This is Paris, and I’m an American who lives here.
Vincente Minnelli(ヴィンセント・ミネリ)が監督し、Arthur Freed(アーサー・フリード)が製作した「パリのアメリカ人」はパリに留学中の画家志望のアメリカ人とパリジェンヌの恋の物語です。 アーサー・フリードといえば、1951年の「Show Boat(ショウ・ボート)」から「Singin’ in the Rain(雨に唄えば)」や「The Subterraneans(地下街の住人)」まで音楽が素晴らしい映画をプロデュースしています。 ”Rhapsody in Blue”で有名なGeorge Gershwin and Ira Gershwin(ガーシュイン兄弟)の音楽、Gene Kelly(ジーン・ケリー)のダンス、そしてバックのフランス印象派の絵画が素晴らしいパリを舞台にした華麗なるアメリカン・ミュージカル映画です。 もちろん、タイトル曲はガーシュウィンの代表曲であるAn American In Paris(パリのアメリカ人)です。
パリ・ロケはたった2シーンだけで、後は美術監督のPreston Ames(プレストン・エイムス)制作の一ヶ月半の突貫工事によるオープン・セットだそうですから幻想的なパリの町並みが再現されて、映画というより舞台のようです。(特にセーヌ川の橋のあたりとか) 「パリのアメリカ人」でのラスト・シーンのパリの印象派の名画を模したセットでジーン・ケリーとレスリー・キャロンのダンスシーンは実に幻想的で、なかでもフランスの画家のHenri de Toulouse-Lautrec(ロートレック)のMoulin Rouge(ムーランルージュ)を模したシーンは雰囲気が絵画そっくりです。
「巴里のアメリカ人」のあらすじ
ガーシュイン兄弟が1927年に作った”‘S Wonderful(なんて素敵なの)”で始まるオープニング・クレジットの後はすぐに画家の憧れといわれるパリの風景で、主人公であるジェリー・マリガンがナレーションで自己紹介します。 ジェリー・マリガンと聞けば私にはバリトン・サックス奏者のジャズ・ミュージシャンのGerry Mulliganを思い浮かべますが、映画の方のジェリー・マリガンのスペリングはJerry Mulliganです。 そのジェリーはセーヌ河の左岸に住む画家志望のアメリカ人で、同じアパートに住む友人のアダム・クックというジャズ好きなコンサート・ピアニストから全米ツアーを控えたワルツ好きな歌手のアンリ・ボレル(ジョルジュ・ゲタリ)へと紹介が始まります。 ボレルから結婚したい女性として香水店で働く19歳のリズ・ブルビエがレジスタンスの娘でアンリが預かっていたことが語られます。 アダムにリズを紹介するシーンでリズ(レスリー・キャロン)の魅惑的なダンスが”Embraceable You(抱きしめたいあなた)”の曲に乗って次々と観られますが、やはり椅子を使ったセクシーなダンスが最高。 いつものように文無しのジェリーが路上で絵を売っていると金持ちマダム風情の女性マイロ(ニナ・フォック)が絵を気に入って買ってくれると言うのです。 持ち合わせがないからとホテルへ金を受け取りに行ったジェリーはその晩開かれるマダムのホームパーティーに誘われる。 アパートに戻ったジェリーは子供達と”I Got Rhythm(リズムにのって)”を歌いながらタップダンスを踊る。 さて、約束したパーティに行ってみれば女の子などどこにもおらず正装したマイロだけ。 ジェリーの才能を買って応援したいと言うマイロとジャズ酒場へ行くと美術記者のトミーに紹介される。 その店で出会ったのがアンリが話していた結婚したい女の子リズでした。 無理やりダンスに誘うとリズの勤める店の電話番号を聞き出すジェリーにマイロは礼儀知らずとおかんむりだが翌日もパートナーとしての仕事でジェリーを訪れて昼食の約束をする。 ジェリーはリズの店を訪ねて強引に夜の9時に川岸のカフェ・ベラミでの約束を取り付ける。 川岸の散歩で二人がデュエットして踊る曲は”Our Love Is Here to Stay(わが恋はここに)”だが、11時と知るとリズはまるでシンデレラのように慌てて帰ってしまう。 ジェリーはなんとか土曜の昼のデートは約束した。
リズは結婚して一緒に渡米しようというアンリの申し出に迷う一方、ジェリーはアトリエも借りて3か月後に個展を開くというマイロに反発するも金は返す約束で承諾する。 個展目指してパリの風景を描きまくるジェリーはリズもモデルとして描く。 そんな時、リズはジェリーに真実を打ち明けようと悩んだが、個展まで後一か月というジェリーがアパートに絵を置きに行っている間にタクシーを発車させてしまうリズ。 階下のカフェでアダムと話している時に入ってきたアンリになんとリズへの告白を勧められるジェリー。 何も知らないアンリがジェリーと陽気に歌う”‘S Wonderful”に双方の事情を知るアダムは「ちっとも素敵じゃない」と浮かない顔。 場面変わって夜の河岸でとうとうリズは結婚することを告白する。 アンリは愛しているわけではないが命の恩人だからと。 そこでジェリーも対抗意識でパトロンのことを話して別れを告げる。 その後マイロを訪ねたジェリーは大晦日を一緒に過ごそうと美術学校のパーテイーに誘うが、そこでアンリとリズのカップルにも会ってしまう。 屋上でのジェリーとリズの別れの会話を柱の陰で立ち聞きしていたアンリがいた。 屋上からアンリの車に乗り込むリズを見つめるジェリー。 下ではジェリーを見上げて涙する車中のリズ。
そして、次のシーンが圧巻! 屋上に一人残されたジェリーがパリの街を踊りまくる幻想的な場面では何と言ってもリズと踊る噴水の踊りが一番ロマンチック。 そのシーンでの背景はジェリーが描いたパリの風景。 するとアンリの車が戻ってきてリズが階段を駆け上がってくる。 それを見たジェリーは階段を駆け降りて二人は熱い抱擁! 優しいアンリのおかげです。
「巴里のアメリカ人」のトレーラー
An American In Paris Trailer – VideoDetective
An American In Paris Trailer – Turner Classic Movies(画像下のMovie ClipとView Trailerをクリック)
ヴィンセント・ミネリは監督といってもLiza Minnelli(ライザ・ミネリ)の母であるJudy Garland(ジュディー・ガーランド)との離婚協議や他の作品などにかかっていて忙しく、実際はジーン・ケリーが代わって指揮をとったといわれています。 ジーン・ケリーがデビューした1942年の「For Me and My Gal(フォー・ミー・アンド・マイ・ギャル)」などのミュージカル映画などでジュディー・ガーランドと共演しています。
「パリのアメリカ人」は1951アカデミー作品賞他、オリジナル脚本賞、カラー撮影賞、カラー美術監督・装置賞、ミュージカル映画音楽賞、カラー衣装デザイン賞の6部門を獲得しました。
☆ちなみに「巴里のアメリカ人」の音楽ディレクターだったのはパラマウント社の漫画「Betty Boop(ベティちゃん)」のテーマ曲や、Billie Holiday(ビリー・ホリデイ)のボーカルで有名な”I Cover the Waterfront(波止場にたたずみ)”を1933年に作曲したことで有名なJohnny Green(ジョニー・グリーン)でした。 ジョニー・グリーンは「巴里のアメリカ人」の後には1956年の「High Society(上流社会)」や1961年の「West Side Story(ウエスト・サイド物語)」などで音楽監督をつとめました。
1952年のミュージカル映画の「Singin’ in the rain(雨に歌えば)」でジーンケリーと共演したダンサー女優のCyd Charisse(シド・チャシリー、又はシド・チャリース)が「巴里のアメリカ人」の撮影当時妊娠したためにバレー学校でBrigitte Bardot(ブリジット・バルドー)とクラスメイトだったことがあり、当時パリでバレリーナだった17歳のLeslie Caron(レスリー・キャロン)が抜擢されました。 キャロンが椅子と踊る魅惑的ダンス・シーンは音楽も相まってかなりなセクシーで、当時なら映倫にひっかかりそうな位にエロティックでした。 また、例の長いといわれる最後のダンス・シーン、マリガンの幻想のなかの噴水の廻りでの踊りも幻想的です。 このミュージカルの呼び物は最後の17分間半にも及ぶこのバレエ・シーンです。 退屈という方もいますがなんたってアナタ!一番の見せ場ですから~!(ここは寝ナイデクダサイ)
Fantastic Gene Kelly and Leslie Caron dancing in An American in Paris – YouTube
sexy Leslie Caron in An American in Paris – YouTube
Green Mansions(緑の館)のAudrey Hepburn(オードリー・へプバーン)をもっとカマトトにしたみたいなファニーフェイスのレスリー・キャロンは笑い声に特徴の有る当時大抜擢のシンデレラ女優です。 その後もHorst Buchholz(ホルスト・ブッフホルツ)と共演した1961年の「Fanny(ファニー)」のヒロインなど60年代を通して数々のヒット作に出演してきましたが、半世紀経った今でもルイ・マル監督の「Louis Malle’s Fatale(ダメージ)」や「Chocolat(ショコラ)」など二出演して現役で活躍しています。 レスリー・キャロンがヴィンセント・ミネリも監督としてクレジットされている「The Story of Three Loves(三つの恋の物語)」の次にオードリー・へプバーンと結婚したことがあるMel Ferrer(メル・ファーラー)と共演した1953年の「Lili(リリー)」が有名ですが、私としては1955年の「Daddy Long Legs(足ながおじさん)」、1958年の「GIGI(恋の手ほどき)」そして1960年の「The Subterraneans(地下街の住人)」が印象に残りました。 レスリー・キャロンではなくJanice Rule(ジャニス・ルール)のダンスが魅惑的だった「地下街の住人」以外はレスリー・キャロンが全部綺麗でお洒落! ほとんど全部レスリー・キャロンの歌とダンス!
Cyd Charisse(シド・チャリース)
もしシド・チャリースが「パリのアメリカ人」に出演していたら。
シド・チャリースは何十年も前はシド・シャリスと表示されていた記憶があります。 シド・チャリースはレスリー・キャロンが「パリのアメリカ人」で踊った可愛いセクシーダンスとは違った大人のセクシーダンスを1952年の「雨に唄えば」でご披露しています。 シド・チャリースは1943年から1994年の間に幾本ものミュージカルや名画に出演した長い御み足が魅力だったモンテカルロのロシアバレー団出身の女優です。 メジャなデビューは1946年にフレッド・アステアとジュディ・ガーランドが主演したヴィンセント・ミネリ監督の「Ziegfeld Follies(ジーグフェルド・フォリーズ)」です。 Greta Garbo(グレタ・ガルボ)主演の「ニノチカ」のリメイクで、Cole Porter (コール・ポーター)によるブロードウェイ・ミュージカル版の映画化である1957年の「Silk Stockings(絹の靴下)」でもフレッド・アステアと共演して脚線美をご披露しています。
☆脚フェチのサイトでシド・チャリースが載っているLegs – A Tribute to Cyd Charisse
An American In Paris DVD
ページトップの画像は輸入版VHSビデオですが現在は入手困難です。(英語)
巴里(パリ)のアメリカ人
2014年に販売される「巴里のアメリカ人」の日本語吹き替え版はASIN: B00O7AUUL8
2008年には「Blu-ray」(ASIN: B003GQSYPI)も発売。
廉価版DVD(ASIN: B000LZ6FM6)も見つかるかも。
An American In Paris: Original Motion Picture Soundtrack
2002年販売の2枚組の輸入盤CDですが国内盤巴里のアメリカ人サントラ(ASIN: B00005GL5K)で日本語の曲目が見られます。
An American in Paris (1951 Film Soundtrack)
Rhapsody in Blue-Gershwin Album by Arthur Fiedler: Boston Pops Orchestra (Super Audio CD – DSD)
2005年発売の映画音楽でも有名なアーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス・オーケストラが演奏するガーシュウィンの”ラプソディー・イン・ブルー”や”パリのアメリカ人”の他、メドレーにも何度も使用されている”S Wonderful(スワンダフル)”など全7曲を収録したアルバムは試聴ができる「ラプソディー・イン・ブルー ガーシュウィン・アルバム」(互換機が必要なSACDとはソニーなどが提唱している音楽を記録するための光ディスクの規格)
Embraceable You
“I Got Rhythm”Music by George Gershwin,Lyrics by Ira Gershwin
“Our Love Is Here To Stay”Music by George Gershwin Lyrics by Ira Gershwin
“‘S Wonderful”(George Gershwin & Ira Gershwin)Sung by Gene Kelly
“Embracable You”(George Gershwin and Ira Gershwin)Danced by Leslie Caron
※ガーシュインが作曲してCole Porter(コール・ポーター)が作詞した名曲の”Embraceable You”はジャズのスタンダードとなっていてSarah Vaughan(サラ・ヴォーン)、Billie Holiday(ビリー・ホリデイ)、Frank Sinatra(フランク・シナトラ)やConnie Francis(コニー・フランシス)のヴォーカルでも有名です。
Embrace me, my sweet embraceable you…と歌われる”Embraceable You”の歌詞はEmbraceable You Lyrics from “An American in Paris”- Stlyrics.com
Gene Kelly (1912 – 1996)
ジーン・ケリーは「巴里のアメリカ人 」の前にJudy Garland(ジュディ・ガーランド)と共演した1942年の「For Me and My Gal」をはじめに、Rita Hayworth(リタ・ヘイワース)と共演した1944年の「Cover Girl (カバーガール)」、Frank Sinatra(フランク・シナトラ)とコンビを組んだ1945年の「Anchors Aweigh (錨を上げて)」など大ヒットしたミュージカル映画に出演してきましたが、「巴里のアメリカ人」の後にDebbie Reynolds(デビー・レイノルズ)と共演した1952年の「Singin’ in the Rain(雨に唄えば)」は誰でもが知っている有名な映画となりました。
ジーン・ケリーが歌う1942年のFor Me and My Galが聴けるFor Me and My Gal – Jazz On Line.com(Gene Kellyで検索、曲名をクリックすると自動的にRealPlayerが立ち上がりますがそうでなければダウンロードされたファイルを開く)
Rhapsody In Blueはガーシュウィンのアルバムの「Celestial Gershwin – Rhapsody in Blue/Concerto in F/An American in Paris(ASIN: B0000959MP)」などに収録されています。(試聴は「ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー、パリのアメリカ人/他」(ASIN: B0090S4AFY)
Brigadoon
あまり話題にはされないのですが、ビンセント・ミネリが監督してジーン・ケリー が主演したミュージカル映画にはスコットランドにあるという摩訶不思議な村を舞台にした1954年の「ブリガドーン」があります。 休暇でスコットランドに狩猟に出かけて道に迷い偶然に地図には載ってない魔法の村を発見した二人のアメリカ人の話です。 100年(1世紀)に一度、しかもたった1日しか現れない村、そこに住む美女のフィオナに恋をしてしまったアメリカ人はいったいどうすればいいのでしょう。 ジーン・ケリーが劇中で”Almost Like Being in Love(恋をしたみたい)”を歌いますが音楽は「巴里のアメリカ人」と同じジョニー・グリーンが担当しているサントラは輸入盤では2005年販売の「Brigadoon」(ASIN: B00095L8A2)や2010年の「Brigadoon」(ASIN: B003AKEQYS)がありあます。 「ブリガドーン」では「巴里のアメリカ人」に出演しそこなった優美に踊るシド・チャリシーの大人の女性の魅力が堪能できます。 邦題の「ブリガドーン」で探すと日本語字幕のDVD「ブリガドーン デジタル・リマスター版」(ASIN: B0009G3EWQ)や「ブリガドーン [DVD]」(ASIN: B00005ALV4)が見つかります。
Brigadoon Trailer (1954) – YouTube