女はそれを我慢できない The Girl Can’t Help It (1956)

The Girl Can’t Help It (DVD)
Jayne Mansfield

This blonde bombshell with a size 44 wants to be a housewife!
It’s a dream come true for men.
She’s got a lot of what the men call the most.
女はそれを我慢できない(1956年)

Sex Symble and Rock ‘n’ Roll!
「女はそれを我慢できない!」なんて、扇情的なタイトルからあらぬ期待を抱かないで下さい。 ”それ”ですがいったい「何を我慢できない」のか気になりますね。 タイトルにそぐわず、なんと!これは映画史上初めてフランク・タシュリン監督により製作された1950年代のロックンロールの映画なのです!

ここにTom Ewell(トム・イーウェル)が映画で演じたJayne Mansfield(ジェーン・マンスフィールド)のお相手役のTom Miller(トム・ミラー)の言葉があります。
“Our story is about music, not the music of long ago, but the music that expresses the refinement, culture, and the polite grace of the present day.”・・・なんですって!上品さを売りこんでいるのでしょうか。

“彼女がウインクすればトーストも焦げる!、ギュっとくびれたその身体!”なんていうジュリー・ロンドンの夫君であるBobby Troup(ボビー・トループ)が作ったLittle Richard(リトル・リチャード)のタイトル曲”Girl Can’t Help It”で幕を開ける「女はそれを我慢できない」はJerry Lewis(ジェリー・ルイス)の「底抜け」シリーズで名高いFrank Tashlin(フランク・タシュリン)監督が1956年に制作したコメディです。 ブロードウエイ劇作家で1930年代にはコメディ映画の監督もした原作者のGarson Kanin(ガーソン・カニン又はガーソン・ケニン)が脚本を担当しました。
コミック作家出身のフランク・タシュリンは映画界のJonathan Swift(ジョナサン・スウィフト)みたいに娯楽作品を通して強烈な風刺をかます監督として知られています。 50年代のポップカルチャーを代表するといったって、取り合わせが巨乳女優とロックンロールですから。
Marx BrothersやBob Hopeの喜劇の作家であるフランク・タシュリン監督の「女はそれを我慢できない」はタシュリンが監督したジェリー・ルイスの映画と一緒に2006年8月末から9月始めににニューヨークのマンハッタンでのFilm Forumで特集としてニュープリントで上映されるそうです。

「女はそれを我慢できない」はフランク・タシュリン監督が漫画チックに誇張したイメージの悩殺グラマーを描いていますが、1950年のGeorge Cukor(ジョージ・キューカー)が監督しJudy Holliday(ジュディ・ホリデイ)とWilliam Holden(ウィリアム・ホールデン)が共演した「Born Yesterday(ボーン・イエスタデイ)」をもっと単純なコメディにしたようなものだそうです。(おつむの弱いブロンド娘を教育するマイフェアレデイ映画) タシュリン監督の映画は巨乳の金髪美人そのものではなく刺激的な環境下で興奮させられる男性の悲哀を描いているのです。

日本未公開の映画「Born Yesterday」で主演したJudy Holliday(ジュディ・ホリデイ)は1949年の「Adam’s Rib(アダム氏とマダム)」でトム・イーウェルと共演しています。
☆映画「Born Yesterday」について書かれた入間洋のホームページ Born Yesterdayと写真が見られるJudy Holliday – MovieActors.com

1957年の「Will Success Spoil Rock Hunter?(”ロック・ハンターはそれを我慢できるか?”、もしくは”もしくは”成功はロック・ハンターをスポイルするか?””)」同様にフランク・多種リン監督のお得意な漫画手法は笑って笑って涙ちょちょ切れ。 超グラマーなジェーン・マンスフィールドが歩くと
ジュ~ワッ!っと氷配達人が触っていたトラックの氷が溶けちゃうとか、腰をキュキュっと振って階段を上がるとすれ違ったミルク配達ボーイの持ったミルクビンがブッシュ~!っと沸騰してほとばしるとか、階段を上がるのを見たおじ様のメガネにバキバキッ!っとヒビが入るなどの最初のシーンだけども可笑しいです。 このシーンはリトル・リチャードの”The Girl Can’t Help It”をバックに世界最低で不快な映画とされる1972年のコメディ「Pink Flamingos(ピンク・フラミンゴ)」でドラッグ・クィーンのDevine(ディヴァイン)により再現されています。 ミルクは吹き出ませんがそっくりな階段とミルク配達人のシーンはRita Hayworth(リタ・ヘイワース)が出演したGene Kelly(ジーン・ケリー)の1944年のミュージカル「Cover Girl(カバーガール)」にもありました。
余談ですが、アメリカではミルクあるいはエッグノッグが溢れ出るとは男性の興奮を表現する場合があるとか。(ヤドリギの飾りとエッグノッグについて”アリー my Love”のクリスマス・エピソードにあったかも) 「ロック・ハンターはそれを我慢できるか」にはケイリー・グラントと1948年に「Every Girl Should Be Married(恋はかくの如く)」で共演し20年ほど結婚したことがあるBetsy Drake(ベッツィ・ドレイク)もジェニー役で出演しています。

Jayne Mansfield sings Every Time You Kiss Me in The Girl Can’t Help It – Youtube

実在の当時の人気(美人)歌手Julie London(ジュリー・ロンドン)に逃げられたという元マネージャー(芸能プロモーター)トム・ミラーがかってのスロットマシン(賭博)の帝王と呼ばれたギャングのマードックと関わり合いになり、その彼女のジェリー・ジョーダンを歌手にするように頼まれて四苦八苦するも、実は超グラマーなジェリーは家庭的だった!・・・というストーリーです。 トムとジェリー。。。
特筆すべきは女優というより有名になりたかったとういうジェーン・マンスフィールドのMarilyn Monroe(マリリン・モンロー)の比ではない44インチ(106センチ又は115cm)という巨乳(巨大バスト)とハリウッド映画初のロックンローラー達の出演です。 50’s(フィフティーズ)のロックンロール旋風に乗って登場したのが異例の「IQとバスト」が比例するジェインマンスフィールド嬢です。 そのデカさでは50年代のもっとも観賞に値する悩殺グラマー女優だったし、たぶん現在も男性陣の憧れではないでしょうか。

Cry Me A River by Julie London in The Girl Can’t Help It – YouTube

ちなみに私が観た「女はそれを我慢できない」の前にジェーン・マンスフィールドの出演映画は1955年にクラブのタバコ売りを演じた「Pete Kelly’s Blues(皆殺しのトランペット)」と1956年の「Female Jungle」でした。

☆出演者のトム・イーウェルは1955年のマリリン・モンローと共演した「七年目の浮気」が有名です。
ちなみにメイドのHilda(ヒルダ)役を演じたJuanita Moore(ファニタ・ムーア)が1959年のダグラス・サーク監督の話題作「悲しみは空の彼方に」でもメイド役です。 しかしただのメイドではなく物語りの中心となる人種差別や母娘の愛情を熱演しました。

The Girl Can’t Help It Soundtrack
画像は2012年発売の輸入盤「Girl Can’t Help It」のサントラ(ASIN: B008ZD4RWG)で3枚組CDです。 映画に登場した歌手以外にも当時の人気歌手の歌全102曲を網羅しているそうです。

画像は23曲収録のデジタル・ミュージックCDの「Girl Can’t Help It」(ASIN: B07HBYHWTN)
♪ 試聴はThe Girl Can’t Help It – Original Motion Picture Soundtrack (CD) – Bear-family.com
「女はそれを我慢できない」のサウンドトラックの音楽及び指揮は
Doris Day(ドリス・デイ)の「アゲイン」を作曲したLionel Newman(ライオネル・ニューマン)です。 歌手希望のギャングの女”ジェリー”と酔いどれマネージャーが売り込み作戦で出向いた何軒ものナイトクラブでは、ステージでAbbey Lincoln(アビー・リンカーン)の”Spread The Word”をはじめ、50年代当時のロックンロールミュージシャン達が大勢出演しています。 以下は出演している歌手と曲目の一部の紹介です。

Listen

映画「女はそれを我慢できない」のオープニングはリトル・リチャードの「The Girl Can’t Help It(女はそれを我慢できない)」です。 Little Richard(リトル・リチャード)は「女はそれを我慢できない」に出演してテーマ曲とピアノを叩きながらの”She’s Got It”を歌った翌年に人気絶頂だというのに引退して牧師になってしましました。
♪ リトル・リチャードの”The Girl Can’t Help It”が聴けるWFMUラジオのプレイリストはPlaylist for Karaoke Alarm Clock with Jason Das – July 15, 2001(Listen to this show (RealAudio)をクリックしてクリップ・ポジション(再生バー)を1:13:25に移動)
☆リトル・リチャードが”She can’t help it, the girl can’t help it…”と歌う”The Girl Can’t Help It”の歌詞はOldieLyrics.com
The Girl Can’t Help It by Little Richard – YouTube

「Be-Bop-A-Lula」 by Gene Vincent and the Blue Caps
☆映画ではジェリーが歌手より家庭に向いていることを知ったもののギャングに脅されてジェリーを人気歌手に仕立てる仕事を止められなくなったマネージャーがジェリーを連れて行ったリハーサルスタジオで本格的に歌の練習を始めます。 音階の練習でド、レ、ミといったところでスタンドの電球がバ~ン!オンチを装ったジェリーの声があまりにヒドかった。
そのスタジオの一室で”ビー・バップ・ア・ルーラ”歌っていたのがGene Vincent(ジーン・ヴィンセント)です。

ギャングの指図でマネージャーとジェリーは自宅でテレビを観ます。 テレビではロックンロール・スターとして当時18歳のEddie Cockran(エディ・コクラン)が「Twenty Flight Rock(20フライトロック)」を歌っています。 もう1曲は「Somethin’ Else」です。
エディ・コクランのサイトではコクランの出演映画として「The Girl Can’t Help It」のビンテージ・ポスターがあります。 Girl Can’t Help It poster – EddieCochran.info(The Girl Can’t Help Itで検索)

ジェーン・マンスフィールドも歌いました。 レコーディングスタジオでギャングが獄中で書いた曲”Rock Around the Rock Pile”をギャング役のEdmond O’Brien(エドモンド・オブライエン)が歌いましたがレコーディングではRay Anthony(レイ・アンソニー)楽団で合間の悲鳴(サイレン)が金髪のジェリーでした。 この曲を国中のジュークボックスから流れるようにするのがマネージャーの役目です。 このあたりでマネージャーとジェリーの二人は完全に恋に落ちてしまいました。 ちなみにエドモンド・オブライエンは1939年のNotre Dame de Paris(ノートルダムのせむし男)でデビューし1962年のLiberty Valance(リバティ・バランスを射った男)にも出演しました。
☆日本未公開でしたが1953年にエドモンド・オブライエンがRoy Collins(ロイ)役で主演したIda Lupino(アイダ・ルピノ)監督のサスペンス映画「The Hitch-Hiker(ヒッチ・ハイカー)」があります。 メキシコに釣り旅行へ行く途中に逃亡者のヒッチハイカーを乗せてしまった二人の男の恐怖を描いているフィルム・ノワールです。

ギャングがニューヨーク中のジュークボックスを取り替えるシーンの後にダンスホールでFats Dominoが「Blue Monday」を歌い、その次はThe Platters(ザ・プラターズ)がYou’ll Never, Never Know(ユール・ネバー・ノー)を歌っている間に楽屋ではマネージャーと花嫁姿のジェリーとの別れの熱い抱擁が。 その後にジェリーが囚人服姿のレイ・アンソニー楽団をバックに”Every Time It Happens”を歌っているのを聞いたマネージャーが愕然とします。 なぜって、ジェリーは音痴じゃなかった!
儲けものは映画の冒頭にギャングが観ていたビデオがピンナップガール・ナンバーワンのBetty Grable(ベティ・グレイブル)が歌う1950年の”I Wish I Could Shimmy Like My Sister Kate”です。 レイ・アンソニー楽団は”Big Band Boogie“も演奏します。

ジェーン・マンスフィールドは1960年にイタリア映画「Hercules and the Hydra(Gli Amori di Ercole)」で「Mickey Hargitay(ミッキー・ハージティ又はハギーティー)」と共演していますが、1958年の二人の結婚式には「女はそれを我慢できない」の制作側がジェーン・マンスフィールドの映画で使用した衣裳(ウエディングドレス)を貸し出したそうです。
☆ 二人が出演した映画にはヘラクレスとヒドラをテーマにした「Hercules and the Hydra」があります。
この結婚式は1980年にArnold Schwarzenegger(アーノルド・シュワルツェネッガー)とLoni Anderson(ロニ・アンダーソン)が出演したTVドラマの「The Jayne Mansfield Story(愛しのジェーン・マンスフィールド)」で再現されています。
Something Weird The Wild Wild World of Jayne Mansfield
ジェーンの写真はJayne Mansfield Photos – JayneMansfield.com

The Girl Can't Help It

「女はそれを我慢できない」のサウンドトラックが残念ながら現在は入手出来ませんのでサントラ代わりにもなる貴重な当時の現役ロックンローラーの映像が満載のビデオで代用できます。
50’sのロックンロールと悩殺グラマーの映画だから英語が分らなくてもOK・・・但し目の玉飛び出るほど高価! アメリカでは$64.95以上というから結構ビデオ価値があるのかも(Hi-Fi音響)
ビデオのカバー画像がクラシックな1997年発売の海外版「The Girl Can’t Help It」VHSビデオは超ビンテージ価格!
The Girl Can’t Help It

The Girl Can't Help It with Japanese subtitles

出ました! ページトップの画像もDVDですが英語の輸入版。 2007年に発売された「女はそれを我慢できない」の字幕付き廉価DVDです! ところがこの2007年版DVDがすぐに入手困難となりリンク先は2010年発売の商品です。
女はそれを我慢できない [スタジオ・クラシック・シリーズ]
私はこのDVDを購入したので何度か観たのですが”Tempo’s tempo”を歌っているというNino Tempo(ニノ・テンポ)を見落としてしまいます。

フランク・タシュリン監督はジェーン・マンスフィールドがお好き
「女はそれを我慢できない」の翌年の1957年にもフランク・タシュリンはジェーン・マンスフィールドをハリウッドから来たグラマー女優の”リタ・マーロウ”役にして泡アワ風呂シーンが有名なWill Success Spoil Rock Hunter?(ロック・ハンターはそれを我慢できるか?)を監督しました。 日本では未公開でしたが夫君のミッキー・ハージティも出演しています。 一般受けしたのはこの次にStanley Donen(スタンリー・ドーネン)が監督し、Cary Grant(ケイリー・グラント)が主演したKiss Them for Me(よろめき休暇)の方だと思います。

Rockabilly Graffiti Vol.1 & Vol.2
1993年にテイチクからロカビリーのオムニバス・アルバム「ロカビリー・グラフィティ」がリリースされたそうですが、現在は各2枚組みの1巻(Vol.1)と2巻(Vol.2)が見つかります。 「ロカビリー・グラフィティ(2)」(ASIN: B000064SHE)にはリトル・リチャードの”女はそれを我慢できない”やヒットした3曲の他、ロックンローラーやロカビリアンの曲が各40曲も収録されています。