John Malkovich Cheats On Ladies.
John Malkovich and Four Ladies
ジョン・マルコビッチのレディース・ルーム (1999年)
1992年の「Of Mice And Men (1992)(二十日鼠と人間)」で大男のレニー・スモールや1999年の「Being John Malkovich(マルコビッチの穴)」ではコピーが大量にできてしまったJohn Malkovich(ジョン・マルコビッチ)が主演する映画「レディース・ルーム」は二組の不倫カップルを描いたロマンティック・コメディで、監督はGabriella Cristiani(ガブリエラ・クリスティアーニ)だそうです。 ガブリエラ・クリスティアーニ監督は今作「レディース・ルーム」だけが監督でそれ以外ではベルナルド・ベルトルッチ監督の「ラストエンペラー」(1987年)を含む10作ほどは編集を担当しています。
「ジョン・マルコヴィッチの レディース・ルーム」ではイタリア人の大富豪マルちゃんはイタリア語を交えて大奮闘、マルちゃんの若い愛人と妊娠中で来ない筈の妻がオペラ座の化粧室ではち合わせして、エライことになっちゃったというストーリーです。 殿方はくれぐれも自分の誕生日を忘れないようにネ!
ルネッサンスの名画の天国を思わせる美しい雲と空のオープニングから、冒頭の場面は舞台のような沢山の白い薄布がカーテンのように垂れている空想的な空間になります。 女達が並んでトイレらしき扉の順番を待っています。 この場面では大役欲しさに脚本家を誘惑した若手女優と電話相談カウンセラーが中心です。 この二人は女優の乗るバイク事故により出会いが生じました。 彼女たちはすでに自分達は死んだのだと認識します。 これが煉獄と想定されているようで人生を振り返り罪を浄化するために並んでいるのです。 煉獄では、天女ならぬ掃除婦のような案内人と思しき女性は又プロデューサーのようでもでもあります。
順番を待つその間、この二人は過去の自分達のそれぞれの映像を見て、反芻します。 そこでは楽屋の化粧室とオペラ劇場の婦人化粧室との二つが舞台で、それぞれの若い愛人と妻の応酬劇が映されます。 ☆Purgatorioとは煉獄のことで、犯した罪を償うことによって魂を浄化される苦難の場所です。 最後に扉を開けると「罪があるかどうか」が判明します。 さあ、開けて!
登場人物は、大役欲しさに脚本家をたぶらかす若手女優と脚本家の妻である舞台女優、マルちゃんの大富豪と愛人のカウンセラーさんと妊娠中の妻の二組のカップル・・・いやいや、三角関係です。
脚本家の妻のベテラン女優と若い野心家の女優の丁丁発止の戦いが見せ場・・・恋敵のはずが師へと変わる場面は圧巻。 と思いきや、一方ではジョン・マルコビッチが、オペラ座でかち合った妻と愛人を会わせまいとお馬鹿なドタバタ喜劇を演じます。 マルちゃんの浮気のお相手は天使のように純真な「天使の手」という身の上相談所のドイツ人カウンセラーです。 なんでドイツ人かって? イタリア男はドイツ女が好きなんだそうです。 マルちゃんとのデイトはオペラです。 演目はその名も「ベアトリス(ベアトリーチェ)」で、マルちゃんの妻と若手女優が知り合いなので脚本家の妻とこのオペラを観に来たことが判明。 なんというめぐり合わせ!
Would you like to do “who am I?” to bold John Malkovich, like Greta Sacchi does?
このハゲ頭に「だ~れだっ!」をやりたい?
愛人とオペラ座でデートのはずが、誕生日のサプライズで妻がオペラ座に来ちゃったからあわてて愛人にお引取り願うマルちゃんの言い訳、「道徳にうるさい日本の企業家が来て。。。云々」というのが笑えます。 それにしても、まさかのまさか、妻と愛人がオペラ座のレディース・ルームで鉢合わせなんて!
なかなか出てこない二人に郷を煮やしたマルちゃんはスパイダーマンさながらにビル壁をつたってレディース・ルームの中を覗こうとします。 そこで見たものは…大富豪マルちゃん「ロベルト」のイニシャル「R」のついたネックレースが二つ! ぎゃ~! マルちゃん、浮気の代償はお高くつきました。
マルコビッチの派手なオペラ座「階段落ち」は、新選組・池田屋の大階段落ちとはいかないが、かなり頑張ってますねえ。 ですが1990年代からテレビや映画でstunt double(スタント)を演じているスタントマンのMike Chuteが吹き替えしているそうです。
この映画の題名である「Ladies Room(レディース・ルーム)」とはそのものズバリ!女便所です。 ですが駅の公衆便所を思い浮かべないで下さいネ。 帝国ホテルなどの高級化粧室を想像して下さい。 一日そこで過ごしても良いくらい豪華で綺麗なオペラ座のパウダールームでございますよ。 ちなみにパウダールームの由来はカツラ時代にトイレで頭ににパウダー(小麦粉?)をはたいてお直ししたからだとか。
この映画では文明の利器である携帯電話がポイントになっています。 若手女優が携帯で身の上相談「天使の手」のカウンセラーに電話しますし、マルちゃんの携帯が鳴って妻と愛人の様子を覗っていたのがバレてしまいます。 くれぐれも着信音にはご用心!
映画のなかで上演されていたオペラは19世紀初期のBellini(ベリーニ)が作曲した「Beatrice Di Tenda(テンダのベアトリーチェ)」で、不倫をしたい夫の罠にはまり、不貞の濡れ衣により処刑されたミラノの公妃ベアトリーチェの悲劇です。
ベアトリーチェはイタリアの詩人Dante(ダンテ)の「La Divina Commedia(神曲)」で煉獄から天国に案内する理想の恋人の名でもある。
最後に不倫女優と不倫カウンセラーの二人が扉を開けると・・・衝突して死んだかと思われた二人が生き返り、一杯飲みに行く場面で終わり。
二人の若い女達に接点はあるものの、なぜ2話のオムニバスなのか…一話の舞台女優達のシリアスなやりとりと二話のマルコビッチのコメディ調はまるで、別の映画のよう。 う、う~ん、経験の浅い若い女は人生のベテラン奥様には脱帽ってとこですね。 うん、女同士で生きていくか!
マルコビッチがイタリア人という設定のせいか、女優陣も国際的
Greta Sacchi(グレタ・スカッキ)はイタリア人でオーストラリア人という二国籍女優
「レディース・ルーム」ではマルコビッチの妻役
1999年に「レディース・ルーム」に出演したグレタ・スカッキはJerzy Novak(セルジュ・ノヴァク)というペンネームで高評を得るも私生活を隠したDaniel Brodsk(ダニエル・ブロツキー)を描いた2004年の「Sotto falso nome(そして、デブノーの森へ)」でダニエルの再婚相手となるイタリア女のニコレッタを演じ、同年の「Beyond the Sea(ビヨンド the シー 夢見るように歌えば)」でSandra Dee(サンドラ・ディー)のステージママを演じ、2005年にKevin Costner(ケヴィン・コスナー)やShirley MacLaine(シャーリー・マクレーン)も出演するロマコメの「Rumor Has It(迷い婚 -すべての迷える女性たちへ-)」でコスナーの元妻になりますが、2005年にはJodie Foster(ジョディ・フォスター)が子供を誘拐される航空機設計士のカイルを演じた「Flightplan(フライトプラン)」では飛行機の中のメガネをかけたセラピストがグレタ・スカッキなのです。 1991年の「Fires Within(熱い夜に抱かれて)」や、Tom Cruise(トム・クルーズ)の最初の妻だったMimi Rogers(ミミ・ロジャース)がカメオ出演している1992年の「The Player(ザ・プレイヤー)」で共演した「Full Metal Jacket(フルメタル・ジャケット)」のVincent D’Onofrio(ヴィンセント・ドノフリオ)と1999年から2年間の結婚して子供を一人儲けたそうです。 1987年にPeter Coyote(ピーター・コヨーテ)と共演した「Un homme amoureux(ア・マン・イン・ラブ」や、1999年にDaniel Craig(ダニエル・クレイグ)と共演した「Love & Rage」のように映画の役柄いかんでは激しいベッドシーンや全裸も辞さないグレタ・スカッキですが役に溶け込んで私には顔が判別できません。
Veronica Ferres(ヴェロニカ・ファレス)はドイツ人
「レデイス・ルーム」では電話カウンセラーでマルコビッチの愛人役ですが、2006年のKlimt(クリムト)でもマルコビッチが演じる画家クリムトの恋人役です。
Molly Parker(モリー・パーカー)はカナダ人
1999年の「Sunshine(太陽の雫)」ではハンガリー人だと主張して拷問死するアダムと結婚するハンナ役
脚本家の愛人で女優のジュリア役ですが、2001年の「The Center of the World(赤い部屋の恋人)」ではストリッパーを演じています。
Lorraine Bracco(ロレイン・ブラッコ)はアメリカ人
ジュリアと浮気をする脚本家の妻役
ロレイン・ブラッコはパリで「Elle」のモデルでしたが「真夏の出来事」のHarvey Keitel(ハーヴェイ・カイテル)と結婚してアメリカに戻りました。 アカデミーはノミネートに終わりましたがLA批評家協会賞で助演女優賞を獲得した1990年の「Goodfellas(グッドフェローズ)」では鉄火肌の姐御(極道の妻)を熱演しています。 2000年に入るとテレビドラマが多くなっています。
ジョン・マルコヴィッチの「Ladies Room(レディース・ルーム)」のDVD(メディアファクトリー)
レディース・ルーム
音楽は原案及び制作のTony Roman(トニー・ローマン又はトニー・ロマン)で、プロデューサー、美術監督や作曲も手掛けます。 「レディース・ルーム」のサウンドトラックは見つかりません。
集英社文庫ヘリテージシリーズより表紙の挿絵がすごい!
Divine Comedy Purgatory Hen (Shueisha Bunko Heritage Series) (2003)
Dante Alighieri(ダンテ アリギエーリ)著La Divina Commedia(神曲)
神曲〈2〉煉獄篇