The Man in Black: Johnny Cash
Cry! Cry! Cry!
“JC”ことジョニー・キャッシュはJ. R. Cashが本名だそうです。詳細はというと、”J”は母親が希望する名前のJohnからで”R”は父親が付けたかったRayからだそうです。<br>1955年にCry, cry, cry(クライ・クライ・クライ)でサン・レコードからデビューしました。(”JC”といっても女子中学生じゃありません)
Elvis Presley(エルビス・プレスリー)が”That’s All Right Mama”を録音した同じサン・レーベルから1954年にデビューしています。(訂正)
カントリーのヒット・チャートでNo.1を獲得、全米ポップチャートにもチャートインした曲”I Walk the Line”が2005年のジョニー・キャッシュの伝記映画「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」のタイトルになっています。
ジョニー・キャッシュからすればジューン・カーターはカントリー界の良家の子女に当たりますね。 山岳音楽の伝統を築いてきた一家ですから。 カーター・ファミリーの録音盤のなかには1927年の「Bristol sessions」のようにジョニー・キャッシュが絶賛するものもありました。
ジョニー・キャッシュは1958年からはコロンビア・レコードに移り、妻のジューン・カーター・キャッシュが若きジョニー・キャッシュへの想いを綴ったシンガー・ソングライターのMerle Kilgore(マール・キルゴア)との共作した1963年の曲「Ring of Fire(リング・オブ・ファイア)」を発表する他、数え切れないほどの曲をリリースして、ビルボードにも何十曲もチャート入りしました。 実はこの”Ring of Fire”という曲は1961年に映画「野良猫(Ring of Fire)」のテーマ曲としてトワンギーギターの名手と呼ばれるDuane Eddy(デュアヌ・エディ又はデュアン・エディ)のバージョンで私は初めて聴いたので混同してしまいますが全くの別の曲です。 キャッシュが歌ったテレビ西部劇シリーズのテーマ曲といえば1959年から1961年にかけて放映された「Rebel(反逆児)」の”The Rebel”でした。
そして昔私が買ったキャッシュのレコードといえばJohnny Horton(ジョニー・ホートン)の”Honky Tonk Man”を買うつもりで買ってしまった”Honky Tonk Girl”の45回転EPだけでした。(ホンキー・トンク・ガールは1954年にウエスタン・スウィングのHank Thompson(ハンク・トンプソン)が作って吹き込みました)
♪ Johnny Cash – Honky Tonk Girl – YouTube
他のカントリー歌手達が白いジャケットやカーボーイスタイルなのに対し、どすの利いたディープな声のジョニー・キャッシュはライダーのような黒づくめの服装で”アウトロー(無法者)”を演出しました。 いや、刑務所こそ入りませんでしたが、イメージだけでなく事実アウトローでした。 アウトローカントリーとは、1960年代になって商業的になったナッシュビル・カントリーに対抗して素朴なカントリー音楽を守ろうとしたジョニー・キャッシュを含む一派です。 1985年にWaylon Jennings(ウェイロン・ジェニングス)やKris Kristofferson(クリス・クリストファーソン)等と結成した史上最強のカントリーグループの”The Highwaymen”についてはWillie Nelson(ウィリー・ネルソン)の記事を参照して下さい。
ジョニー・キャッシュは無法者、放蕩者などと呼ばれ、若い頃には汽車に火を付けたり、車を破壊したりして逮捕されたりというぶぶ武勇伝も噂され、麻薬と戦ったりしながらアメリカの音楽界に独特の足跡を残してきました。 死の1歩手前の破滅に導いた薬(amphetamines)をやっている時でさえ、ゴスペルは欠かさなかったキャッシュが、麻薬でボロボロの時に出会ったのが同じくカントリー歌手のジューン・カーターでした。 二人とも敬虔なクリスチャンではありますがキャッシュは妻と4人の子供を置いてジューン・カーターと一緒になったのでした。
Johnny Cash Gives You the Finger: FUCK YOU!
ジョニー・キャッシュの写真で一番最高!なのが60年代〜70年代のロックンローラーを被写体とした有名な写真家のJim Marshall(ジム・マーシャル)によるモノクロ写真集「Jim Marshall: Proof」の必見の一枚!「Johnny Cash Photos (Flipping the Bird), San Quentin Prison, 1969 – Artnet.de」
レコード(Johnny Cash At San Quentin)では放送禁止用語の”son-of-a-bitch”が入っている箇所に”ピー音”が被せられたラップ調の”A Boy Named Sue”(スーという名の少年)を歌った1969年のSan Quentin Penitentiary(サン・クエンティン刑務所)ライブ前にポーズを取るジョニー・キャッシュ。 う〜ん、如何にもワルですな。 ちなみに”A Boy Named Sue”はBillboard Top 10 Singles (1969)で8月に2i位でした。
ジム・マーシャルはDuke Ellington、Sarah Vaughan、Miles Davis、Coleman Hawkinsなどのジャズの巨人たちの写真集「Jim Marshall: Jazz」も出しています。(ISBN-10: 0811843548)
Johnny Cash At San Quentin – YouTube
Johnny Cash At San Quentin – “Johnny Cash “A Boy Named Sue” – YouTube
I Walk The Line at San Quentin – YouTube
Vegas. The Mint
映画「ウォークザライン」の中のセリフにもある”Vegas. The Mint”とは、ジョニー・キャッシュがよく出演したラスヴェガスにあるクラブの”The Mint Casino(The Mint Hotel and Casino in Las Vegas)”のことでライブ・ショーが有名です。 その頃、ラスベガスのReno(リノ)を本拠に音楽活動をしていた昔のウエスタン仲間のAbbie Neal(アビー・ニール)がジョニー・キャッシュをバックアップしたんだそうです。 ジョニー・キャッシュがヨレヨレの時はアビー・ニールが助っ人をかき集め、彼らがクラブ・ミントのカーテンの後ろからジョニー・キャッシュを支えていたので歌っている最中にイスから落っこちることはなかったとか。 そんな時でもジョニー・キャッシュは素晴らしいステージを演じたそうです。
ミント・ホテルの写真はMint Hotel – Robert Scott Hooper.com
Hurt
ジョニー・キャッシュが亡くなる前の2003年に”Hurt”を歌っているビデオを観ましたが、若い時代の映像を交えたビデオはジョニーの死を暗示するかのように。 感無量です。 ジョニー・キャッシュの死因は糖尿病の合併症による呼吸不全だったそうです。 最後の最後までカントリー! 再びナッシュビルで歌った頃、糖尿病を患っていたジョニー・キャッシュの頬はかなりこけていたそうです。
“I hurt myself today to see if I still feel…”と歌われる”Hurt”の歌詞や”I walk the line”の歌詞はJohnny Cash – Lyrics – genius.com
Riders In The Sky(ライダーズ・イン・ザ・スカイ)など、その他の歌詞も上記のサイトのLinks To Words of Other Songsにあります。
Ghost riders in the sky by Johnny cash – YouTube
I shot a man in Reno just to watch him die…
このような血なまぐさい歌詞で受刑者の共感を得たジョニー・キャッシュのフォルサム刑務所ライヴ「Johnny Cash at Folsom Prison」(ASIN: B000028U0Y)はベストセラーとなっています。(1968年初リリースのLP盤もあり ASIN: B003WWZ148) このライヴにはカール・パーキンスや妻のジューン・カーター・キャッシュも出演しました。 ジョニー・キャッシュの黒尽くめのいでたちや歌詞に熱狂した囚人達の中にはそのライブの何十分か後には死刑になる者もいたとか。
刑務所ライヴではFolsom Prison Blues(フォルサム・プリズン・ブルース)やCocaine Bluesなどの野蛮な曲を歌っていますが最後は敬虔なクリスチャンらしく「Greystone Chapel」で終わっています。
☆ジョニー・キャッシュと同じく刑務所ライヴをしたのはブルース(ブルーズ)歌手のBBキング
Johnny Cash Giant Hits
ページトップのアルバムはカバー画像がカセットのものです。 映画のタイトルになった”I Walk the Line”、 Don’t Take Your Guns to Town、 I Still Miss Someone、Ring of Fire、unday Morning Coming Down、What Do I Care、It Ain’t Me Babe、I’m So Lonesome I Could Cry、City of New Orleans、Orange Blossom Special など全10曲を収録したジョニー・キャッシュのアルバム「Giant Hits」で1995年の発売です。
試聴は2003年のJohnny Cash Giant Hits – AllMusic.com
※ちなみに”I Walk the Line”は”アイ・ウォーク・ザ・ライン”としてソニー・ミュージックレコーズから1989年に発売されたCDアルバム「栄光のカントリー&ウエスタン」にも収録されていたとか。
At Folsom Prison
ジョニー・キャッシュ「アット・フォルサム・プリズン」はジョニー・キャッシュのカリフォルニア州立フォルサム刑務所ライブアルバム
At Folsom Prison
The Very Best of the Sun Years
ジョニー・キャッシュの初期、サン・レコード時代のヒット曲集
The Very Best of the Sun Years
試聴はThe Very Best of the Sun Years – AllMusic.com(1番はI Walk The Line、6番はCry, cry, cry、11番はFolsom Prison Blues、20番はBig River)
“Riot in Cell Block #9″も収録した5枚組Boxセット
The Man in Black: 1959-1962
コワモテのジョニー・キャッシュからは想像できないですがエルヴィス・プレスリーみたいにロカビリーやロックンロールを歌った時期がありました。 売れっ子の悩みともいえる過密スケジュールから薬物に手を染めた時代でもあり、声帯が麻痺して声が嗄れている曲も何曲かありますが、カントリーを超えてゴスペルやフォークなどにも幅を広げた1959年と1962年のコロンビア時代にリリースしたシングルとLPに録音したナンバーや未発表の曲を収録した5枚組みアルバムですからジョニー・キャッシュの熱烈なファンには必携でしょうか。 ピアノがFloyd Cramer(フロイド・クレイマー)でバックコーラスにはカーター・ファミリーやAnita Kerr Singers(アニタ・カー・シンガーズ)が参加しているそうです。
試聴はThe Man In Black 1959-1962 [Box Set] – AllMusic.com(Disc: 5の16番がThe Coasters(コースターズ)のヒットナンバーだった”Riot In Cell Block #9″)
The Man Comes Around
ジョニー・キャッシュが晩年に書いた”The Man Comes Around”が収録されているのは2002年にリリースされたSting(スティング)の”I Hung My Head”やMarty Robbins(マーティ・ロビンス)の”Big Iron”などのカバーなどを収録したアルバムの「American IV: The Man Comes Around」(ASIN: B0044VXALW 試聴は
American 4: The Man Comes Around – CD Universe)で他にもこのアルバムのために聖書の「ヨハネの黙示録」などにヒントを得てキャッシュが宗教的な意味を含んだ”Give My Love To Rose”と”Tear Stained Letter”の2曲を書いたそうです。 このアルバムは1994年に始まったアメリカン・シリーズの1巻でしたがキャッシュの具合が悪いこともあり当時は商業的な成功が危ぶまれたとか。 ちなみに”The Man Comes Around”は2012年にBrad Pitt(ブラッド・ピット)が主演した「Killing Them Softly(ジャッキー・コーガン)」で使用されていますが、それ以前にも2003年の「The Hunted(ハンテッド)」、2008年の「My Best Friend’s Girl(2日間で上手に彼女にナル方法)」、ウルヴァリンのHugh Jackman(ヒュー・ジャックマン)が主演する2017年の「Logan(ローガン)」などでも流れます。
“Bridge Over Troubled Water”をキャッシュとデュエットしている女性ボーカルはジューン・カーターではなくFiona Apple(フィオナ・アップル)です。 Hank Williams(ハンク・ウィリアムス)の”I’m So Lonesome I Could Cry”をデュエットしてNick Cave(ニック・ケイヴ)も参加していますが、”Personal Jesus”など数曲でのピアノがハモンド奏者でもあるソウルのBilly Preston(ビリー・プレストン)らしいです。 歌うというより語るといった方がぴったりの”The Man Comes Around”は2003年の映画「The Hunted(ハンテッド)」のサウンドトラックの他、数本の映画やテレビドラマで使用されています。
Jackson
Johnny Cash & June Carter sing Jackson
Johnny Cash & June Carter “Jackson” – YouTube
Johnny Cash & June Carter – Jackson (1968) – YouTube
♪ Johnny Cash & June Carter – Jackson (The Legend of Johnny Cash)
ジョニー・キャッシュ&ジューン・カーター・キャッシュがデュエットしている”Jackson(ジャクソン)”はアルバムThe Essential Johnny Cash (ディスク: 2の3番)
試聴はThe Essential Johnny Cash [Original Recording Remastered]
☆Jacksonの歌詞はJackson Lyrics – Genius.com
Nancy Sinatra with Lee Hazlewood – Jackson (1967)
☆キャッシュ夫妻が歌ったJackson(ジャクソン)は伝記映画「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」ではホアキン・フェニックスとリース・ウィザースプーンがデュエットしましたが、1967年にNancy Sinatra(ナンシー・シナトラ)とLee Hazlewood(リー・ヘイゼルウッド)のデュエットもヒットしています。
☆ナンシー・シナトラとリー・ヘイゼルウッドのコラボが聴けるwfmuラジオのプレイリストはThree Chord Monte – August 7, 2007(Jacksonで検索して右端の2:49:03 (Real)をクリック)
☆カントリーとロックの両方のジャンルで殿堂入りを果たしたのはジョニー・キャッシュが最初です。☆ジョニー・キャッシュのオフィシャルサイトはThe Official Johnny Cash Website – Johnny Cash.com
エルヴィス・プレスリーやジョニー・キャッシュやJohnny Horton(ジョニー・ホートン)などが元祖だとも云われるRock-A-Billy(ロカビリー)は田舎者という意味の南西部の移民白人による大衆音楽である”Hillbilly(カントリーのヒルビリー)”と南部黒人音楽のR & Bを合わせ、さらにブルースも加味した新しい音楽だそうですから、Rockabilly(ロカビリー)はその後のロックのルーツともいえるでしょう。 そんなジョニー・キャッシュは60年代にはボブ・ディランと共演するなどロック界にも殴り込んで(?)います。
日本でも昭和30年代のロカビリー3人男が登場した日劇ウエスタン・カーニヴァルでのロッカビリー熱狂はすっごかったです。 1959年に来日したWanda Jackson(ワンダ・ジャクソン)は日劇には出演しています。
カントリーについてふれているAudio-Visual Trivia内 の「スペード・クーリー伝記」
Johnny Cash At Folsom Prison: The Making of a Masterpiece
1968年のライヴアルバム「Johnny Cash at Folsom Prison」について?のハードカバー洋書(Michael Streissguth (著)(ペーパーバック)
Johnny Cash At Folsom Prison: The Making of a Masterpiece
Jim Marshall: Proof
500以上ものアルバムやCDのジャケットを飾ったジム・マーシャルの写真集(ハードカバー)Woodstock、the Monterey Pop Festival、the Beatles’ final concertなどは60年代を象徴する写真です。
Jim Marshall: Proof
ジョニー・キャッシュ夫妻の死を悼むかのように、30年以上住んでいたオールド・ヒッコリー湖に面した木造家屋が2007年4月に全焼してしまいした。
2005年のジョニー・キャッシュの伝記映画についてはAudio-Visual Trivia内の「ウォーク・ザ・ライン 君につづ く道」
Johnny Cash in Door-to-Door Maniac 1961年
☆テレビドラマのゲスト出演以外には映画には滅多に出演していなかったアウトローのジョニー・キャッシュが主演したB級のフィルム・ノワール映画があったそうです。 流しのギター弾きを装って人質を拉致してマシンガンをぶっ放す銀行強盗の片棒を担ぐ文無し男のJohnny Cabot(ジョニー・キャボット)を演じたジョニー・キャッシュはテーマ曲の”5 Minutes to Live”を映画の冒頭と映画の中で歌っています。 なにしろ無差別にトントンとドアをノックして出てきた住人を撃つのだそうですからアウトローに違いありません。 カントリー・ギターのソロ演奏はシンコペイトする特異なピッキング奏法で知られるMerle Travis(マール・トラヴィス)だそうで、ジョニー・キャボットの相棒であるギャングのマックス役で出演しています。
Johnny Cash – Five Minutes to Live Theme – YouTube
Mickey Baker plays Johnny Cash
ジョニー・キャッシュ後期のヒット曲をタイトルにした1999年の「I Still Miss Someone」という短編映画でジョニー・キャッシュを演じたのはテネシー出身のMark Collie(マーク・コリー)でした。 70年代からビルボードのカントリー部門で16曲のシングルがチャートインしたカントリー・ロック(ロカビリー)のミュージシャンで俳優だそうです。
Johnny Cash – I Still Miss Someone (1995) – YouTube