Woody Allen and Charlotte Rampling in Stardust Memories (1980)
Woody Allen as a jazz musician
ウディ・アレンは俳優、監督、作家として有名ですが、音楽家としてのウディ・アレンをご存知ですか? Fred Astaire(フレッド・アステア)の”Cheek to Cheek(頬よせて)”がメインタイトル曲に使用された私の大好きな1985年の「The Purple Rose of Cairo(カイロの紫のバラ)」、Glenn Miller(グレン・ミラー)楽団のIn The Mood(イン・ザ・ムード)やBody and Soul(身も心も)、そしてLarry Clinton(ラリー・クリントン)の”I Double Dare You”などが流れる1987年の「Radio Days(ラジオ・デイズ)」などでレトロなスイングジャズ(スウィングジャズ)が使用されましたが、スイングが大好きなウディ・アレン自身がクラリネット奏者でジャズを演奏するのです。 ウディ・アレンの何人かの妻のうち最初の結婚相手はウディ・アレンのジャズ仲間だったそうです。
「Radio Days(ラジオ・デイズ)」や「Purple Rose of Cairo(カイロの紫のバラ)」などウディ・アレンの映画音楽を集めたアルバムには2枚組CDの「Woody Allen, from Manhattan to Midnight in Paris」(ASIN: B003K1ZFFG)があります。
♪ 試聴はWoody Allen: La Musique de Manhattan a Midnight in Paris Soundtrack – jpc.de
☆夢のように美しい色彩のファンタジー映画「ミッドナイト・イン・パリ」は2005年の「ライフ・アクアティック」などウエス・アンダーソン監督と関わりの深いオーウェン・ウィルソンが演じる小説家志望の男が旅先でホテルがわからなくなったところ、旧型プジョーに乗ったパリピに誘われパリで憧れの文化人たちと遭遇し古き良き時代(1920年代、さらに19世紀末のベル・エポック)を満喫するストーリーです。 この映画にロキ役で人気があるダンス上手なTom Hiddleston(トム・ヒドルストン)が「華麗なるギャツビー」で知られたF. Scott Fitzgerald(フィッツジェラルド)を演じています。 古いってことは良いことだ!? VIVA Hemingway!
Stardust Memories (1980) DVD
Stardust Memories DVD
私には「なんで?」というほど意外なのがCharlotte Rampling(シャーロット・ランプリング)の出演です。 ランプリングは1973年の衝撃的な「Il Portiere di notte(Night Porter/愛の嵐)」でユダヤ娘を演じ、1987年のホラー映画の「Angel Heart(エンゼル・ハート)」などに出演した英国女優です。 神経衰弱のサンディ・ベイツ監督とはおよそ不釣合いと思える美しいシャーロット・ランプリングが演じるDorrie(ドリー)は以前ベイツ監督の作品に出演した女優でベイツ監督と大恋愛した仲でもあったという設定です。 物思いに耽る車中のベイツ監督が向こう側の列車の窓辺に見たのは、2000年のPicking Up The Pieces(ヴァージン・ハンド)でアレンが演じる肉屋の妻役で出演したSharon Stone(シャロン・ストーン)です。(肉屋がバラした女房) シャロン・ストーンはこの幻想の汽車の中の美女役で映画デビューしたのです。 ぶっちゅ~っ!
2000年にリリースされた「Stardust Memories」(ASIN: 6302718910)の輸入版VHSもありますがDVDともに映画は白黒です。
ベイツ監督回顧映画祭に殺到した芸能記者連中と人気監督と応酬におけるアレン哲学を理解するのは私には無理でも、ウディ・アレンが選曲したスイングジャズが充分楽しめる映画です。
Stardust Memories Soundtrack
「スターダスト・メモリー」のサントラは見つかりませんが、「Stardust Memories」などアレン映画のサウンドトラック集がリリースされています。
Woody Allen More Movie Music
あえてモノラルにしたというサントラにはアレンのレコードコレクションから「Lacombe Lucien (ルシアンの青春)」で使用されたジプシーギターのDjango Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)の!I’ll See You in My Dreams”、ピアニストのDick Hyman(ディック・ハイマン)の演奏で”Hebrew School Rag”などのスタンダードジャズが選ばれています。 その中にSidney Bechet(シドニー・ベシェ)自作自演(?)の”Tropical Mood Meringue”が使用されているそうです。
♪ Tropical Mood Meringue by Sidney Bechet – YouTube
♪ 試聴はWoody Allen More Movie Music – bol.com
この映画音楽集では映画「スターダスト・メモリー」から、ベイシー楽団に在籍していたテナーサックス奏者のLester Young(レスター・ヤング)が1940年に作曲した”Tickle Toe”と、ロック系らしきSour(サワー)の”Body & Soul”、その他は1990年の「Alice(アリス)」、1993年の「Manhattan Murder Mystery(マンハッタン殺人ミステリー)」、1995年の「Mighty Aphrodite(誘惑のアフロディーテ)」からGlenn Miller(グレン・ミラー)楽団の”Sunrise Serenade”、Duke Ellington(デューク・エリントン)楽団の”Sophisticated Lady”、白人トランペッターのBunny Berigan(バニー・ベリガン)の楽団が演奏する”Caravan”、その他1920年代に活躍した白人ピアニストでコルネットやトランペット奏者のBix Beiderbecke(ビックス・バイダーベック)やColeman Hawkins(コールマン・ホーキンス)やErroll Garner(エロール・ガーナー)など垂涎のスイング音楽が満載のウディ・アレンの映画音楽集です。
☆ジプシーギターといえばUma Thurman(ユマ・サーマン)がアカデミーの助演女優賞を受賞した1999年の「Sweet and Lowdown(ギター弾きの恋)」はジプシージャズのギタリストが主人公です。 音楽はディック・ハイマンですが”When Day is Done”や”Avalon”などのジャンゴ・ラインハルトの曲も使用されています。
Film Music – O.S.T. (Deconstructing Harry)
ウディ・アレンの素晴らしい選曲のサントラは多いですが1995年のMighty Aphrodite(誘惑のアフロディーテ)は私の好きな曲が満載なのに映画音楽集しか見つかりません。 「誘惑のアフロディーテ」からはFrank Sinatra(シナトラ)が歌うCole Porter(コール・ポーター)作曲のYou Do Something To Me、Carmen Cavallaro(キャバレロ)のピアノでManhattan、Louis Armstrong(サッチモ)のWalkin’ My Baby Back Home(歩いて帰ろう)、Erroll GarnerのピアノでWhen You’re Smilingなどが収録されていますが、肝心なTake FiveやThe ‘in’ Crowd、Count Basie(カウント・ベイシー)のLi’l Darlin’などが収録漏れしているのはランセンスの問題でしょうか。(映画で流れてもサントラに未収録ということはよくある) 上記の画像はフランスでリリースされた輸入盤「Film Music – O.S.T. 」で限定アルバムらしいですがタイトルが「CD-2 Deconstructing Harry」ともなっています。(8曲のうちの5番目にある1997年の映画「地球は女で回ってる」からのCD-2 Deconstructing Harry) このコンピレーション盤にはBenny Goodman(ベニー・グッドマン)の”Whispering”とエロール・ガーナーの”Penthouse Serenade”が収録されているので振り分けでもしているのでしょうか。
Woody Allen Classics (ASIN: B000002923)
上記の他にもウディ・アレンの映画で使用されたクラシック音楽を集めた輸入盤のサウンドトラック集はクラシックが苦手な私も親しみを感じる事が出来ます。 1993年に発売されたCDには1975年の「Love and Death(ウッディ・アレンの 愛と死)」、1986年の「Hannah and Her Sisters(ハンナとその姉妹)」、1989年の「Crimes and Misdemeanors(ウディ・アレンの 重罪と軽罪)」、1992年の「Shadows and Fog(ウディ・アレンの 影と霧)」、1979年の「Manhattan(マンハッタン)」、日本未公開ですがミア・ファローが出演した1982年の「A Midsummer Night’s Sex Comdey」と1975年の「Love and Death(ウッディ・アレンの 愛と死)」などの映画から全15曲を収録しています。
♪ 試聴はウディ・アレン・クラシックス – HMV.co.jp
Mia Farrow
ウディ・アレンと長年のパートナー関係にあった女優のMia Farrow(ミア・ファロー)との蜜月期間にはこのゴールデンコンビで最高に充実した映画活動を行い話題作をたくさん作っています。 この頃に私が劇場で観たウディ・アレンの映画で一番好きなのは、監督のアレン自身も大好きだと言っている1930年代を舞台にした1985年の「The Purple Rose of Cairo(カイロの紫のバラ)」です。 ホラー映画「The Ninth Gate(ナインスゲート)」のRoman Polanski(ロマン・ポランスキー)が監督した1968年の怖い映画で「Rosemary’s Baby(ローズマリーの赤ちゃん)」は私が初めて観たミア・ファローの映画でしたが、今まで見た女優たちとは一風変って古いフランス映画にでも出てくるような容貌でした。 そのミア・ファローが「カイロの紫のバラ」で演じたポップコーンを食べながら銀幕に見入る可愛いヒロインを私も観ていたのですが、この時私はポップコーンを食べていなかったのでミア・ファローはスクリーンから出て来てはくれませんでした。(当ったり前田!)
1998年 Wild Man Blues(ワイルド・マン・ブルース)
スイング音楽が好きなクラリネット奏者のウディ・アレンは1970年代からニューヨークの文化人が集うThe Michael’s Pubで毎週のようにスイングジャズを演奏していたそうですが、現在は毎月曜日にCarlisle Hotel(カーライル・ホテル)で演奏しているそうです。 ドキュメンタリー映画「ワイルドマン・ブルース」はミア・ファローと別れた後の1998年に、ウディ・アレンのNew Orleans jazz bandと欧州ツアーに旅立ちましたが、もともと本国より欧州や日本で人気があったウディ・アレンのコンサートはロックバンド並の熱狂的なファンに迎えられたそうです。 そのツアーのドキュメンタリー映画”Wild Man Blues(ワイルド・マン・ブルース)”を同行したBarbara Kopple(バーバラ・コップル)が監督しました。 バーバラ・コップル監督は2000年にJimi Hendrix(ジミ・ヘンドリックス)の映像を含むイベント・ウッドストック・ドキュメント映画”My Generation”も監督しています。
「マイ・ジェネレーション DVD」(ASIN: B000063L0S)
Wild Man Blues DVD
上記のリンクはVHSが入手困難となったので字幕版DVDの「ワイルド・マン・ブルース ―デジタル・レストア・バージョン―」になっています。
ウディ・アレンのファンでなくとも30年代や40年代のスウィングジャズ愛好家にも人気の「ワイルド・マン・ブルース」はミア・ファローとの泥沼状態の破局によりイメージダウンしたウディ・アレンがそれを癒すかのようにミア・ファローとAndre Previn(アンドレ・プレヴィン)の養女で次期新妻のSoon-Yi Previn(スン・イー・プレヴィン)を伴ってヨーロッパツアーに出たのでした。 レセプションやパーティなどセレブに付きまとうイベントにはうんざりしているアレンもスン・イーといる時が一番リラックスしていたそうです。 マスコミ嫌いのアレンが私生活まで見せたこのドキュメントはアレンの音楽と新妻に対する愛を理解して欲しかったのでしょうか。 フランク・シナトラと1968年に離婚したミア・ファローが次に結婚したのが妻がいたユダヤ系の音楽家のアンドレ・プレヴィンでした。 その時に韓国から迎えた3人の養子うちの一人が養女のスン・イー・プレヴィンでした。 ミア・ファローは1979年にプレヴィンと離婚後、結婚も同居もせずに10年間ウディ・アレンとパートナー関係にあり子供も一人もうけました。 ウディ・アレンは35歳差というハンデを乗り越えて1997年にスン・イーと結婚しました。
字幕版VHSは「ワイルド・マン・ブルース」(ASIN: B00005H3X6)
Wild Man Blues Soundtrack(1998 Film)
ウディ・アレンの映画とアルバムのタイトル曲となっている”Wild Man Blues(ワイルド・マン・ブルース)”はLouis Armstrong & Ferdinand ‘Jelly Roll’ Morton(ルイ・アームストロング&ジェリー・ロール・モートン)により作られたデキシーランド・ジャズの名曲でニューオリンズ・ジャズのクラリネット奏者のJohnny Dodds(ジョニー・ドッズ)やディキシーランド・ジャズ出身のトロンボーン奏者のTurk Murphy(ターク・マーフィー)も演奏していますが、ルイ・アームストロング自身が1961年の映画「Paris Blues(パリの旅愁)」で演奏しています。
同じくニューオリンズ・ジャズのGeorge Lewis(ジョージ・ルイス)作曲の”Bugle Boy March”やW.C. Handy(W.C. ハンディー)作曲の”St. Louis Blues”などが収録されている他、イタリアの映画音楽の巨匠のNino Rota(ニーノ・ロータ)による「8½(8 1/2)」や「La Dolce Vita(甘い生活)」などからの映画音楽が使用されています。 サウンドトラックの編曲は映画に出演したNew Orleans Jazz Bandでバンジョーを演奏するEddy Davis(エディ・デイヴィス)です。
♪ 試聴はWild Man Blues – bol.com
若きルイ・アームストロング&ジェリー・ロール・モートンの1927年の”Wild Man Blues”の音源が聴けるWild Man Blues – Louis Armstrong and his Hot Seven (1927) – YouTube
Audio-Visual Trivia内にあるウディ・アレン関連の記事
重罪と軽罪 (1989)
ヴァージン・ハンド (2000)
☆スターダストといえばLionel Hampton plays Stardust(ライオネル・ハンプトン)
☆スウィン・グジャズについてはTuxedo Junction and The Swing Era
☆1934年にフランスのカステルサラサンで生まれた毒舌家で有名なシャンソン歌手のPierre Perret(ピエール・ペレ)の言葉に「インテリとは、理解できないと安心する人間である。」というのがあるそうですから、ウディ・アレンの難解な人生哲学が分からない方は”インテリ”です。 どうぞご安心下さい。
ピエール・ペレが1998年にフランスでリリースしたアルバムに「ユーモアと優しさ」という意味のタイトルで20曲を収録したCDがあります。 「L’ Humour et la Tendresse」(ASIN: B0000084SV)