ものごとを決定するその一瞬がアナタの人生を変える!
赤毛をなびかせて、ローラが走る、走る、走る! もう時間がな~い!
♪ Franka & Thomas D – Wish (Komm Zu Mir) – YouTube
Run Lola Run(1998年)
「ラン・ローラ・ラン」は20分のタイムリミットにプロットが3通りという、「時間で遊ぶ」奇抜なアイデア、つまりリセットできるゲームみたいなドイツ映画です。
脚本・監督・音楽はドイツの新進映像作家(映画監督)のTom Tykwer(トム・ティクヴァ)で、主人公のカップル以外はデジタル・ビデオで撮り、間にアニメを効果的に使っています。
☆タイトルのLola renntはドイツ語で「ローラが走る」だそうです。(動詞rennenの三単現)
☆ちなみにローラ役のFranka Potente(フランカ・ポテンテ)は赤い髪の色を一定に保つため、1週間は洗髪しなかったそうです。
「ラン・ローラ・ラン」のあらすじ
映画はバイクを盗まれて待ち合わせの約束に遅れたローラと殺されるからと助けを求めるボーイフレンドのマニの公衆電話から始まります。 つまり、マニが仕事を順調に終えて通りに出たのにローラがいなかったから地下鉄に乗ったところ金が入った袋を置いて降りてしまった。 10万マルク(日本円で約500万円から700万円だったが現在はユーロ導入でマルクは廃止)入り袋は浮浪者が持ち去ったので見つからない。 仲間のロニーに殺されるに決まってる。 マニ曰く、かってローラがマニが困っている時には愛の力で助けると言ったんだから20分で10万マルク作れ! 12時に給水塔でロニーに会うことになっている。 灰になって川に流されちゃ大変、スーパーを襲えば一発だというマニにローラは必ずお金を作ってそこに行くと言うが、誰に頼めば? どうにもならない。 「パパ!」と部屋を飛び出すローラ、画面はローラが駈け出すアニメーション。 バイクが無いから走るっきゃない! 12時まであと10分!って時に街角ですれ違ったのが大金の袋を持ち去ったホームレスの男だとはローラは知る由もない。 そんなローラが飛び込んだのはドイツ外国為替銀行。 複雑な状況のパパが女性(重役のハンセン)といる部屋に飛び込むプリンセス・ローラ。 5分以内に10万マルク揃えなくちゃならないの。 ローラが二度目の叫び声(悲鳴)をあげると壁の時計が飛び散った。一度目はマニの電話を受けたローラの部屋だった。 幸せが目の前に迫ったパパは助けてと懇願するローラに恐ろしい事実を告げる。 私の娘なんかじゃない、お前の父親は死んだんだと。 銀行からつまみ出されたローラはもう時間がないと、走る、走る。 マニがスーパーを襲う前に到着しようと、走る、走る。 あと3分。 拳銃をポケットに入れたマニはスーパーに向かって歩き出す。 ラスト1分! スーパーの入り口まで行って引き返すマニ、「待てて!私のことを。ダメよ!お願いよ!」と必死に走るローラ。
町の時計の針がカチッと!12時になった! スーパーの中に入るマニ。 マニー!と叫びながら走るローラ。 ようやくスーパーに到着するもマニはもう止められない、手を貸せと言っていると警備員に背後から銃を突き付けられる。 咄嗟に飛び込んだローラが警備員を殴り見張り役になった。 警察が来る!と二人で逃げ出すシーンで流れるブルース曲はDinah Washington(ダイナ・ワシントン)が歌う”What a Diff’rence a Day Makes(縁は異なもの)”、必死で走る二人のBGMとしてはスローテンポだが意味深い。(オリジナルは1934年にメキシコで書かれたスペイン語の歌だが1959年にダイナ・ワシントンがR&B部門のグラミー賞を受賞)
さて、四方を警察に囲まれて窮地に立つ二人、マニが金の入った赤い袋を空中に投げると同時に警官の弾がローラに当たる。 路上に倒れるローラのスローモーション。 屈み込むマニ。 これでお終い。 じゃない!まだ三分の一。
目を見開いて倒れているローラからマニとの真っ赤な睦言シーンへ展開。 ローラの問い、「もし他の女だったら?」
「嫌よ、ストップ!」 そして、マニの電話を聞いて家を飛び出したところから再び始まる。 出だしから様々なことが少しずつ違うが、パパの愛人の言葉は衝撃的。 一度目では赤ちゃんができたので産んで欲しいか?って聞くだけだったが二度目にはその後に「他の男の子供でも?」と追加される。 だから、ローラがドアを開けた時にパパは女に「家庭があるんだ!」って怒鳴っていた。 金が出ないことには変わりなくパパの部屋で大暴れして出て行くローラだが、「こんな日もあるさ」と言う警備員の銃を奪うとパパのところに戻り、金庫で10万マルクを詰めさせようとするが、ちょっと足らない。 下に取りに行貸せ、ゴミ袋に入れた金をひっ掴んで銀行の外に出ると、特殊部隊のお出迎え。 もう終わりかと思いきや、犯人だとは思われず逃走を続ける。 マニはスーパーの前。 マニー!と呼ぶローラの声が聞こえて振り向いた。 だが、マニは赤い車に跳ねられてしまう。 マニの顔を手にすすり泣くローラから再び赤い睦言シーン。 今度はマニの問いで「不治の病になったら?」、そして最後のローラの言葉「マニ、まだ生きてるわ」
死んだはずのマニが「マジ?」と言うと、また最初に戻り、ローラが部屋を出るシーンに、アル中の母親に「シャンプー買ってきて」と声をかけられるのは今度も同じ。 ローラが走るアニメーションでは二度目にいじめっ子の飼い犬に吠えられて階段をこけて足を痛めたが、今回は気合で吠えかえしてスルー。 三度目には自転車の男が50マルクでどうだ?とローラには言わず、コーラを買いに寄った店であのホームレスに出会う。 「人生何があるか分かんねえな、一杯おごるよ」とご機嫌なホームレスに「自転車70マルクでどうだ?」と持ちかける。 自転車をゲットしたホームレスは前かごに金の袋を無造作に入れて意気揚々と街を走る。 パパは愛人に妊娠は「最高の贈り物」と言ってるパパは仕事仲間と出て行ってしまう。 ローラは間に合わなくて地団駄を踏む。 一方、盲目の女性からテレホンカードを借りたマニが返して立ち去ろうとすると、その女性は「待って」と行って向こうの方に顔をやる。 その方向にはなんとあのホームレス、自転車の前カゴにはマニが地下鉄に置き忘れた金の袋。 必死で追うマニ、必死で自転車を漕ぐホームレス。 一方、ローラは「どうしよう、助けて、お願い」と心の中でつぶやきながら走る、走る。 大型トラックに轢かれそうになって立ち止まったローラの目に入ったのは通りの向かいのカジノ。 なけなしの金で無理やり10マルクのチップを出してもらいルーレットに掛ける。 一度目は20に掛けて勝った、それを二度目にも掛ける。 ローラの悲鳴がガラス類を粉微塵にする。 悲鳴のせいかルーレットの玉は20から動かない。 チップを換金するローラを賭博客たちが見守る。 その背後に時計があるが壊れてはいない。 その真下の壁に描かれているのは夜会巻きの女性の後ろ姿。 時計は12時3分前。
一方、ホームレスを追い続けたマニはとうとう拳銃を突きつけて金を取り返す。 その見返りにホームレスは拳銃を手にする。 金をてにした汗びっしょりのローラがマニがいる筈の場所に着くと仲間のロニーの車から降りてくるマニを見る。 近寄ってきたマニは「もう、オッケーだ」、ローラの持っている袋に目をやり「それは何?」 思わず笑みがこぼれるローラ。
「ラン・ローラ・ラン」のトレーラーはLola rennt – Sonypictures (trailer and movie clips)
Lola rennt Trailer – VideoDetective
「ラン・ローラ・ラン」の冒頭では早回りする時計の奇怪な飾りの口の中に入っていき、赤毛のローラが駆けるアニメーションのクレジットから始まります。 映画のなかではタイムリミットを示す時計のクローズアップは何度もありますが、最後のプロットで、フランカがルーレット賭博で大儲けしたカジノの時計の下に、なんとも変な壁画があります。
トム・ティクヴァ監督が美術監督に「大時計の下の壁にKim Novak(キム・ノバク)の肖像画を欲しい」と言ったら、その美術監督はキム・ノバクを知らないからと「後ろ姿」を描いたんだそうですが、映画関係者でキム・ノバクを知らないってことあるわけないから冗談でしょう。 この壁画はキム・ノヴァク主演の「めまい」に出てきた夜会巻き(フレンチ・ツイストと呼ばれるアップの髪型)の後姿ですね。
☆キム・ノヴァクのこんな髪型が見られる「Vertigo めまい」
キム・ノバクについてはAudio-Visual Trivia 内の「媚薬」
赤毛のローラがひたすら走り続けるDVDは現在入手困難となっています。
ラン・ローラ・ラン LOLA RENNT / ポニーキャニオン
フランカ・ポテンテが歌う挿入歌の”WISH”を含め、テクノ音楽は映画「ラン・ローラ・ラン」に効果的な役割を果たしています。
以前はフランカの歌が聴けたドイツのサイトLola rennt Wish with Lyicsでフランカ・ポテンテが歌う”WISH”の歌詞が見られます。
Run Lola Run: Original Motion Picture Soundtrack
「ラン・ローラ・ラン」のテクノ・サウンドのサウンドトラック”Wish (Komm Zu Mir) – Franka Potente & Thomas D”にはトム・ティクヴァ監督も携わっていますが、瞬間々々が運命を変える映画のキーソングとして使用されたDinah Washington(ダイナ・ワシントン)が歌うスタンダード・ジャズの”What A Difference A Day Makes”やフランカ・ポテンテの”Wish”が収録されているCDではフランカ・ポテンテのRunning OneとRunning Twoも収録されています。
ラン・ローラ・ラン
Franka Potente – Believe – Lola rennt – YouTube
What A Difference A Day Makes by Dinah Washington in Lola Rennt – YouTube
☆フランカ・ポテンテはBourne Identity ボーン・アイデンティティー (2002年)に続いてBourne Supremacy ボーン・スプレマシー (2004年)でマット・デイモンと再び共演しています。
フランカ・ポテンテはこの後2000年に医学生を演じるStefan Ruzowitzky(ステファン・ルツォヴィツキー)監督のホラー映画「Anatomie(アナトミー)」に続き、日本未公開ですがTom Tykwer(トム・ティクヴァ)が監督する「Der Krieger und die Kaiserin(プリンセス・アンド・ウォリアー)」に出演しますが、トム・ティクヴァ監督は「Trois Couleurs(トリコロール)」三部作などのKrzysztof Kieslowski(クシシュトフ・キエシロフスキー)の遺稿脚本を映画化した2002年の「Heaven(ヘヴン)」や2006年の「Paris, je t’aime(パリ、ジュテーム)」や「Perfume: The Story of a Murderer(パフューム ある人殺しの物語)」などを監督しています。 クライヴ・オーウェンとナオミ・ワッツが共演した2009年の「The International(ザ・バンク 堕ちた巨像)」にもインターポール職員のルネ・アンタール役でワンシーン出演したBen Whishaw(ベン・ウィショー)が不幸な生い立ちで嗅覚が異常に優れた18世紀のパリに生まれた男を主演した「パフューム」はなんとも奇々怪々かつ美しくも壮絶な殺人物語です。(”Q”様はともかくゴージャスな映画!)音楽は”The International End Title”をティクヴァ監督がプロデュースし、Eric Clapton(エリック・クラプトン)他2名で作ったロックバンド”Cream”の”Strange Brew”(1967年の曲)がサントラで使用されました。<br>ちなみに1993年のティクヴァ監督デビュー作である「Die Tödliche Maria(マリアの受難)」 はようやく2007年に公開だそうです。