フランソワ・トリュフォー Francois Truffaut

Francois Truffaut at Work (Hardcover)
François Truffaut at Work (Hardcover) by Carole Le Berre
Francois Truffaut (1932 – 1984)

Nouvelle Vague: François Truffaut
私が初めてフランソワ・トリュフォーを知ったのは有名なヌーヴェル・ヴァーグ映画の「A Bout de Souffle(勝手にしやがれ)」(1959年)の原案を映画評論仲間のJean-Luc Godard(ジャン・リュック・ゴダール)に譲ったことからです。 当時売れっ子のCharles Aznavour(シャルル・アズナヴール)が「勝手にしやがれ」への出演を断ったおかげでその役は私の好きなJean Paul Belmondo(ジャン・ポール・ベルモンド)にまわってきたのでした。 「勝手にしやがれ」の件も含めて、フランソワ・トリュフォーというと1950年代のフランス映画「ヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波、新世代)」の代表の一人であると言われていますが、私としては「Shoot the Piano Player(ピアニストを撃て)」、「Jules et Jim(突然炎のごとく)」、「La Sirène du Mississippi(暗くなるまでこの恋を)」、1980年の「Le Dernier Métro(終電車)」などのフランスのクラシックでミステリアスなロマンス映画を思い浮かべるのです。 Roger Vadim(ロジェ・ヴァディム)やLouis Malle(ルイ・マル)なども加えて、右岸派のゴダールやトリュフォーと、1968年にJacqueline Sassard(ジャクリーヌ・ササール)が主演した「女鹿」を監督したClaude Chabrol(クロード・シャブロル)などに対して、1956年のドキュメンタリー「Nuit et Brouillard(夜と霧)」のAlain Resnais(アラン・レネ)や「Les Parapluies de Cherbourg(シェルブールの雨傘)」のJacques Demy(ジャック・ドゥミ)などの左岸グループの映像作家(映画監督)たちの50年代から60年代にかけての作品をヌーヴェル・ヴァーグというそうで、スリのRobert Bresson(ロベール・ブレッソン)が1956年の「Un condamné à mort s’est échappé ou Le vent souffle où il veut(抵抗)」の前に監督した1944年の”Au Bois de Boulogne”ならぬ「Les Dames du bois de Boulogne(ブローニュの森の貴婦人)」で台詞を手掛けたJean Cocteau(ジャン・コクトー)なども関与しているらしいです。 フランソワ・トリュフォーは敬愛するロベール・ブレッソンの1956年の「Un condamné à mort s’est échappé ou Le vent souffle où il veut(抵抗/レジスタンス-死刑囚の手記より)」では助手を務めたことがあるとか。
※その昔、私はトリュフォー監督のことを「トリフォー」、ヴァディム監督は「バデム」と呼んでいました。 もちろん、ヌーヴェル・ヴァーグはヌーベル・バーグです。

1959年 Les Quatre cents coups(大人は判ってくれない)
高貴なるヌーヴェルヴァーグの阿婆擦れ女ともいわれた「Bernadette Lafont(ベルナデット・ラフォン)」がデビューしたフランソワ・トリュフォーの1958年の短編映画「Les Mistons(あこがれ)」を撮った後、ヌーヴェルバーグ・デビューした長編映画はカンヌ映画祭で監督賞を獲得した「Les Quatre cents coups(大人は判ってくれない)」で、日本ではヌーヴェル・ヴァーグの傑作中の傑作と売り込まれました。 クロード・シャブロル監督の1957年の「Le Beau Serge(美しきセルジュ)」に続いて、当時婚姻関係にあったGérard Blain(ジェラール・ブラン)とベルナデット・ラフォンが共演した「あこがれ」はベルナデット・ラフォンが性に目覚めだした村の少年たちの憧れとなる女性を演じている短編作品ですが、フランソワ・トリュフォーの少年期の体験を描いているといわれます。 いい女とひでえ女を描くのがお得意のトリュフォー監督1972年のコメディ「Une belle fille comme moi(私のように美しい娘)」にも出演しているし、トリュフォー監督が憧れた女はベルナデット・ラフォン?
「大人は判ってくれない」の英語のタイトルは「The 400 Blows」といいますが、その意味は”400回の殴打”となります。 フランス語では”faire quatre cents coups”として”乱痴気騒ぎをする、乱れた生活を送る、無分別な行為をくり返す”というころから”自由奔放に生きる”という意味もあるらしいです。 その通りに主人公の映画好きな少年”Antoine Doinel(アントワーヌ・ドワネル)”は未婚の母から望まれずに生まれた不幸な境遇で、悪いことをしたとして何かと大人達から殴られるのですが、アントワーヌにとってはどれも不当な仕打ちなのです。 タイプライターを盗んで少年院に入れられますが、脱走したアントワーヌが走りに走り通して海までたどり着くシーンが感動的です。 海はアントワーヌにとって、いやトリュフォーにとって行き止まりではなく大河ドラマの始まりなのでしょうか。 フランソワ・トリュフォー自身少年院に入った経験があるのでそれを下敷きにしているそうです。 私は「大人は判ってくれない」の出演者の中ではJean-Claude Brialy(ジャン=クロード・ブリアリ)以外は知りませんでしたが、主演した当時12歳だったJean-Pierre Leaud(ジャン=ピエール・レオ)は「大人は判ってくれない」のアントワーヌ役でデビューし、トリュフォー監督の子飼いのような俳優としてその後20年近くもトリュフォー映画で活躍し、映画史上に残る監督と俳優の組み合わせの一つだそうです。 1960年の「ピアニストを撃て」同様にMarcel Moussy(マルセル・ムーシー又はマルセール・ムーシー)が脚色しています。 50年代から70年代までテレビ映画の監督や脚本家としてのマルセル・ムーシーは1960年にMarie Laforet(マリー・ラフォレ)が主演したSaint Tropez Blues(赤と青のブルース)を監督したとして日本では有名です。
※ジャン=ピエール・レオが出演した「大人は判ってくれない」の一連の作品として「L’Amour A 20 Ans(二十歳の恋)」、1968年の「Baisers volés(夜霧の恋人たち)」、1970年のDomicile conjugal(家庭)、1978年の「L’Amour en fuite(逃げ去る恋)」など合計で5本あり、アントワーヌ少年はどんどん大人になってゆき、お洒落なフランスのファッションやメイクが移り変わります。 大人になったアントワーヌ(ジャン=ピエール・レオ)は1963年のJean Eustache(ジャン・ユスターシュ)監督の「Les Mauvaises Fréquentations(わるい仲間)」の後、1973年にに「La Maman et la Putain(ママと娼婦)」にも出演し、ベルナデット・ラフォンと共演するのです。 「ママと娼婦」も監督及び脚本がジャン・ユスターシュですが、ヌーヴェルヴァーグのトリュフォーやゴダールに賞賛されたものの自動車事故の後遺症から1981年に自殺してしまいました。
Trailer – Les quatre cents coups – YouTube
1999年発売のDVD(All Regions)カバー画像が見られるStolen Kisses (Baisers volés) Jean-Pierre Léaud – Amazon.com
L’Amour en fuite(逃げ去る恋)のDVD(PAL Region 2)カバー画像が見られるL’Amour en fuite – Jean-Pierre Léaud – Amazon.com

ベルナデット・ラフォンのデビュー作の「あこがれ」と「大人は判ってくれない」の2作品収録のDVD(2004年発売)
Les Mistons et Les Quatre cents coups par François Truffautあこがれ・大人は判ってくれない〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選1〕
「大人は判ってくれない/あこがれ」の字幕版VHS(ASIN: B00005G0PR)もあります。
DVD(Region 2)カバー画像が見られるLes 400 coups – Amazon.com

1962年 L’Amour à 20 ans(L’Amour a vingt ans/Love at Twenty/二十歳の恋)
ポーランドのAndrzej Wajda(アンジェイ・ワイダ)監督やShintarô Ishihara(石原慎太郎 2022年死去)など世界五ヵ国の監督が参加したという世界五ヵ国の未熟な恋を描いたオムニバス短編映画の「二十歳の恋」でフランソワ・トリュフォーが担当しの第一話の”パリ編”は前作「大人は判ってくれない」の続編だそうです。 フランソワ・トリュフォーが監督した「大人は判ってくれない」の続編「Antoine et Colette(アントワーヌとコレット)」にはもちろん「大人は判ってくれない」のジャン=ピエール・レオが主演し、相手役は「二十歳の恋」がデビューの絶世の美女「Marie-france Pisier(マリー・フランス・ピジェ)」で、後作の1968年の「夜霧の恋人たち」でも共演しま した。(マリー=フランス・ピジェは2011年に66歳で自宅プールで不審死)
トリュフォー監督のパリ編での音楽はGeorges Delerue(ジョルジュ・ドルリュー)です。 フランス映画音楽の巨匠の一人であるジョルジュ・ドルリューはPascale Petit(パスカル・プティ)が主演した1959年の「Une Fille pour L’ete(ひと夏の情事)」とか、ジャン・ポール・ベルモンドの1960年の「墓場なき野郎ども」や1963年の「リオの男」などでも音楽を担当しています。
※「二十歳の恋」の第二話のイタリア編に私の好きなイタリア女優のEleonora Rossi Drago(エレオノラ・ロッシ・ドラゴ)が出演したそうですが、この短編映画については全く知りませんでした。
字幕版VHS「アントワーヌとコレット(二十歳の恋)/あこがれ」は日本でも入手できます。
DVD(All Regions)カバー画像が見られるTwo Short Films By Francois Truffaut: Les Mistons/Antoine & Colette -Amazon.com

1960年 Tirez sur le pianiste(ピアニストを撃て)
フランスのサスペンス映画がお好きな方にお勧めの「ピアニストを撃て」はフランソワ・トリュフォーが監督及び脚本を手掛けたヌーヴェルヴァーグ、というよりフィルムノワール的な長編作品です。 前作の自伝的な「大人は判ってくれない」とは違って、ピアニストの演奏、物質主義への教訓、ギャングのママの死のシーンのようなトリュフォー監督のユーモアセンスを盛り込んだ娯楽性に富んだ作品です。 ピアニストと入魂の気の良い娼婦のClarisse(クラリス)をAngélique(アンジェリク)シリーズで名高いグラマー女優のMichèle Mercier(ミシェル・メルシエ)が演じています。 フランソワ・トリュフォー監督個人に興味の無い向きには特にお勧めの映画です。 原作はジャン・ポール・ベルモンドが主演した1971年の「Le Casse(華麗なる大泥棒)」のDavid Goodis(デヴィッド・グーディス)ですが、「大人は判ってくれない」と同様にマルセル・ムーシーが脚色をしています。 主役の中年の孤独なカフェのピアノ弾き”チャーリー”の役はジャン・リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」を蹴って出演したCharles Aznavour(シャルル・アズナヴール)でした。 ピアニストの孤独の理由は回想シーンで明らかになります。 音楽家としての名声を得る夢を失くしたピアニストが場末のカフェに身を沈めていたが、ある日突然の人生の転換を経験することになる。 ピアニストの弟たちが裏切ったギャングの人質となった末の弟を取り戻しに山荘に乗り込んだが、又しても愛する女を失う結果となる不条理劇です。 今日の出来事は明日の一部となるのです!
メランコリーを表現する達人のシャンソン歌手でもあるCharles Aznavour(シャルル・アズナヴール)が出演したシリアスな映画は数多くありますが、1959年にかってのBrigitte Bardot(B.B.)の恋人だったJacques Charrier(ジャック・シャリエ)と「」のAnouk Aimée(アヌーク・エーメ)が出演したLes Dagueurs(今晩おひま?)なんていう軽いコメディなどもあります。 俳優としてのアズナブールは日本では1963年の「Cherchez l’idole(アイドルを探せ)」や「クリスマスツリー」のVirna Lisi(ヴィルナ・リージ)やHelmut Berger(ヘルムート・バーガー)と共演した1970年の「Un Beau Monstre(雨のエトランゼ)」などの娯楽作品で広く一般に知られていますが、Atom Egoyan(アトム・エゴヤン)が監督した2002年の「Ararat(アララトの聖母)は衝撃の史実を描いた後期の傑作も話題になりました。

「ピアニストを撃て」のDVD
Tirez sur le pianiste par François Truffautピアニストを撃て〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選5〕
DVDカバー画像が見られるTirez sur le pianiste – Charles Aznavour – Amazon.com

1961年 Jules et Jim(突然炎のごとく)
ヌーヴェルヴァーグよいうよりもフランスの恋愛映画がお好きな方にお勧めの「突然炎のごとく」は、その道の第一人者と言われるフランソワ・トリュフォーが脚本を書き監督しました。 原作はパリの芸術家たちと親交が深く女性遍歴の激しかったHenri-Pierre Roché(アンリ・ピエール・ロシェ)の自伝的小説で、他の2作もトリュフォーによって映画化されています。 主役のCatherine(カトリーヌ)をJeanne Moreau(ジャンヌ・モロー)、Jules(ジュール)にはトリュフォー監督の「Fahrenheit 451(華氏451)」にも出演したOskar Werner(オスカー・ウェルナー)、Jim(ジム)をHenri Serr(アンリ・セール)が演じています。 ジャン・リュック・ゴダール監督の1961年のFemme est une femme(女は女である)で主演のジャン・ポール・ベルモンドがジャンヌ・モローに、当時同時進行していた『トリュフォー監督の”突然炎のごと”の方はどう?』というセリフがあり、「勝手にしやがれ」に始まったトリュフォーとゴダールの交友関係を示しています。 作家の朗読の形をとった「突然炎のごとく」の内容は狐にでもつままれたかと思うような三角関係で、二人の男を手玉に取っている魔性の女なのか、二人の男に惑わされている無邪気な女なのか。 たぶらかされながらも友情の絆に結ばれた二人の男たちはもしかしておホモだちかと疑ってしまったほどですが、ジャンヌ・モローが演じるファムファタルのカトリーヌによる摩訶不思議な恋愛論を聞かされているようでもありました。 カトリーヌは結婚相手としてジュールを選んだのに、突如自覚した真実の恋、自分を裏切ったジムを巻き添えに”恋の道行き”ならぬ”ニコニコ心中”、それによりようやく心の安住を感じた真面目人間のジュール。 やっぱりNouvelle Vague(ヌーベルヴァーグ)だ!
ゴダール監督の「勝手にしやがれ」をはじめ、トリュフォー映画では「Tirez sur le pianiste(ピアニストを撃て)」や「L’Amour A 20 Ans(二十歳の恋)」や「La Peau Douce(柔らかい肌)」の撮影を担当したRaoul Coutard(ラウール・クタール)が突飛とも見えるいくつものショットや自然の美しさを捕えて素晴らしい映像を見せています。
主演したジャンヌ・モローはシャンソン歌手としても有名ですが、「突然炎のごとく」の中でもAlbert(アルベール)役でカメオ出演したBoris Bassiak(ボリス・バシアク)の作詞作曲の”Le Tourbillon(つむじ風)”をボリス・バシアクのギターに合わせて歌っています。 音楽は「ひと夏の情事」や「墓場なき野郎ども」などの音楽を担当したジョルジュ・ドルリューでサウンドトラックには”つむじ風”も収録されています。

ジャンヌ・モローの歌う”つむじ風”のシーンが素敵な「突然炎のごとく」のDVD
Jules et Jim par François Truffaut突然炎のごとく
「突然炎のごとく」の字幕版VHSもあります。
現在は入手困難ですがDVD(リージョン1 英語字幕 )のカバー画像が見られるJules and Jim [DVD] [Import] (1962)

Le Tourbillon CDLe Tourbillon
国内盤の「つむじかぜ」もあります。
Elle avait des bagues à chaque doigt…と歌われる”Le tourbillon de la vie”の歌詞はLe tourbillon de la vie – Paroles2Chansons.com
♪ Jeanne Moreau – Le Tourbillon

Jeanne Moreau dans les films de Francois Truffaut
ジャンヌ・モローは1961年のJules et Jim(突然炎のごとく)の他にもフランソワ・トリュフォーが脚本を書いたJean-Louis Richard(ジャン=ルイ・リシャール)監督の1964年のMata Hari, agent H21(マタ・ハリ)に出演しています。 1931年にGreta Garbo(グレタ・ガルボ)が演じた女スパイを演じマタハリの恋のお相手となるフランスの将校のフランソワ・ラサール大尉はJean Louis Trintignant(ジャン・ルイ・トランティニャン)です。 ジャン=ルイ・リシャール監督は1963年の「柔らかい肌」や1974年の「Emmanuelle(エマニエル夫人)」の脚本を書いています。 ジャンヌ・モローの「マタハリ」の音楽はGeorges Delerue(ジョルジュ・ドルリュー)です。 「マタハリ」の映画ポスターはMata Hari – IMDbで見られます。

1968年 La Mariée était en noir(黒衣の花嫁)
ジャンヌ・モローは1968年にフランソワ・トリュフォーがジャンヌ・モローのために監督した映画はCornell Woolrich(コーネル・ウールリッチ)が1940年に書いた”The Bride Wore Black”が原作の「黒衣の花嫁」で「大人は判ってくれない」でもチラっと顔を見せたジャン・クロード・ブリアリと共演しています。 事件当初の取調べでジャンヌ・モローのおみ足に眼を這わせた刑事のBill Corey(コレイ)をジャン=クロード・ブリアリが演じます。 そのコレイ刑事が最後にミステリアスな殺人者が誰なのか、殺した男の葬儀に現れた黒ずくめの女のヴェールをひん剥いて見せます。 「黒衣の花嫁」の原作はコーネル・ウールリッチの1940年の”The Bride Wore Black”というミステリー小説です。 映画では小さな町で挙式を揚げて幸せ一杯に教会の戸口から出たとたん、ハンター仲間たちの悪ふざけからライフルが暴発して花婿が撃たれてしまい、あっという間に姥桜の未亡人となります。 こんな理不尽が許せるわけはありませんから、喪中の花嫁は犯人の5人の男たちに自分自身で復讐していく決心をするというフランス版山本周五郎著「五弁の椿」みたいな内容です。 色仕掛けで次々と殺害を実行し、最後は別件で投獄されてしまった犯人を殺る目的を果たすためにみずから刑務所に入れられるように仕向けるというサスペンスです。 ジャンヌ・モローが可愛いい踊り子を演じた1954年の「Touchez pas au grisbi(現金に手を出すな)」から10年間に渡りヌーヴェルバーグをはじめロマンス映画に出演してきましたが私の好きなモローもこの「黒衣の花嫁」で終わったと思いました。
花嫁は殺しの度にお色直しをしますが、何しろ喪中ですから黒と白です。 Pierre Cardin!
Vertigo(めまい)などのミステリ映画でお馴染みのAlfred Hitchcock(アルフレッド・ヒッチコック)大好き人間のフランソワ・トリュフォー監督は1963年の「La Peau douce(柔らかい肌)」で不倫をスリリングに描き、「黒衣の花嫁」では1966年の「Fahrenheit 451(華氏451)」と同じく”Bernard Herrmann(バーナード・ハーマン)”のうっとりするクラシック調のPrelude、Femme Fatale、The Accidなどの曲を使用しています。
どんな作品でもハーマンの音楽さえあれば命を吹き込めるとはいえ、せっかくのバーナード・ハーマンのオリジナルスコアをカットしまくり、終にVivaldi(ビバルディ)の”Concerto for Mandoline in C major(マンドリンのための協奏曲ハ長調)”に取り替えてしまったというスカーフが町の上空を飛ぶシーンもあったらしいです。 トリュフォーのお好きなビバルディのマンドリンは「野生の少年」でも使用されたとか。 この時期にはもうヌーヴェルヴァーグから逸れていたといわれたトリュフォー監督でした。 この「野生の少年」はスウェーデンの監督であるIngmar Bergman(イングマール・ベルイマン)がトリュフォー作品の中で「アメリカの夜」に次いで好きな映画だそうです。
Vivaldi C Major Mandolin Concerto – Ster Videotheek
The Bride Wore Black (1968) Theatrical Trailer – Youtube

The Bride Wore Black VHS - Francois TruffautThe Bride Wore Black VHS

※ジャンヌ・モローのヌーヴェルバーグ映画としては1957年のルイ・マル監督作品の「Ascenseur pour L’echafaud(死刑台のエレベーター)」と1961年のジャン=リュック・ゴダール作品「女は女である」があります。

Françoise Dorléac et Catherine Deneuve
1963年にLa Peau Douce(柔らかい肌)に出演したFrancoise Dorleac(フランソワーズ・ドルレアック)は1962年にロジェ・ヴァディム監督の愛人として「Le Vice et la vertu(悪徳の栄え)」にAnnie Girardot(アニー・ジラルド)と共に出演したカトリーヌ・ドヌーヴとは実の姉妹で、1966年に「Les Demoiselles de Rochefort(ロシュフォールの恋人たち)」で共演した後すぐにたった25歳なのに急逝してしまいした。(車の事故)
La Peau douce – YouTube
英語のタイトルは”The Soft Skin”という「柔らかい肌」のDVDは国内でも見つかります。 美しい音楽はGeorges Delerue(ジョルジュ・ドルリュー)です。
La Peau Douce par François TruffautThe Soft Skin (La Peau douce)
1986年発売の「柔らかい肌/二十歳の恋」の字幕版VHS(ASIN: B000064W16)もありますが現在は入手困難です。
DVDカバー画像が見られるThe Soft Skin (La Peau douce) DVD ~ Françoise Dorléac – Amazon.com

La Sirène du Mississippi
La Sirène du Mississippi DVDフランソワーズ・ドルレアックの妹のCatherine Deneuve(カトリーヌ・ドヌーヴ)はロジェ・ヴァディム監督と結婚してからますます磨きがかかってフランスで一番というほど魅惑的な女優となりました。 そのカトリーヌ・ドヌーヴが出演したフランソワ・トリュフォー監督の映画はフランスの大監督であるJean Renoir(ジャン・ルノアール)に捧げたというちょっとフィルムノワール的な1969年のLa Sirène du Mississippi(暗くなるまでこの恋を)です。
2006年に発売になったDVDは暗くなるまでこの恋を [スタジオ・クラシック・シリーズ]
「暗くなるまでこの恋を」の原作は1940年の「黒衣の花嫁」同様にアメリカのミステリー作家「Cornell Woolrich(コーネル・ウールリッチ)」の1947年の小説「Waltz into Darkness(暗闇へのワルツ)」です。 コーネル・ウールリッチが書いた1942年の”It Had to Be Murder”はアルフレッド・ヒッチコック監督が1954年に「Rear Window(裏窓)」として映画化しています。
なぜフランス語の原題が”ミシシッピーの人魚”なのかというと文通で知り合ったフランスからの花嫁が”ミシシッピー”という名のフランス客船で仏領アフリカの小島に到着する予定だったからです。 しかしその花嫁は船上で行方不明となり花のように美しいカトリーヌ・ドヌーヴが現れたのです。 私の好きなジャン=ポール・ベルモンドと共演だったのでワクワクして観に行ったのですが、カットされていたシーンでもあったのか辻褄が合わず肩透かしを食った感があります。 ベルモンドは未だ見ぬ花嫁を待つ裕福な仏領アフリカの煙草農園主で、ドヌーヴはというと結婚詐欺を働いたリヴィエラのクラブ踊り子です。 ベルモンドがそんな嘘っぽいドヌーヴの身の上話に乗せられて、なぜに、なぜに命まで預けるの。 毒を盛る可愛いカトリーヌ・ドヌーヴが小憎らしく見えました。 でも最後の最後には真実の愛を信じたのです。 気になるのはラストシーン、毒でまいったベルモンドを支えてドヌーヴと二人で雪の中を小屋を後にしますが、心中行為だったのか? 先があったのかが思い出せない。 こんなに惨めなベルモンドを見ると胸がつまります。 シリアスなセリフの後に「うっそーだよん!」とでも言って欲しい。
Mississippi Mermaid – YouTube
1965年にゴダールのPierrot le fou(気狂いピエロ)や1967年のWeek End(ウイークエンド)で音楽を担当したAntoine Duhamel(アントワーヌ・デュアメル)でしたが、フランソワ・トリュフォー監督の映画では1968年の「夜霧の恋人たち」、1969年の男女ではなく親子的情愛を描いた実話でDr. Itard(イタール博士)をトリュフォー監督自身が演じた「L’Enfant sauvage(野生の少年)」、同じく1969年の「暗くなるまでこの恋を」や1970年の「家庭」の音楽も手掛けています。
「La Sirène du Mississippi」のDVD(Region 1)のカバー画像が見られるMississippi Mermaid (1969) DVD ~ Jean-Paul Belmondo – Amazon.com
ロジェ・ヴァディム監督みたいに次々と美人女優を妻にして大女優に育ててはいませんが、フランソワ・トリュフォー監督は1981年にGerard Depardieu(ジェラール・ドパルデュー)主演の「La Femme d’acote(隣の女)」で一緒に仕事をしたフランス女優のFanny Ardant(ファニー・アルダン)と再婚したことがあります。 そのファニー・アルダンは2002年に「8 femmes(8人の女たち)」に出演する他、「Callas Forever(永遠のマリア・カラス)」でJeremy Irons(ジェレミー・アイアンズ)やGabriel Garko(ガブリエル・ガルコ)と共演します。
フランソワ・トリュフォーとロジェ・ヴァディムの写真が見られるRoger Vadim et François Truffaut Ptotos – Rapo.com

フランソワ・トリュフォーの映画音楽
Original Music from the Films of Francois Truffaut
Original Music from the Films of Francois TruffautOriginal Music from the Films of Francois Truffaut (Film Score Anthology)

「Francois Truffaut Vol.1」(Aventures D’Antoine Doinel)はThe 400 Blows(Les Quatre cents coups/大人は判ってくれない)シリーズでL’Amour A 20 Ans(二十歳の恋)、1968年のStolen Kisses(Baisers volés/夜霧の恋人たち)、1970年のBed And Board(Domicile conjugal/家庭)と1978年のLove On The Run(L’Amour en fuite/逃げ去る恋)を収録したサウンドトラックアルバムです。

「Francois Truffaut Vol.2(Passions Amoureuses)」はJules And Jim(Jules et Jim/突然炎のごとく)、The Soft Skin(La Peau Douce/柔らかい肌)、The Story Of Adele(L’Histoire d’Adele H./アデルの恋の物語)、The Woman Next Door(La Femme d’à côté/隣の女)など6作品のサントラから収録しています。 1975年の「アデルの恋の物語」ではフランソワ・トリュフォー監督がアデル(Isabelle Adjani)が愛する兵士(Bruce Robinson)を探すシーンでカメオ出演しています。

Books abut Francois Truffaut
☆フランソワ・トリュフォーは監督になる以前の50年代に鋭い映画評論を発表したことで有名ですが、ページトップの書籍のカバー画像はCarole Le Berre (著) のFrancois Truffaut at Work (Hardcover)ですが、表紙画像はおそらく1973年の「La nuit américaine(映画に愛を込めて アメリカの夜)」でフェラン監督を演じているフランソワ・トリュフォーではないかと思います。 夜のシーンをカメラにフィルターを取り付けて昼間に撮影したので英語のタイトルが「Day for night」という映画の中での気まぐれなハリウッド女優をイギリス女優だがフランス語が堪能なJacqueline Bisset(ジャクリーン・ビセット)が演じ、音楽はジョルジュ・ドルリューです。 1969年の童貞喪失映画「The First Time(経験)」や1974年の「The Spiral Staircaseらせん階段)」等に出演したジャクリーン・ビセットといえば娘と夫婦がそれぞれに一時の秘密を持つ映画「シークレット」がありますが共演者は「Vaxdockan(沈黙の歓び)」で主演した特異なスエーデン俳優のPer Oscarsson(ペール・オスカルソン)でした。

この300ページのレコードLP位のハードカバー本で、フランス語のLes Cahiers du cinéma(カイエ・デュ・シネマ)出版の英訳ですが、フランソワ・トリュフォー作品の写真とレビュー付き年表のようなものらしいです。(書籍の内容の見本はありません)

こちらはフランソワ・トリュフォーによる監督と作品の批評集の英語訳本だそうです。
The Films in My Life (Paperback) by Francois TruffautThe Films in My Life


Francois Truffaut and Hitchcock
裏表紙にアルフレッド・ヒッチコック監督との写真を使用したフランソワ・トリュフォー著のHitchcock (ペーパーバック)で、貴重な写真が載っています。

Hitchcock (Revised Edition) (Paperback)Hitchcock

☆写真もたくさん掲載されて1987年発行されたトリュフォー自身の執筆による「Truffaut by Truffaut」の英語版のハードカバー本は日本語に翻訳された「トリュフォーによるトリュフォー」で読むことができます。(オリジナルの本のカバーでは題名のTruffaut by Truffautの下のTruffautはさかさまになっています)

フランソワ・トリュフォー Francois Truffaut」への4件のフィードバック

  1. chandelier より:

    こんにちは♪
    記事を読んでいたら、久々にフランス映画を観たくなりました〜♪
    koukinobaabaさんが、紹介してくださる映画は、どれも興味深いです。
    久々にTsutayaに行こうかと思っている次第です。

  2. koukinobaaba より:

    「chandelier」さん、私もツタヤには時々行きます。時間がなくて最近行ったのは「プロデューサーズ」を借りた時です。昔は新作映画は日比谷や有楽町のロードショーがメインだったのですが、今はもう無理です。年中銀ブラされているchandelierさんが羨ましいです。

  3. koukinobaabaさん、こんばんは。
    またまた、直リンさせていただいちゃってます。カメラマン、ラウール・クタールがドロンと組んだ作品を記事にしたものですから。
    最近は、記事更新されていないようですが・・・。
    無理を言うつもりは全然ないんですけれど、是非是非、余裕ができたら、新記事お願いいたします。
    あっそうそう、昨日、『柔らかい肌』をレンタルしてきちゃいましたよ。
    では、また。

  4. koukinobaaba より:

    いつもリンクして下さって有難うございます。
    「柔らかい肌」をご覧になったら浮気などできませんね。怖いですね。
    ブログソフトのバージョンアップをしたら仕様が滅茶苦茶になり修正するのも大変でした。まだまだ不具合が生じているのですが時間が持てません。この状態では記事をアップするのもなんだと思い今日に至っています。トムさんのようにアカデミックな内容ならいいのですが、私のはおちゃらかなんで時には自己嫌悪に陥り筆が止まります。

コメントは受け付けていません。