eckstine Sings: Dizzy Gillespie Swings DVDBilly Eckstine Sings: Dizzy Gillespie Swings DVD

曲目リストは1. Rhythm in a Riff 2. You Call it Madness 3. 2nd Balcony Jump 4. Lonesome Lover Blues 5. Taps Miller 6. I Want to Talk About You 7. Our Delight 8. Salt Peanuts 9. Ooh Bobba Liba 10. Oop Bop Shibam 11. One Bass Hit 12. Things to Come 13. He Beeped When He Should Have Boppped 14. Be-Bop 15. Dizzy’s Theme
Billy Eckstine Sings Lonesome Lover Blues 1946 – YouTube