ヴァージン・ハンド Picking Up The Pieces (2000)

I’m sure the Virgin was wearing turquoise nail polish.
Woody Allen's Picking Up The Pieces - Fuck You!
聖母マリアの手
マリア様はトルコ・ブルーのマニキュアをしていた!
Vergin Hand (2000)

Picking Up The Pieces with Woody Allen
ウディ・アレンが主演する「ヴァージン・ハンド」は自身がDr. Amado(アマド医師)役で出演しているメキシコのAlfonso Arau(アルフォンソ・アラウ)が監督した悪評高きウルトラ・ブラックコメディです。 バラバラ殺人事件の物的証拠である切り落とした片手が、なんと、「聖母マリアの奇跡の手」として田舎町の観光収入源になってしまいます。
妻殺しの犯人である肉屋を演じるWoody Allen(ウディ・アレン)は1965年に「What’s New Pussycat?(何かいいことないか子猫チャン)」の脚本兼出演者として映画デビューしました。

Picking Up The Pieces - Woody Allen

ヴァージン・ハンドのちょっとあらすじ
舞台はアメリカ、アリゾナの田舎の肉屋、ニューヨークからやって来たウディ・アレン演ずるテックス・カウリーが元ストリッパーのセクシーな女房キャンディーを愛するあまり浮気を封じようとなんと短絡的!殺してしまいます。 犯行後には電動ノコギリで美女を切るマジックショーの人体切断よろしく妻の死体を7つ(七つの大罪?)にバラしてトラックに積み込み、愛犬ピンキーを同乗させたテックスはアリゾナとテキサスの間にあるニューメキシコの町外れに埋めに行ったのです。 映画の冒頭では妻を回想しながらバラバラ死体を運ぶ肉屋のテックス。
Picking Up The Pieces!
ところがその道中に、悪路でバウンドしピックアップの荷台から落っこちてしまった部品(?)を「重たい女だ」なんて言いながらあわてて拾い集めて積み直しました。(闇夜とはいえ生首を荷台に投げ込む音がしてけっこうグロ)
テックスが拾い忘れた女房の片手に蹴躓いて転んだのが村の盲目の老婆でしたが、その左手を拾った老婆の目が突然見えるようになったことから奇跡が起こったとして妻の手首がサンミゲル教会に持ち込まれ、警察に届けようと言う神父を制したのは奇跡を信じた巨乳娼婦のデシ(Maria Grazia Cucinotta)。 キャンディーの手は”マリア様の手”(聖遺物)として教会に祀られることになります。 これが迷信深いスペイン系の田舎町エルニーニョの人々に次々と奇跡を起こし、フィーバー、フィーバー、町は参拝者で大賑わい。 商売繁盛、大儲けした人びとから教会への寄付がジャンジャン。 痙攣病が癒えた、切られた足がはえた! あばた面がツルルツに! 村人たちは中指をおっ立ててたトルコ石色のブルーの長い爪の処女(ヴァージン)マリアの手にそれぞれのお願いを託すのです。 「デカパイにして!」だの「大きなイチモツを!」などと言いたい放題!(キングオブコントでのどぶろっくのネタみたい) 町の広場じゃ、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経 Eddie Griffin(エディ・グリフィン)が演じる口から火を噴く黒人セディエントの歌う仏教徒?の辻舌鋒)
そのマリア様の手、つまり肉屋の女房の手首は、殺される前に旦那を侮辱した形のまんま。
ファッキュー!
キャンデーの行方を捜査するとボボはテックスのトレーラーにやって来て不法に手錠をかけてしょっぴき嘘発見機にかけますが針は微動だにせず放免。 しかしその騒動を知った肉屋のテックスが、「これはまずい!」と妻殺害の証拠隠滅のためにその手首を取り戻しに行ってる間にトレーラーのガサ入れをしたボボはキャンディーを埋めた地点をマークした地図を見つけボボもエルニーニョに向かいます。 教会に入り込んでキャンディーの手首に詫びを入れるとテックスは拳銃を出して強奪します。 逃げるテックス、追うボボ、町はそりゃ大騒ぎ! デシは生活を変えると悪の温床(ベッド)を燃やしてしまい、教会の懺悔室で神父に結婚を迫ります。 村にやって来たテックスが拳銃片手に祭壇のケースから手首を奪い取って埋めてしまうと、なんと!今までの軌跡は全て消えてしまったのです。 老婆はまた盲目に、デカパイはしぼみ、フラッコのニキビも戻って女の子に笑われるわ、床まで届かんばかりだったデカ××も、ありり! テックスは参拝者たちに捕まり大騒動、そこにボボも割って来て俺の囚人だと主張するも、エルニーニョの保安官がテックスに手錠をかけてボボにジョン・ウエインはテキサスに帰れ!と脅されるしまつ。 泣けるのは牢屋からかけたテックスの電話に反応して愛犬ピンキー(フォックステリア)がテキサスからはるばるメキシコへと旅して来る事。

Hi, Arsehole.

投獄されたテックスは電話で愛犬のピンキーを呼ぶが、夜中にキャンディーが現れ、ひとしきりしゃべると高笑いを残して消えた。 おねだりしたタバコの吸い殻を床に残して。 鉄格子の扉が開くのを知ったテックスは留置所を出ると部品が埋めてある木の側を穿り返そうとしているとピンキーが手を銜えてきた。 その手首を持ってユダヤ人のテックスが懺悔に行くと神父とデシが愛を囁いていた。 妻殺しを告白するテックスに驚く神父、外では町の人びとが教会の扉を開けろ!と大騒ぎ。 ドアを破ってなだれ込む人びとに神父は叫んだ。
「この手は聖母マリアの手ではない!」 と神父がテックスの告白を暴露しようとした時、拳銃を構えたボボが「そいつは人殺しだ!」と入ってきたが、デシの爪楊枝ひと突きを機に町の人々にボコボコにされ吊り上げられて人間花火になってしまった。 喧噪を逃れたテックスは指をポキポキと折り畳んだキャンディーの手を祭壇のガラスケースに戻し別れを告げ、愛しているかと尋ねた途端、ケースの中でキャンディーの中指がパキッとおっ立った。 これで村では奇跡が消えてしまった人びとに再び幸せが戻った。
テキサスに戻るテックスの言葉、「黙って引っ込め!」 Go Fuck Yourself….

Picking Up The Pieces - Allen and Schwimmer

肉屋の浮気女房はSharon Stone(シャロン・ストーン)が演じます。 42歳でキャンディーを演じたシャロン・ストーンはウディ・アレンの「スターダスト・メモリー」でブッチュー!とデビューした後の1992年に「Basic Instinct(氷の微笑)」で白いドレスのあのシーンで、1993年に「Sliver(硝子の塔)」で若い毛むくじゃら男(ウィリアム・ボールドウィン)とあのエロティックなシーンで、1994年の「The Specialist(スペシャリスト)」でSylvester Stallone(シルヴェスター・スタローン)ともあの筋肉体操もどきのシーンで、セクシー女優の看板を掲げたのですが、なんと1995年に自分も制作に携わって色気抜きの西部劇「The Quick and the Dead(クイック&デッド)」で父の仇討ちをする女ガンマン役で主演しました。 この決闘映画「クイック&デッド」ではRussell Crowe(ラッセル・クロウ)がシャロン・ストーンとラヴシーンを演じるという幸運なハリウッド映画デビューをしていますが2001年には「A Beautiful Mind(ビューティフル・マインド)」で統合失調症になった数学者を熱演しています。なんと2020年には今や巨漢と化したラッセル・クロウが不遜な態度のママ・ドライバーに煽り運転をする「Unhinged(アオラレ)」で呆気に取られるほど残忍な殺しを繰り返す凶暴なピックアップトラックの運転手を怪演しています。
そして、ウッディ・アレンが演じる肉屋の女房の手首に「聖母マリアの手」というお墨付きを与えた神父役はなんとTVコメディシリーズ「Friends(フレンズ)」でRoss Geller(ロス・ゲラー)役だったDavid Schwimmer(デヴィッド・シュワイマー)です。 神に仕える身なのに娼婦のDesi(マリア・グラツィア・クチノッタ)への想いで悶々としている俗っぽい神父様(レオ・ジェローム)はなんとも哀れかつ滑稽です。 司祭さまの”LaCage(ラケージ)”には1973年の「The Long Goodbye(ロング・グッドバイ)」でカッコ良い探偵フィリップ・マーロウを演じ、2001年から2007年にかけてオーシャンズ・シリーズ(Ocean’s Eleven, Twelve and Thirteen)でルーベンを演じたElliott Gould(エリオット・グールド)です。 ちなみにかっこ良かったエリオット・グールドがかってBarbra Streisand(バーブラ・ストライサンド)と結婚してできた息子は現在俳優となったJason Gould(ジェイソン・グールド)です。 そしてそして、なんと自分の恋人で肉屋の奥さんの殺人事件の捜査をする保安官のボボがKiefer Sutherland(キーファー・サザーランド)という超豪華キャストなんです。(キャラクターとしては常に口に楊枝を加えているキーファーはドナルド・サザーランドの息子で酒で失敗することもあるが稼ぐカナダ人俳優)ですが、海外ドラマ「24 TWENTY FOUR(トゥエンティフォー)」でタフ男のジャック・バウアーを演じます。
ちなみにカメオ出演したテックス・メックスのアコーディオン奏者のFlaco Jiménez(フラーコ・ヒメネス)の方ではなくバージンハンドに願いをかけてニキビ面を治して女の子をゲットしたフラーコ(フラッコ)役で出演したJoseph Gordon-Levitt(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は後に脚本及び監督を手掛けScarlett Johansson(スカーレット・ヨハンソン)を相手のキスシーンが話題となった2013年のコメディ映画「Don Jon(ドン・ジョン)」でポルノを観てから人生が変わってしまう主人公を演じている一方、2002年の「インソムニア」や2006年の「プレステージ」のChristopher Nolan(クリストファー・ノーラン)が監督した2010年の「Inception(インセプション)」では主人公の相棒で品良く頼もしいアーサー役を好演し、廊下で孤軍奮闘する無重力戦がイケています。 異色な映画としてはブルーのコンタクトを付けたジョセフが2004年の「Misterious Skin(謎めいた肌)」で小児性愛者の野球コーチに8歳で洗礼を受けそのせいで後に意に反して男娼となってしまうニールを切なく演じています。私が初めてジョセフを観たのは1992年の「リバー・ランズ・スルー・イット」でした。

「ヴァージン・ハンド」のトレーラーはPicking Up The Pieces Trailer – YouTube
Picking Up The Pieces Trailer – Filmaffinity.com

¿Por que?テックスが殺した妻のキャンディーと浮気していたテキサス保安官のボボが行方不明を怪しんで訊ねた。 男にもてもてのセクシー美女が、何でさえない男テックスと結婚したのか? アレンが演じる肉屋いわく、”She likes my meat!” フムフム、なるほど!
それでは、妻が浮気をした訳は? ¿Por que?

「人間は月に行けるようになったのに、屋根から鳩さえを追い払えない」とか、「人は魂か体裁のどちらか一方しか守れない」などのウンチク・哲学がと随所にちりばめられている。
そして最後に、ありがた~い神のお言葉が・・・ゴー・ファック・ユアセルフ (もうたくさんだ、黙れ!)」

そういえば、2001年から2009年まで副大統領兼上院議長のDick Cheney(リチャード・チェイニー)が上院の記念撮影会にて、民主党上院議員のPatrick Leahy(パトリック・レーヒー)に言っちゃたってね。 「お前なんかクソくらえ!」

Sharon Stone
IQがアインシュタインにちょっと近いほど高いというシャロン・ストーンはミスコンを経て70年代後半に自動車会社のモデルとなりました。 1980年にウディ・アレンが脚本、監督及び主演した「Stardust Memories(スターダスト・メモリー)」にセリフなしの乗客として出演したのが映画デビューです。 ちなみにこの映画音楽はアレンの映画音楽上の相棒であるピアニストのDick Hyman(ディック・ハイマン)で1999年にもアレンの「Sweet And Lowdown(ギター弾きの恋)」を担当しています。
シャロン・ストーンは1987年の刑事ものB級アクション映画「Action Jackson(アクション・ジャクソン/大都会最前線)」を経て1992年に「氷の微笑」の尋問シーンで脚を組み替えて話題となりました。 シャロン姉さんは白いチラリがカメラにハレーション現象を起こさせてまずいと言いくるめられたとか言ってます。(誰が言った?撮影のヤン・デ・ボンか?)ですがこのシーンで下着をつけてちゃいけません。なぜならダグラスが迎えに行くシーンで全裸になって白いドレスを着ていましたしセリフでも下着は付けてないと話していましたから。 この年のアカデミー賞のレッドカーペットにシャロンはカントリー歌手で俳優のDwight Yoakam(ドワイト・ヨーカム、又はヨアカム)を同伴していますが交際は進展しませんでした。(ドワイトはこれまで女性関係を一切口外しません) 1995年にはMartin Scorsese(マーティン・スコセッシ)監督の長編大作「Casino(カジノ)」でRobert De Niro(ロバート・デ・ニーロ)と共演し、美しい女ハスラーのジンジャー役を演じてアカデミーの女優賞にノミネートされています。 サウンドトラックが豪華な映画「カジノ」のタイトルデザインは車の爆破で吹っ飛んだデ・ニーロと美しいネオンの洪水を立体的にアレンジしたSaul Bass(ソウル・バス)でした。
他には1998年にアニメ「Antz(アンツ)」でZ役のウディ・アレンと共にPrincess Bala(王女バーラ)として声を担当しています。 アレン監督の「Hollywood Ending」がオープニングに上映された2002年のカンヌ映画祭ではシャロン・ストーンが審査員の一人を務め、今回が初めてのカンヌ訪問というウディ・アレンと共に現れました。 テレビ放映ではほぼ全面カットされたがシャロンが製作側の罠にかけられ丸見えだったあのシーンが取り沙汰された1992年の「氷の微笑」の続編でもっと過激な2006年の「Basic Instinct 2(氷の微笑2)」ではオリジナルで刑事を演じたMichael Douglas(マイケル・ダグラス)は出演しませんが、その名を取った精神科医マイケル・グラスが登場します。 平素から茶目っ気のあるシャロン・ストーン姐御は中年になってシェイプアップし、51歳で有名なParis Match誌の表紙を飾りました。(トップレスで) とはいうものの「ヴァージン・ハンド」の後に胸にできた腫瘍を摘出した後再建したのだそうです。 後にこの時の美容外科医がシャロンの承諾を得ず大きめにしたとクレームをつけています。

タイトルの「Picking Up The Pieces」はバラバラの破片(「ヴァージン・ハンド」では切断した手足)を拾い集めることだけど、人生の中で色々な事(もの)を集めておいて、上手く生きるって意味もあるかも。

Picking Up The Pieces by Woody Allen

ウディ・アレンの「ヴァージン・ハンド」国内版DVD
ヴァージン・ハンド~スペシャル・エディション~ PICKING UP THE PIECES / ハピネット・ピクチャーズ

2006年にウディ・アレンが監督するスリラーコメディの「Scoop(タロットカード殺人事件)」では「Swordfish(ソードフィッシュ)」のHugh Jackman(ヒュー・ジャックマン)と「The Black Dahlia(ブラック・ダリア)」のScarlett Johansson(スカーレット・ヨハンソン)が出演します。

Audio-Visual Trivia内でウディ・アレン映画はアレン哲学のウディ・アレンの重罪と軽罪(1989年)
「スターダスト・メモリー」と「ワイルド・マン・ブルース」はWoody Allen(ウディ・アレン)

デヴィッド・シュワイマーは1997年に美乳満載の映画「Breast Men(ブレストマン/豊胸外科医)」でシリコンの権威となった美容外科医を演じた後1998年の「Six Days Seven Nights(6デイズ/7ナイツ)」ではフィアンセが遭難している間に欲望を抑えきれなかった男フランク・マーチンを演じ、2005年の人気アニメ「マダガスカル」ではキリンのメルマンの声を担当するなど活躍しています。