クリント・イーストウッド Clint Eastwood

Clint Eastwood: The Jazz Freek
Mr. Clint Eastwood sings Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive!

ジャズ・フリークのクリント・イーストウッド
スィング・ジャズ・ラジオを聞いていたら、偶然に「え~?!」というもの聴きました!
なんと!クリント・イーストウッドの歌です。 曲名は Bing Crosby(ビング・クロスビー) and The Andrews Sisters(アンドリュース・シスターズ)で有名なHarold Arlen(ハロルド・アーレン)とJohnny Mercer(ジョニー・マーサー)が作った”Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive(Accentuate The Positive!(明日があるさ!)でWynton Marsalis(ウィントン・マルサリス)率いるLincoln Center Jazz Orchestraをバックにはにかんだように歌っています。 とてもDirty Harry(ダーティ・ハリー)とは思えません。 どっちかというと、1960年代のTVシリーズの西部劇「Rawhide(ローハイド)」でEric Fleming(エリック・フレミング)が演じた隊長のGil Favor(ギル・フェーバーさん)によく諭されていた、ナイーヴなキャラクターのRowdy Yates(ロディ)の雰囲気でしょうか。 当時の女学生は頼りがいのあるLaramie(ララミー牧場)のジェス派とナイーヴなロディ派とに分かれたのですが、Robert Fuller(ロバート・フラー)の方が人気だったのでロディのファンだった私はちょっと悔しい思いをしましたが、成長してマカロニ・ウエスタンやダーティハリーのようなバイオレンス映画で名を馳せるとは夢にも思いませんでした。 これまでたくさん見た映画のなかでもDon Siegel(ドン・シーゲル)監督とのコンビだったイーストウッドが女ったらしを演じた1968年の「Coogan’s Bluff(マンハッタン無宿)」や、やり放題で児童淫行罪に問われそうなイーストウッドが女の園で殺される「白い肌の異常な夜」や、殺人鬼に食われた「ダーティハリー」シリーズなどの過激な映画は苦手でイーストウッドの映画が全て好きって事はありません。(男性ファンはドン・シーゲルよ) 「ローハイド」では当時ロディの声を担当していたのが後にルパン三世で有名になった山田康雄ですがクリント・イーストウッドも軽い感じのロディとダーティハリーでは当然声質が違ってきたので声変わりのなかった山田康雄では少々無理があったようでした。 そういえば存命中の山田氏を見たことがあります。 某劇場の客席でイーストウッドの声が?とその方向を見ると居ました!ポーズを決めた細身のイーストウッドが立っていたのです。いや、山田康夫でした。いや、ルパンか。アニメの「ルパン三世」を実写化するならフランス人俳優の”ジャン=ポール・ベルモンド”しかいないと言われていましたが実現せず、今となってはもういない。
♪ さて、その”Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive”が聴けるClintEastwood.netで左のメニューからClint Recordingsをクリック、ページ一番左下の”Accentuate The Positive”をクリック!
※ スィング・ジャズ・ラジオについてはスウィング・ジャズ Tuxedo Junction and The Swing Era
Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive by Clint Eastwood

Rawhide

60年代には若いアイドル的映画スターが受けを狙ってシングル・レコードを出すのは珍しくはありませんでしたが、クリント・イーストウッドは一歩進んで、1962年にRawhide’s Clint Eastwood Sings Cowboy FavoritesというLPを吹き込みました。
Clinteastwood.netで左のRelatedのメニューのCowboy FavsをクリックするとLP画像が表示されて”Bouquet Of Roses”、”Snata Fe Trail”、”Tumblin Tumbleweeds”の3曲が聴けます。 Clinteastwood.netではこの他、ローハイドやらなんやらクリント・イーストウッド満載です! ☆オリジナル「Frankie Laine(フランキー・レイン)」のローハイドが聴けます。(歌詞もあり)
※テレビの「ローハイド」の中でフランキー・レインのメイン・テーマ曲が毎回聴かれるのにクリント・イーストウッドが歌ったというClosing Theme 3 [last season End Title](サブテーマ曲)のBeyond The Sunは最初の頃のエピソードで一度歌われただけだったとか。 この曲は最初からこの番組のために書かれたRussell Garcia(ラッセル・ガルシア)作曲の中にあったのですがやっとLennie Adelsonが歌詞を付けて最終シリーズのしかもエンディングに使用されたそうです。
TVシリーズの「ローハイド」は1948年の映画のRed River(赤い河)に似ています。 John Wayne(ジョン・ウェイン)が演じたダンソンがフェーバーさんでMontgomery Clift(モンゴメリー・クリフト)が演じたマシューがローディ君といったところでしょうか。 「ローハイド」は最後の方でキレたEric Fleming(エリック・フレミング)が演じていたフェーバーさんの後を継いでローディ君がフェーバーさんの代わりに隊長になった「The Pitchwagon」時点から人気が下火になりました。
ローディ君が「The Pitchwagon」で歌ったBeyond The Sunの歌詞はRawhide Beyond The Sun – Western Series Wiki
クリント・イーストウッドのロディ時代の写真が見られるRawhide Photos – Les photos(マカロニウエスタンの写真もあり)

マルコビッチが暗殺者を怪演しイーストウッドが鳩と女に詳しいSPを演じた1993年の「In the Line of Fire(ザ・シークレット・サービス)」でも”Willow Weep For Me”や”These Foolish Things”などをピアノで弾いて見せたように、少年の頃からクラブでピアノを弾いて糧を得ていたというクリント・イーストウッドは大のジャズ好きで、映画監督になってから、ジャズに関する映画を沢山撮りました。 その中の一つにクリント・イーストウッドが監督及び製作した犯罪ドラマ「The Garden Of Good And Evil(真夜中のサバナ)」(1997年)がありジャズが取り上げられています。 「真夜中のサバナ」にはKevin Spacey(ケビン・スペイシー)やJude Law(ジュード・ロウ)が出演していますが、クリント・イーストウッドの娘である女優のAlison Eastwood(アリソン・イーストウッド)も出演して話題となりました。 私が初めて可愛いアリソンを観たのはイーストウッドが制作を手掛けジュヌヴィエーヴ・ビジョルドと共演した1984年の「Tightrope(タイトロープ)」でした。 アリソン・イーストウッドは日本未公開ですが2007年にKevin Bacon(ケヴィン・ベーコン)が乳癌の妻を持つ夫を演じた「Rails & Ties(レールズ&タイズ)」で監督デビューしています。
そのアリソン・イーストウッドの兄で、Kyle Eastwood(カイル・イーストウッド)は「センチメンタル・アドベンチャー 」や「マディソン郡の橋」など数本の映画にも出演しました。 クリント・イーストウッドそっくりの息子は父親のジャズ好きの影響を受けてベース奏者で活躍しています。 ちなみにアリソンとカイルは初めての結婚でできた子供で80年代からイーストウッドの映画に登場しています。 イーストウッドは結婚は二度ほどですがパートナー関係は他にもあり、1976年の「The Outlaw Josey Wales(アウトロー)」や1977年の「The Gauntlet(ガントレット)」や1978年の「Every Which Way But Loose(ダーティファイター)」から1980年の「Bronco Billy(ブロンコ・ビリー)」など多くの映画で共演した天使のような顔で悪魔のような女を演じる役が多い女優でゲイの夫がいたというSondra Locke(ソンドラ・ロック)との14年間もの関係が有名です。 ちなみに映画の題名「ガントレット」のガンは拳銃のことかと思ったら戦闘用の籠手のことだそうです。 ”Running the gauntlet”というと中世のアメリカインディアンが捕虜などに行った刑罰で両側に居並ぶ武器を持った部族民の間を駆け抜けるのだとか。映画では警察隊が居並ぶ道路の両側から一斉射撃を浴びて走り抜けたバスのシーンがそれでした。 それから「アウトロー」で北米インディアンのローン・ワティを演じたChief Dan George(チーフ・ダン・ジョージ)は1970年の「小さな巨人」でのシャイアン族の老酋長オールド・ロッジ・スキンズ役の名演技で知られているカナダ先住民の俳優です。
ラストシーンでウルッとさせる映画「ブロンコ・ビリー」のサントラには劇中の酒場でも出演していたクールなホンキートンク歌手のMerle Haggard(マール・ハガード)が歌う”Misery and Gin”やエンディングではイーストウッドとのデュエット”Barroom Buddies”などがありますが、移動のトラック内でもイーストウッドは歌っています。

The Garden Of Good And Evil DVD
「真夜中のサバナ」2000年版DVD
真夜中のサバナ 特別版

The Garden Of Good And Evil DVD


The Garden Of Good And Evil Soundtrack

The Garden Of Good And Evil Soundtrack
クリント・イーストウッド監督がプロデユースした「真夜中のサバナ」のサウンドトラックというか、Johnny Mercer(ジョニー・マーサー)曲集には上記で述べたクリント・イーストウッドが歌う”Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive”をはじめ、歌の上手い共演者のケヴィン・スペイシーがハロルド・アーレン作曲でジョニー・マーサーが作詞した”That Old Black Magic”の他、Rosemary Clooney(ローズマリー・クルーニー)の”Fools Rush In”を始め、イーストウッド監督もお気に入りのセクシーなジャズ歌手のDiana Krall(ダイアナ・クラール)の”Midnight Sun”、男装の麗人のK.D. Lang(K.D.ラング)の”Skylark”も収録されています。 ちなみにダイアナ・クラールはこの後の1999年の社会派ドラマ「True Crime(トゥルー・クライム)」ではイーストウッド監督も作曲に携わったテーマ曲”Why Should I Care“を歌っています。
Midnight In The Garden Of Good And Evil: Music From And Inspired By The Motion Picture
クリント・イーストウッドの”Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive”の試聴はAc-Cent-Tchu-Ate the Positive – Midnight In The Garden Of Good And Evil: Music From And Inspired By The Motion Picture [Soundtrack] – Amazon.com(9番)
☆ ケビン・スペイシーはその後2004年に監督及び主演でボビー・ダーリン伝記映画のBeyond the sea(ビヨンド the シー 夢見るように歌えば)を製作します。

☆クリント・イーストウッドも歌っている”Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive(Accentuate The Positive!)”は1944年のコメディ映画「Here Come the Waves」で、The Academy Awards(1945年第18回アカデミー賞歌曲賞を受賞したHarold Arlen(ハロルド・アーレン)作曲、Johnny Mercer(ジョニー・マーサー)作詞でBing Crosby(ビング・クロスビー)の歌です。
※アカデミー受賞曲入りのサウンドトラックで「Bathing Beauty (1944 Film) / Here Come The Waves (1944 Film) / This Gun For Hire (1942 Film) [3 on 1] [SOUNDTRACK] [FROM US] [IMPORT]」というCDがあります。

追悼 Frankie Laine(フランキー・レイン)
ローレン、ローレン、ローレン!と1966年までローハイドの歌で一世を風靡したフランキー・レイン氏が2007年2月6日に93歳で亡くなりました。(手術に伴った合併症だとか) ジャズ歌手として出発したフランキー・レインでしたが、エルヴィス・プレスリー時代到来以前にジャズ、ブルース(ブルーズ)、カントリーをポップスに取り入れた歌手でした。 フランキー・レインをポップスへの道へ誘ったのは編曲者のMitch Miller(ミッチ・ミラー)で1940年代から1950年代にはジャズ歌手のフランキー・レインが嫌がったカーボーイ・ソングの”Mule Train”を始めその他多くの曲をプロデュースをしています。 皮肉なことに日本ではカーボーイソングのローハイドがフランキー・レインの代表曲となっています。 ちなみにローハイドの冒頭にあるローレンとはRollin’(進む)のことで牛の大群が目に浮かぶような歌です。 1953年に Hank Williamsがアルコール依存症との闘いを歌った”Let Me Go Devil “のカバーで知られるカーボーイ・ソング歌手のTex Ritter(テックス・リッター)で1952年にヒットとなった西部劇映画の「The Ballad of High Noon(真昼の決闘の主題歌)」も歌っていますが、私が好きなのはPlacido Domingo(プラシド・ドミンゴ)も歌ったダイナミックなタンゴ曲の”Jealousy”です。 この曲を収録したCD「Best of Frankie Laine: Jezebel」に収録されたジェラシーはオリジナル・バージョンではないので1951年のバージョンを聴いてみて下さい。
※フランキー・レインの歌詞はOldieLyrics
ちなみにテックス・リッターはHigh Noon – Do Not Forsake Me(ハイヌーン)の他に1930年代初期に録音したRye Whiskeyが有名です。 Amazon.co.jpのアルバムは「High Noon」by Tex Ritter(ASIN: B000001AZN)ですが、2011年発売のMP3アルバム「High Noon High Noon The Best Of Tex Ritter」で試聴可。

ところでタフガイのクリント・イーストウッドは悪者どもをやっつけて勝利を得るのが常ですが唯一死んでしまう映画があるのです。それは1971年にドン・シーゲルが監督した狂気の「The Beguiled(白い肌の異常な夜)」なんですが、南北戦争の北軍兵士を演じたイーストウッドは南部の田舎にある女の園に匿われ美味しい思いをした後に殺されてしまいます。 脚を切断されたから?キノコを食べたから?
2017年のリメイク「ビガイルド 欲望のめざめ」ではColin Farrell(コリン・ファレル)が殺されます。イーストウッドより苦しそうです。

Cry Macho 2021
クリント・イーストウッドが90歳という高齢で監督及び主演する映画が「クライ・マッチョ」です。 元ロデオ乗りのスターだった老カウボーイが昔のよしみで牧場主の頼みを叶えてやるストーリーです。牧場主を元カントリー歌手のDwight Yoakam(ドワイト・ヨーカム、又はヨアカム)が演じていますが離婚した悪妻の元にいる息子を連れ戻すという頼みです。 ちなみに”マッチョ”とは少年が所有していた闘鶏用の鶏の名前で”強い男”という意味だそうです。 闘鶏のルースター(雄鶏)はチキン(弱虫)じゃなくてマッチョ(強い)。<br>演技をしているイーストウッドを観るのはおそらくこの映画が最後ではないだろうかと思います。

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クリント・イーストウッド Clint Eastwood」への6件のフィードバック

  1. カリフォルニアのゆっこです。歌を歌っているとは知りませんでした。私もTBさせてくださいね。

  2. koukinobaaba より:

    カルフォルニアのゆっこさん、コメント有難うございます。 ユメのカルフォルニア!いいですね。 美しい欄の展示会は素晴らしいですね、行ってみたいな。

  3. またまたTBさせていただきました!ジャズといえば「ラウンドミッドナイト」もいいですよね、デクスターゴードン!

  4. koukinobaaba より:

    treevillageさん、コメント有難うございます。 レスター・ヤングととチャーリー・パーカーのミックスといわれるデクスターですが、50年代の演奏はもちろんのこと、60年代の映画「ラウンド・ミッドナイト」の演技もすごいですね。

  5. ケチをつけてなんですが、「バード」で、デージー・ガレスピー役のトランペット奏者のトランペットが、普通のトランペットだったそうです。

  6. koukinobaaba より:

    alex99さん、コメント有難うございます。 細かいですねぇ。 つまり・・・曲がってなかったのですね。 goof!

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