Bea Wain with Larry Clinton – Heart and Soul (1939) – YouTube
Larry Clinton (1909-1985)
クラシックをポップスに編曲したラリー・クリントン
ラリー・クリントンは主に1930年代の作曲及び編曲者として有名であると同時にトランペットやトロンボーンなどの演奏もこなし、人気ダンス・バンドのリーダーにもなったというビッグバンド・エラでは一流のミュージシャンでした。 ”The Dipsy Doodle”を楽団のテーマ曲として演奏したラリー・クリントンのダンスバンドは普通のスイング・バンド(スウィングジャズ)より優雅でクラシックの趣があり大変人気があったそうです。
ラリー・クリントンはPaul Whiteman(ポール・ホワイトマン)がしたように、30年代に「swinging the classics」としてクラシックの楽曲をジャズに編曲しました。 最も有名な自作の曲としてはは1896年のClaude Debussy(クロード・ドビュッシー)のピアノ曲である”Reverie”を基にラリー・クリントンが1938年に歌詞を付けたMy Reverieです。 他にもCharles Camilles Saint-Saens(サン・サーンス)のMy Heart at Thy Sweet Voice(Sampson and Delilah)やTchaikovsky(チャイコフスキー)からのOur Love(Romeo and Juliet)があります。
1956年録音がオリジナルのSonny Rollins Quartet(ソニー・ロリンズ・カルテット)のアルバム「Tenor Madness」にもMy Reverieが収録されています。
この時代にDorsey Brothers(ドーシー兄弟)のそれぞれの楽団でアレンジャーをしていたラリー・クリントンですが、Tommy Dorsey(トミー・ドーシー)のためのテーマ曲のDipsey Doodleや、ハロウィーンの定番曲ともなっているSatan Takes A Holiday、そしてHeart and Soul、Martha、I Dreamt I Dwelt In Marble Hallsなども作曲しています。(”I Dreamt I Dwelt In Marble Halls”の邦題は知りませんが意味は”大理石の大広間にいる夢を見た”かと思ったら、”夢を見た私は大理石ホールに住んだ”らしい)
Satan takes a holiday – Tommy Dorsey – YouTube
トミー・ドーシーの勧めで自分のバンドを結成したラリー・クリントンは1937年から1941年にかけて吹き込みをしていますが、Benny Goodman(ベニー・グッドマン)やトミー・ドーシーほどには有名にはならず短いバンドリーダー期間でした。 とはいうものの1940年代初めにはVictor Recordsで意欲的に多くのレコードの吹き込みに取り組み200曲はあったそうです。 1948年から1950年にかけても一連の「Studies In」シリーズをリリースしています。シリーズのA Study in Brownは元々はGlen Gray and The Casa Loma Orchestra(グレン・グレイとカサロマ・オーケストラ)のために作曲したそうですが、最初にBunny Berigan(バニー・ベリガン)がレコーディングしました。 その後Study in Blue、A Study in Green、Study in Red、A Study in Scarlet、Study in Surrealism、そしてStudy in Modernismと続きます。 1934年録音のLP盤「Benny Goodman & the Modernists 1934-1935」が1973年にLPで再リリースされてたそうです。
ラリー・クリントンの”A Study in Brown”の試聴はSwinging Sounds of Great Bands – Archive.org
☆ ベニー・グッドマン、ラリー・クリントンなどの有名なバンド・リーダー達の写真が見られるThe Reverse Time Page
The Very Best Of Larry Clinton & his Orchestra
ページトップの画像は楽団のテーマ曲である”Big Dipper”ほか20曲を収録した1999年リリースの輸入ベスト盤で、ジャンプブルース(ブルーズ)界のアルトサックス奏者のToots Mondello(トゥーツ・モンデロ)が参加しています。
♪ 試聴はThe Very Best of Larry Clinton & His Orchestra – Archive.org
My Reverie
ラリー・クリントン楽団の専属歌手であるBea Wain(ビー・ウェイン)が歌う”My Reverie(Rêverie)”や”Deep Purple”などを1930年代後期の曲を収録したアルバムですが現在は入手困難となりました。
My Reverie
♪ 試聴はMy Reverie – Muziekweb.nl
“My Reverie”を収録したビー・ウェイン名義のアルバムは輸入盤の「My Reverie」(ASIN: B00004XN41)があり2012年のMP3アルバム「My Reverie Bea Wain」(ASIN: B007THD2TI)では試聴ができます。
♪ Bea Wain with Larry Clinton Orc. – My Reverie (1938) – YouTube
You Can Depend On Me
上記のアルバムは1939年から1941年の録音で”Stormy Weather”ほか24曲を収録した2001年リリースのビー・ウェインのベスト盤です。
♪ 試聴はYou Can Depend on Me: The Complete Recordings, Vol. 1 – Archive.org
優しくてエレガント、そしてクールな歌声のBea Wain(ビー・ウェイン)はラリー・クリントン楽団専属の女性ボーカルとして短い期間ですがバンドの人気を支えました。 旧姓をBeatrice Wayneというニューヨーカーの歌手「ビー・ウェイン」は、ニューヨーク訛りで歌います。(perfectをpoifectと言うように”R”が発音されない方言で、江戸っ子のベランメエ口調とは違います) そしてBillie Holiday(ビリー・ホリデー)を賛美するビー・ウェインの歌はジャズ調なのです。 1937年にラリー・クリントン楽団の専属歌手になったビー・ウェインは、デューク・エリントン楽団のIvie Anderson(アイヴィー・アンダーソン)のようにビッグバンドをバックに多くのヒット曲を歌いました。 1938年には前述のMy Reverieを歌って大ヒットし、Billboardマガジンの投票で「Most Popular Vocalist of 1939」に選ばれましたが、ソロ活動をするためにその年の春にクリントン楽団を退団しています。
ダンスホールもない現在、ラリー・クリントン楽団の音楽が聴かれるのは、もしかしたらビー・ウェインの歌を聴きたいからかもしれませんね。 My Reverieの他にもビー・ウェインのヒット曲としてはHow am I to know?、You go to my head、Heart and soulなどがありますが、私の一番好きな曲はDeep purpleです。 Peter De Roseが1934年の作曲した”Deep purple”にDuke Ellington(デューク・エリントン)とのコラボやVolare(ボラーレ)などのカンツォーネの訳詞で知られてい作詞家のMitchell Parrish(ミッチェル・パリッシュ)が1938年に歌詞を書きました。 1963年に兄妹のデュオであるNino Tempo & April Stevens(ニノ&エイプリル)がポップス調にカバーして大ヒットしました。
ビー・ウェインの歌はDeep purpleの他にはStormy WeatherやYou Made Me Love You(恋のとりこに)が素敵です。 心地よい歌声に眠ってしまいそうです。
☆When the deep purple fall Over sleepy garden wall…と歌われるDeep purpleの歌詞はL’Envoi – Deep purple Lyrics
Our love is a dream, but in my reverie…とBea Wain(ビー・ウェイン)が歌うMy Reverieの歌詞はMy Reverie Lyrics – Genius.com
☆トップの画像はクリントン楽団のテーマ曲のBig Dipperや私の好きなDeep Purpleなどヒット曲が収録されているThe Very Best Of Larry Clinton & his Orchestra です。
The Uncollected Larry Clinton & his Orchestra
収録されている曲目の半分がビー・ウェインのアルバムが試聴できます。
The Uncollected Larry Clinton & his Orchestra (1937-1938)
♪ 試聴はLarry Clinton & His Orchestra 1937-1938 – Archive.org
Studies in Clinton
1938年の収録曲と1939年-1940年から5曲、ビー・ウェインのMy Reverie、Deep Purple、Marthaを収録した1996年リリースのCDではTony Zimmers(トニー・ジマー)のテナーサックスをフィチャーしています。
Studies in Clinton
♪ 試聴はStudies in Clinton – nac.com
1937年にスイングジャズ(ビッグバンド)発生の地であるThe Meadowbrook Inn(メドーブルック・イン)でカウント・ベーシー楽団が演奏したライヴ風のLarry Clinton(作曲及び編曲)バージョンの「Feeling Like a Dream」にはPerez Prado(ペレス・プラード)でおなじみのマンボのリズムで”Taboo”が収録されています。
White “Hot” Jazz
※「The King of Jazz」の異名を持つポール・ホワイトマンが率いるスウィングジャズ楽団は当時大変人気のあるダンスバンドでした。 キングといっても1920年代には一般の白人はルイ・アームストロングも知らないような時代でしたから流行音楽をひっくるめてジャズと呼んだようです。 これは戦後すぐの日本でもそうで、ラテンもシャンソンもジャズの分野に突っ込んでいました。 今じゃジャズも小分けされています。
1924年のニューヨークでのコンサートに依頼され「Rhapsody in Blue(ラプソディー・イン・ブルー)」をGeorge Gershwin(ガーシュイン)と初演して以来この曲はポール・ホワイトマン楽団のテーマ曲となりました。
1927年にWayne King and Orchestra(ウエイン・キング楽団)を結成する前にサックスを吹いていたWayne King(ウエイン・キング)が参加していたポール・ホワイトマン楽団の写真が見られるReverse Time Page(上の2枚、Glen GrayやTommy Dorseyもあり)
1928年にヘレン・ケインで流行ったGet Out and Get Under the Moon(月光値千金)をBing Crosby(ビング・クロスビー)が歌っているポール・ホワイトマン楽団のアルバムはビックス・バイダーベックが参加したスイング・アルバムで「Bing Crosby with Paul Whiteman & his Orchestra」ですが、ポール・ホワイトマン楽団の月光値千金はSP盤をCD化した1992年リリースの国内盤コンピレーションは「ポピュラー音楽時代の夜明け」です。
※White Hot Jazz(ホワイト・ホット・ジャズ)とは1920年代から1940年代の白人バンドのスイングでしょうか。
スゴイ! ファビュラス・ドーシーにぶっとんでるんですが、この秘密がわかりません。
兄弟、アレンジャー、ディキシー、スイング、ボールルーム、スーザのミックスと理解?してよいのか。
最近はイタバロにはまってます。
クラシック音楽に詳しい河野さん、驚かないで下さい。私のブログは覚え書き程度なので、秘密なんてございません。どこへでもぶっ飛びますし何でもぶっ飛ばします。
ラリー・クリントンがドーシー兄弟のアレンジを担当していた時期があったそうなので言及しましたが、この時点ではドーシーにリンクを貼るのを忘れていました。ご指摘頂いて読み直す機会を得たことを感謝します。
スーザやイタリアン・バロックなどクラシックについて私は皆目分かりません。